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【名盤伝説】 “Eric Clapton / 461 Ocean Boulevard” 新生クラプトンの魅力の全てが詰まっているアルバム。


お気に入りのミュージシャとその作品を紹介しています。今回はレジェンド・ギタリストエリック・クラプトンの1974年リリースのアルバム『461 Ocean Boulevard』です。

当時中学生だった私にとって、ほぼリアルタイムで聴いた初めてのECのアルバム。それ以前のクリームの曲や、もちろんあの「Layla」などもラジオで聴くのがほとんどで、アルバムを通して聴く機会はありませんでした。音楽雑誌「MUSIC LIFE (懐かしい)」のECのグラビア写真をカードケースに入れて下敷き代わりに使っていた割には、あまりちゃんと聴けていなかったんですよね。それでもなぜかファンだった私は、中学の卒業式の後の謝恩会終わりに、友人宅にクラスメイト数人でお邪魔してBEST盤を聴いたことや、このアルバムを別の友人宅で聴いてカセットテープにダビングして持ち帰り、それこそ擦り切れるくらいに聴いていたことなど、あの時の風景が今でも浮かびます。

このアルバムはECにとっては4年振りの作品。その間はアルコール依存症と薬物中毒で療養していて、ロンドンのRainbow Hallでの復活ライブの後の初めての作品。リリースされるまでは期待と不安が入り混じりましたが、内容はまさに完全復活と言える出来で、ECの本拠地ロンドンとはある意味対極にある、フロリダの明るく潮の香り混じる風が似合うような、生まれ変わったECサウンドはファンの心も明るくしてくれました。

主な収録曲のご紹介。M1「Motherless Children」はオリジナルではなく、伝説のゴスペル歌手Willie Johnsonのカバー。歌詞はほぼ同じで原曲の面影が無いくらいにアレンジされています。完璧に自分の曲のような出来ですね。この曲のイントロの印象的なギターリフから歌が入る直前の4小節のタムまわし、よくあるパターンよりも長めです。あれはいつのECの来日公演だったか、この曲を演奏した時にECが2小節終わりで歌い出してしまい、バックのミュージシャンだけでなく観客も「あっ」と息を呑んだというハプニングがありました。本人も「間違えた」と気づきすぐに歌うのを止めましたが、その後は何事も無かったかのよう堂々と歌い直していました。堂々としたものですw。

M2「Give Me Strength」はスローなオリジナル曲。ゴスペル調のオルガンとスライドギターが印象的。そしてM5「I Shot The Sheriff」は当時の流行語ともなったレイドバックしたBob Marleyによるレゲエナンバー。シングルカットもされて今でも人気の曲です。M7「Please Be With Me」は仄かにカントリーテイストを漂わせるアコーステイックナンバー。全編に流れるスライドギターが心地よいです。

そしてM8はアルバムのハイライト「Let It Grow」。中間部の転調してからエンディングまでは、ほとんどLed Zeppelinの「天国の階段」状態。シンプルな歌い出しからは想像できない展開で、荘厳で分厚い音の渦に埋もれるような気になります。スローな割には聞き応えのあるハードな曲ですね。

ラストM10「Mainline Florida」は軽快なポップナンバーで、アルバムを陽気に締めくくります。この曲はECの伝記映画「Life in 12 Bar」でもエンドロールのバックに流れていましたね。

それまでのアルバムでは聴けなかった、まさに生まれ変わったかのような作風。以降の作品の魅力の全てが詰まっているように思います。

昨年(2023年)には武道館100回公演記念コンサートを行うなど日本大好きなECですが、さすがに今年で79歳と、正直衰えは隠せません。どんな大スターでも、できるなら輝いているうちに一度は観ておくべきだったと強く思う今日この頃です。


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