見出し画像

【名盤伝説】 “Led Zeppelin / Physical Graffiti” 明暗多彩な景色が浮かぶ快作

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。UKロックのレジェンド、レッド・ツェッペリン6枚目のアルバム『フィジカル・グラフィティ』(1975)です。

1973年からの熱狂的なアメリカツアーを終えたZEPが、結果的に約1年の沈黙を経て自身のレーベルスワンソングを立ち上げた後にリリースした最初のアルバムとなります。レコーディングは充実したものとなりLP1枚では収まらない楽曲が仕上がり、削るよりは既にレコーデイングしていた曲を加えて2枚組にしようということになりました。そして新録音8曲、そして『III』、『IV』、『聖なる館』の未発表7曲を加えたラインアップとなりました。

未発表作品とはいえ単なるボツ曲ではなく、それぞれのアルバムに収まりきれなかったというだけで、個々の作品の出来は遜色ありません。むしろこのグラフィティ(落書き)のような多彩な趣向を持つ、長尺かつ一体感のあるアルバムの登場を待っていたかのように、見事に収まっています・・・というか、収めたプロデューサーとしてのジミー・ペイジの力量だといえます。

窓にはアルバムタイトルの文字が並びます。それが…

収録曲
M1
「カスタード・パイ」 印象的なジミーペイジのギターリフから始まるこの曲。ロバート・プラントの歌が始まると同時に、何かを叩き割るかのようにリズムを刻むジョン・ボーナムのドラムがともかく迫力満点。実は一本調子のリズム・パターンではあるものの、そこに絡むペイジのギターやジョン・ポール・ジョーンズのクラヴィネットなどが彩りを添えることで、最後まで飽きさせないアレンジの妙が楽しめます。それまでのアルバムと比較しても、リスナーをかなり煽り立てるオープニング曲です。

実はこの曲は古典的なブルースナンバーのカバー曲なのだそうですが、これだけ個性的なボーカルやギター、そしてリズムアレンジが施されると、もう完全にZEPのオリジナルと呼べるのではないかと思います。

M2「ザ・ローヴァー」 スローテンポでヘビーなハードロック。単調なAメロと、一転Bメロのギターとベースの複雑なフレーズの絡みの対比は痺れます。これぞZEPだという魅力に溢れています。『聖なる…』のアウトテイクではあるものの、このアルバムのこの場所に収まるべくして生まれた作品だと思います。

M3「イン・マイ・タイム・オブ・ダイイング」 LPだとこの3曲だけでA面はお終いです。え?もう終わりなのという感じですが、損した気分にはなりません。11分にも及ぶ大作。ヨーロッパ的な暗くて湿っぽい作風が、ZEPサウンドの特徴ですが、この曲はまさにそんな匂いを存分に感じさせます。

伝統的なゴスペルナンバーにインスパイアされたとのことですが、後半部のテンポアップで一気にハードロックに転換、お得意のスライドギター弾きまくりの、必死なペイジの顔が浮かびます。タムを叩きまくるボンゾのドラムも最高に格好良いです。うん、無事にA面終了感を味わえます。

M4「ハウジス・オブ・ザ・ホーリー」 あれ?前作の『聖なる館』ですか??。タイトル・ナンバーがアウトテイクになるなんて(汗)。一転ポップな曲調。確かに前作のどこにも収まる場所はありませんね。

ZEPアレンジの特徴、ボンゾはただリズムキープしているだけなのに単調に聞こえないマジック。それだけペイジのリフが複雑で独創的だという証拠。これは次のM5「トランプルト・アンダー・フット」にも通じます。

こちらはお初?クラヴィネットが基本のリフを刻みます。音が似ているということで、スティービー・ワンダーの名曲「迷信」のパクリとも言われますが、それは違いますね。このくらいジョーンズのプレーをフューチャーした曲がないと、彼も拗ねちゃいますね(苦笑)。

M6「カシミール」 ある意味アルバムのハイライト。不気味な雰囲気のリフが頭から離れません。同名のエスニック料理屋さんで、とある音楽イベントの打ち上げをしていた時に、やはりカシミールという名前の料理がメニューにあって、店員さんが「カシミール」お待たせしましたと言った途端に、参加者全員で「ジャジャジャン、ジャジャジャン♩」と歌い出したという、ミュージシャンあるあるのおバカなシーンがありました。懐かしい思い出です。この曲でB面終了です。

M7「イン・ザ・ライト」 エスニックで暗い雰囲気のシンセフレーズと、一転Bメロの明るさに満ちたパートとの、光と闇の対比が美しい曲です。Bメロのジョーンズのベースのフレーズはかなりクリエイティブ。アマチュアながらベース弾きの私にして、かなり影響を受けている曲です。誰も気づいてくれませんけどね…。

M8「ブロン・イー・アー」 生ギター1本の小曲。『III』のアウトテイク。70年のツアーで一度演奏されているそうです。

M9「ダウン・バイ・ザ・リバー」 世紀の名盤『IV』のアウトテイク。全くZEPらしくなく、この曲がIVに入るなんて想像できません。というか何でこんな曲をレコーデイングしたのかというほど、らしくありません。とはいえ曲そのものは悪くはないです。ビートルズ『ビートルズ(ホワイトアルバム)』に収録されている「ハニーパイ」みたいな雰囲気。この『フィジカル…』がホワイトアルバムみたいだと評される所以なのかもしれません。

M10「テン・イヤーズ・ゴーン」 静かな雰囲気で始まりますが、そこには暗く湿った雰囲気はありません。ある意味安心して聞けるスロー・ナンバーです。よく聞くとバッキングのギターは、一体何本重ねているのかというほど複雑。ヘッドホンで聴きながら数えてみましょう(笑)。さぁいよいよアルバム最終面に突入です。

M11「ナイト・フライト」 ミディアム・テンポながら疾走感を漂わせる曲。『IV』のアウトテイクらしいのですが・・・確かに収まり悪いですね。

M12「ザ・ワントン・ソング」 ZEPらしい曲がようやく出てきました。この曲もBメロに入る直前あたりがボンゾの技が満載。実際に叩こうとするとかなりハードル高そうです。Cメロの転調も素敵です。

M13「ブギー・ウィズ・ストュー」 『IV』のアウトテイク。何でこんなカントリーチックな曲をレコーデイングしたのでしょうか。ちなみにマンドリンはペイチ、生ギターはプラントだそうです。

M14「ブラック・カントリー・ウーマン」 『聖なる…』のアウトテイク。こちらもカントリーチックな小曲。タイトルは「田舎娘」というやや卑下した意味を持つスラングだそうです。ま、これはアウトテイクで良かったのかも。

M15「シック・アゲイン」 これは新録音。シンプル&タイトな、これぞZEPって感じの曲で大作アルバムを納めています。

さてこのアルバムもジャケットが特徴的です。デザインはニューヨークに実在するアパートがモチーフ。その窓がくり抜かれて、インナースリーブのデザインが抜けて見える仕様。スリーブを入れ替えると見える絵柄も変わる趣向です。そこにはエリザベス2世などの有名人が顔を覗かせます。制作は御用達のヒプノシスです。

表面は昼間、裏面は夜間の景色になってます。どこまで凝っているのか
というデザインです。

このレコードは、ほぼリアルタイムで買った数少ないアルバム。大事に何度も聞いていたかもしれませんが、単に雑多な曲の寄せ集めかのような評価で済ませてしまうのはいかがなものかと・・・私にとっては大切なアルバムです。

この記事が参加している募集

私のコレクション

with 國學院大學

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?