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【名盤伝説】 追悼 : 稀有のロックシンガーに捧げる “Raspberries / FRESH” US版ビートルズのポップスセンスを継承するロックバンド

2024年3月12日にラズベリーズのメインボーカリストのエリック・カルメン訃報が届きました。74歳、死因はあきらかにされていません。
訃報に接し、稀有のロックシンガーに捧げるものとして紹介したいと思います。


ラズベリーズは1971年USキャピタルレコードからアルバム先行シングル「Don't Want to Say Goodbye」でメジャーデビュー。ビートルズ解散(1970年)以降のロックスターを求めていた時代に、ビートルズと同じアップルレコードからデビューしたバッドフィンガー(当時「Day After Day」が大ヒット)らとともに注目されていました。

この頃、最新の音楽情報は主に雑誌でしか入手できず、中学生になったばかりの私には、ラジオのベスト10番組や、深夜放送で散発的に紹介される情報で知るのが精一杯でした。また手元に音源を残すのも、友人からレコードを借りてカセットにコピーするのが常でした。そんな時代に私がビートルズ以外で、初めてLPを買ったラズベリーズでした。好きだったビートルズの過去作やメンバーのソロ作品などには手を出さず、少ない小遣いの中からラズベリーズのLPを購入していたのは、ちゃんと聞きたかったのに、周囲に持っている人がいなかったというのが理由だったと思います。

ラズベリーズは後にソロシンガーとしても大成功するエリック・カルメンの他、G、Bs、Drsの4人編成。全員がボーカルを取れます。曲はポップス調のギターがメインのロック。かなり激しいものからバラードまで、メロディアスでバリエーションも豊かです。72年に1stアルバム『Raspberries』がリリースされ、シングル『Go ALL the Way』が全米5位の大ヒット。続く同年秋にリリースされた2ndアルバムが『FRESH (邦題 明日に生きよう)』です。

主な収録曲にはシングルカットされた『I Wanna Be With You (明日に生きよう』、極上の歌い上げ系ロック調バラード『Let’s Pretend』、ミディアムバラードの「If You Change Your Mind」などがあります。全編にわたってポール・マッカートニーのソロアルバムかと思えるほど、ハートウォーミングでメロディアスな楽曲が続きます。こうして記事を書くのに聞き直したら、そのポップスセンスには改めて驚かされました。

その後「Tonight」「Ecstasy」などのハードなロックナンバーを収録した『Side 3』(1973年)、感動のロックバラード「Overnight Sensation (Hit Record)」を収録した『Starting Over』(1974年)がリリースされます。
私のラズベリーズ歴はここまでで終了です。

その後ソロデビューしたエリックの作品については、別の機会に紹介したいと思います。彼の作曲センスは半端ないです。

このラズベリーズやバッドフィンガーのことを、ピート・タウンゼントやロジャー・ダルトリーなどが所属したザ・フーの系譜を受け継ぐバンドとしてパワーポップと呼ぶそうです。リアルタイムでこの時代の音楽に触れてきた私には、情報不足なのか、当時はそのようなジャンル分けなど全く耳に覚えがありません。ましてや個人的にザ・フーには、パワーはともかくもポップスセンスというよりも、逆に尖ったバンクの元祖のような破壊的なイメージの方が強いので・・・。
強いて称するなら、ビートルズのUK産に対抗したアメリカン・ポップ・ロックとでも言いましょうか。

当時のライブ映像がありました。アメリカのこうしたミュージック・ビデオではありがちなアフレコではありません。本当にそうなのであれば彼らの演奏力はかなりのもの。この映像を見るまで、正直彼らのこと侮ってました。

さらにはこんなTVショーの映像も。無意味に偉そうなプロデューサーのインタビューから始まるスタジオライブ。彼らの歌唱力の確かさが確認できて、とても面白いです。当時の洋楽関係の映像といえば、NHKのヤングミュージックショーくらいしかありませんでした。仮に権利が手に入るチャンスがあったとしても、このプログラムは無理だったでしょうね。でも当時見たかったなと思います。

キャーキャーする歓声や曲調からアイドル系と評する向きもありますが、私には決してそうは思えません。1970年代前半を代表する、ポップスセンス抜群のロックバンドとして評価してほしいものです。

最後にもう1本動画をご紹介。結成50周年を記念した2004年に行われた、おじさんになったラズベリーズの記念公演から。いやいや皆さん元気です。多少枯れたとはいえエリックのボーカルも健在でした。そもそもの彼らの実力が窺い知れるというものです。こんな勇姿を見せられると、何だか勇気をもらえます。

そんなエリックが亡くなられてしまいました。
I Wanna Be With You ! これは私たちの気持ちです。

彼の遺してくれた永遠のレガシーを大切にしていきたいと思います。R.I.P.

[追記] 2023.03.22
こんな追悼動画がありました。正直彼のソロワークにはあまり執着がありませんでしたが、これは確かに盛り上がります。改めて、安らかにお眠りください。


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