名刺
時期的に退職の挨拶,再就職のお知らせ,再就職先の退職,再々就職先の…なんて感じで,色んな先輩方とお会いすることがよくある。
そんな中である方とお話をする機会があった。
20年近く前に退職された方で,同じ職場になったことはないが,僕がとても尊敬している方だ。誰に対しても,穏やかに,上からではなく,謙虚で,優しく諭すような口調で話される方である。「人格者」とはこの人のためにある言葉だとさえ思っている。顔つきも,僕には「仏様」のように見える。
2週間ほど前,その方に会える場所を教えてくれた人がいて,とても会いたかったので自分から出向いた。それは自分の職場と同じ建物の中だった。
お会いしたのは退職以来約20年ぶりである。20年の時を経て,お互い,風貌の変化はあるものの相変わらず温かい雰囲気で私を包んでくれた。私が訪ねて行ったことに驚いておられたが,とても喜んでくださった。
その方が言うには…
「私は2年前からここにいます。でもここに居ることを公言すると,気を遣ってやってくる人もいるだろう。リタイヤした身でありながら,毎日,こうやって使ってくれていることに感謝するだけで良いと思っていますから。」
…とのこと。相変わらず,素敵な方だと心の底から思った。
他方で「退職のご挨拶」と書いた名刺を持ち,未だに上司面して,職務中に堂々とやってきて,僕の仕事の手を止めさせ,どうでもいい話を延々とされる「お方」もいる。
この時期,僕のゴミ箱の中には「名刺」が多い。
数年後には僕も,今持っている名刺を全て捨てることになる。
自分の引き際では,ちゃんと自分を弁えたいなと思う。
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