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思い出のフュージョン本

私のハンドルネームにまつわる、もう一つの思い出です。

とあるご縁で音楽出版社のシンコーミュージックが発行したフュージョン・ディスク・ガイドのアルバム紹介文を執筆することになりました。「私みたいな素人が何故?」とは思いましたが、こんな機会はめったに無いだろうと快諾させていただきました。

当時、続々と出版されていたディスク本。ロック、ソウル、ビートルズ…。「世界初、フュージョン・データ本!」とキャッチコピーの通り、ジャズはともかくも、フュージョンについては確かに無かったと思います。

監修の方から依頼されてのことでしたが、その方はフュージョン系のアルバムのライナーや雑誌の記事など多数執筆されていて、その界隈では大家と言われていた方でした。執筆者にはご本人以外に、工藤由美さん、村井康司さん、中田利樹さん、櫻井隆章さん等々と著名な方たちばかり。そんな中でどのアルバムを割り振られるのかと思いきや、案外名盤とされている作品もリストにあり、本当に「私で良いのか?」とは思いながらも、既定の制限文字数内で精一杯の思いをこめて執筆させていただきました。

と、ここで問題が。正規のお話なので原稿料が支払われることになります。当時 (今もそうですが) サラリーマンだった私は基本的には副業が禁止でした。ただしそんな理由で断るなんて出来ないほど貴重な機会です。金額は取っ払いで数万円と些少ではありますが、それでもわざわざ会社にお伺いをたてるのもどうかなと。そこで多少でも配慮しようと考えたあげく、格好をつけるつもりは更々ありませんが、当時使い始めていたハンドルネーム「Mr.O2 (ミスター・オー・ツー)」を署名のペンネームとして使わせて欲しいと監修の方に打診してみました。すると「記号みたいだから他の名前にしてください」と、私には意味不明な返答に困惑しました。

どうしたものかと悩んでいた時に、行きつけの飲み屋のママさんに相談すると「そのままでいいじゃない」と、また謎の回答。そのままと言われても・・・「あ!」そうか、そのままね。ということでペンネームはMr.O2から「大津」にしました。苗字は決まったので、あとは縁起のよい画数で名前もつけました(笑)。

こうして2000年8月このガイド本は無事に出版されました。版元から献本が届く前に書店で手に取り、ページをパラパラとめくって思わずニヤリ(^^;)。その場で迷わず一冊購入しました。自分の書いた文章が書籍になり、普通の書店の書棚に並ぶなんて…思いのほか感動した思い出です。するとその日の晩には数人の友人から「本屋でみたよ」と連絡がありました。この話は一緒に執筆を頼まれていた後輩としかしていなかったのに・・・「この大津さんは、あなたでしょ」と。皆さん察しが良すぎます。

幸いこのガイド本は好評で何度か重版になります。素人の私は取っ払いの原稿料なので印税はありませんが(汗)、ファンに認められたということで嬉しかったです。

その後2013年に新たにDisc Collectionシリーズとして大幅にアルバムを追加して新装版が発売になります。新たに出るよとの連絡は全くありませんでしたが、楽しみに発売日を待ちました。そして以前よりも分厚くなった本を書店で手に取りパラパラとページをめくると、あれ?・・・私の担当したアルバム紹介文が、全て差し替えられていました。「何で??」と。

紹介する作品や執筆者の選定などは、当然監修者の専権事項ですが、前作では、こちらからお願いして執筆させていただいた訳ではありません。その改訂版がでるにあたり、大多数の原稿はそのまま流用しているにもかかわらず、私の原稿だけ差し替えるとは、どういうことでしょうか。一言断りをいれてくれればよいものを、私がごねるとでも思ったのでしょうか。なんということ・・・。

その方とはコンサート会場などでもよく見かけていたので、タイミングがあえば挨拶くらいはさせていただいていたのに。この業界の方々は、皆さんそんなものなのでしょうか。自分の仕事の業界ではありえない所業ですね。

とはいえ初版で掲載されていた原稿はどこかに残しておきたいなと思い note に引用することにしました。いずれも名盤ばかりです。既に記事にしているアルバムもありますが、個人的にも懐かしい思い出として順次公開していきます。
※ 引用にあたり記事本文との整合性を取るため一部加筆修正しています。

引用した紹介文 (下線リンクのある記事は公開済です)
P12 WILLIE BOBO / Bobo
P23 The CRUSADERS / Scratch ※別記事公開中
P49 KARIZMA / Dream Come True
P53 LARSEN-FEITEN BAND / Full Moon
P68 RICKY PETERSON / Night Watch
P71 LEE RITERNOUR / Gentle Thoughts
P72 LEE RITERNOUR / in Rio
P74 DAVID SANBORN / Voyeur ※別記事公開中
P77 TOM SCOTT & THE L.A. EXPRESS / Tom Cat
P105 菊池ひみこ / Don't Be Stupid
P109 沢井原兒 & BACON EGG / Yellow
P112 高中正義 / Seychelles ※別記事公開中
P117 PRISM / Prism Live
P118 PRISM / Community Illusion
P136 AL JARREAU / Breakin' Away ※別記事公開中
P138 THE MANHATTAN TRANSFER / Mecca for Moderns ※別記事公開中

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