見出し画像

《写真の保存修復を考えてみた vol.13》~写真の劣化5~ by タケウチリョウコ


今日5月18日の誕生花は「バイカウツギ(梅花空木)」です。花言葉は「思い出」「気品」だそうです。
小さな花ですが真っ白で美しく生命力を感じます。
一年前、noteでこの連載記事を始めた時を思い出しました。この間にアップデートした情報も随時更新して今後もお届けできたらと思います。

こんにちは。タケウチリョウコです。
今回は「写真の劣化5」として「物理的劣化」に注目します。
いよいよ写真の劣化シリーズ終盤となりました。


**********

前回ご紹介をしました「化学的劣化(銀鏡黄変)」は専門用語が多く、見聞きする機会が少ない劣化症例だったかもしれません。
一方、物理的劣化は容易に想像できるものばかりです。
物理的劣化には下記のようなものがあげられます。

・破れ
・折れ
・欠損
・擦れ
・亀裂
・剥離
・変形


これらの要因には人為的、経年変化またはその両方によるものがあります。
まずは人為的な理由で生じやすい劣化から見ていきましょう。

破れ
一部または全体が破断している状態。原因として物理的に方向の異なる力で引きちぎられたか、刃物等で切断されたかなどが考えられる。

折れ
鋭角な山を伴った損傷で、鈍角あるいは波打ち状の皺等と区別される。原因として、物理的な事故による場合がほとんどである。

欠損
一部が無くなった状態。原因として、生物被害によるものや人為的に引き起こされたものなど様々である。

擦れ
細かい擦り傷が集中し、面上で擦れた状態のもの(Abrasion)と、尖ったもので引き起こされるひっかき傷(Scratch)がある。原因として、取り扱いや運搬時などの物理的な事故による場合がほとんどである。

参考文献:『写真保存の実務』 大林賢太郎 岩田書店 2010年

実際に自分が所有する写真を注意深く観察して「物理的劣化」を探してみました。
すると、写真そして台紙や装丁に沢山ありました...。


写真の破れ、欠損

画像1

人為的に引きちぎられた様子。アルバム写真では位置の変更のため無理矢理剥がし、別のページに貼り直されている事がしばしばある。または内容に不都合が生じ、故意に剥がされる例もある。
あるいは写真と台紙を固定する接着物質の効果が経年により薄れ、自然と剥がれた事により意図せず破れや欠損が生じる事もある。


台紙の破れ

画像2


写真の折れ

画像3

写真の端が折れている。一枚ものの写真でアルバムやケースに収めず、サイズがバラバラの写真を重ねて箱に入れていたため、鑑賞する際や運搬時に折れてしまったものと考えられる。

**********

テーマである保存修復の目線で自身が所有する写真を紹介していますが、祖父母が残してくれた家族写真を見ていると、専門性を忘れて感慨深くなります。
気がつくと、どんな気持ちで写真を見て、どんな話をしていたのかと思いを巡らせます。
家族写真はふと見たい時に見て、手帳やお財布にしまう事もあります。沢山の時間を家族と過ごした写真ほど劣化が多く、その劣化も含め、祖父母の温もりを感じました。

次回は「写真の劣化」の続き、経年変化による物理的劣化に注目します。
それでは、また見に来て頂けたら嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?