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角松敏生 1998〜2004

私の大学時代の同じバンドサークルの同級生、角松敏生のキャリアを振り返る3回目。活動解凍後から充実した作品が多い2004年までの活動を振り返ります。

1993年1月の凍結武道館公演から5年後の1998年5月18日。彼は自身名義での音楽シーンへの復帰を宣言し、解凍公演を同じ武道館で行います。”He is Back”としてWOW WOWでの放送とライブDVDも発売して商売再開です。凍結期間中も他のアーティストのアルバム・プロデュースや別名義での活動など、決してゆっくりと休養していた訳ではありません。 逆にそれまでよりも忙しかったとこぼすほど。
打ち込みのリズムバターンをベースにしつつ、生楽器やコーラスを緻密に組み込んでいく、ポップで特徴的な角松サウンドは、この凍結期間に確立したのではないかと思います。

凍結期間中の作品として、例えば東京パフォーマンスドールのフロントだった米光美保の『風のPAVEMENT』(1994)などは角松サウンドの典型。この曲の後半の弦のソロは秀逸です。アイドルとしての彼女の活動は全く知りませんが、このアルバムでの角松とのコラボは魅力的ですね。

・1999.01 TIME TUNNEL
・1999.06 voices under the water / in the hall
・1999.08 Revenge of AGHARTA
・2000.01 The gentle sex

そうだ彼にはまだやり残したものがあったなと、解凍後最初のアルバムでまさかのプログレに挑戦。学生時代にUKプログレのキャメルのコピーバンドを組んでいましたね。微笑ましいというか呆れたというか何というか・・・。ただ解凍公演には全く間に合わないタイミングでのアルバムリリースや、待望の新作でまさかの趣向にファンは相当に戸惑ったのではないでしょうか。創作活動としては思うがまま八方取散らかすのはアーティストとしては自然な姿勢なのでしょうが、ビジネスとしてはどうなのでしょうか。「角松敏生」というコンテンツをコーディネートする、ビートルズにおけるジョージ・マーティンの関係のような人との出逢いがあったら良いのになと感じてしまいます。

この時期の彼は、国民的大ヒット曲を含むAGHARTAでの長万部太郎名義の活動 (解凍後に改めてツアーを組んで逆襲するつもりが返り討ちにあったと嘆いていました)や、VOCALANDの楽曲のセルフカバーなど、凍結期間の活動の精算をしていたように思えます。そしてこの期間の最大の資産「WAになって踊ろう」が長野五輪の閉会式のフェアウェルソングに採用され、世界中継で角松を含むAGHARTAの面々と共にTV画面に写し出された時には、嬉しくて涙が出ました。

・2000.08 存在の証明
・2002.06 映画「白い船」オリジナル・サウンドトラック
 (2001.08 20th Anniversary Live @東京ビッグサイト西屋外駐車場)
・2002.10 INCARNATIO
・2003.08 Summer 4 Rhythm
・2004.08 Fankacoustics

さて、ここからが復活角松の本格始動の時期。この頃に縁あって中野公演終わりの打ち上げの席に紛れ込む機会があり、そこで「今度の新作はポール・サイモンみたいなアコギがジャカジャカ鳴る曲作りたいんだ」と言っていました。まさにそんな曲で始まる『存在の証明』。私の大好きなアルバムの1枚です。私たちと同年代のドラム沼澤尚との競演の時期とも被ります。

そして2001年のデビュー20周年記念ライブの無念の台風で初日開催中止という苦難を乗り越えるパワーも、創作意欲に満ちていたからなのでしょうね。

続く『INCARNATIO』も充実の作品。このアルバムリリース直前のEXTRA TOURは、都内のライブはチケットが取れず、わざわざ神戸のChicken Georgeまで観に行った甲斐があって、私が観た彼のライブの中でもベスト10に入ります。勢いそのままで『Summer 4 Rhythm』も私は大好きなアルバム。この2枚の作品はコンセプトはまるで違いますが、ある意味では兄弟のようなアルバム。詳細は別の機会に譲りますが、この時期の作品は何かに取り憑かれたように良作連発で、アーティストとしての円熟期と言える気がします。

この動画にある20周年記念ライブは、まさにベストメンバーによるベストテイク。この日は私も会場にいました。初めて野外で聴く角松サウンドもなかなか良かったです。しかしホントに暑かった(大汗)。

この後、こうした円熟の活動も思わぬ不幸に見舞われ期せずして消沈。新たな方向性を模索しながら今に至る・・・そんな彼の活動の現在に至るまでのお話しは次回、(とりあえず)最終回に。


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