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【カンボジア生活】中国不動産バブル崩壊で、カンボジアへの影響は?

最近、カンボジアに投資をしている友人等から、中国の不動産バブル崩壊がカンボジアにどのような影響を及ぼすと思うかとの質問を受けることが多くなりました。昨晩明かりが乏しい高層アパートメントが立ち並ぶ、現在のプノンペンを眺めてふと思ったことを徒然に書いてみました。

昔はどうだったのか?

私がカンボジアに来た頃は、プノンペン都中心部で高い建物と言えば、セントラルマーケット脇のダイヤモンドホテルでした。確か7階建てだったと思いますが、その屋上からは360度プノンペンを一望できた記憶があります。その頃、プノンペン都中心部の標準的なプテアロヴェーン(タウンハウス、4mx16m、2階建)の販売価格は5万ドル、賃貸価格は月500ドル程度でした。もちろん、その他経費もかかりますが、ざっくり言うと100ヶ月で投資が回収できたことになります。現在、少なくともそれは10倍の50万ドルに高騰しましたが、賃貸価格は10倍の5000ドルにはなっていません。そんな価格で借りたら、住むにせよ商売するにせよ、普通の人の生活は成り立ちませんからね。

2010年頃、旧インターコンチネンタルホテルから北を望む。左奥にまだ新しいCanadia Tower、右奥には当時から建設中だったGold Towerが見える。高層アパートメントはほとんどなかった。



現在のプノンペンの不動産情報を見てみますと、下手したら日本より高い金額なのには驚きました。実際の経済水準と比べて、不動産価格は高すぎると感じました。5年ほど前までと比較して、カンボジアの不動産の投資効率は明らかに低下しています。中国経済が失速しつつある中で、その中でも特に乱立するサービスアパートメントは、今後どうなるのでしょうか。投資目的でサービスアパートメントを購入しても、それを賃貸する対象の外国人駐在員等は無限には存在しません。もちろん購入して自分で住むのであれば、お値段がどうであれ自分が満足すればよろしいことだと思います。ただ、投資物件として購入し賃貸を計画するのであれば、甘い言葉に乗らずにちょっと考えてみた方が良い時期だと思います。

現在の実情は?

現在もたくさん立ち並ぶプノンペン中心部のサービスアパートメントですが、夜にそういったアパートを見上げてみますと、明かりがついてる部屋が10%にも満たない物件も見受けられます。多くの投資物件が賃貸できずに、部屋が埃をかぶっている実態が垣間見えます。

明かりが乏しいプノンペン都のサービスアパートメント。左の建物は結構入居しているように見えるが、等間隔のデコレーションの灯だった。


投資効率として何年で回収といった表現がよく見受けられますが、同程度の部屋が実際にいくらで賃貸されているのかを確認することも大事です。ネット検索して表示されている金額で取引される事は少なく、値引き交渉が一般的であることも忘れてはいけません。私の知人がついこの前借りた事例ですと、不動産会社のサイトで月1500ドルで表示されている物件が交渉で1200ドルになり、更に1年分をまとめて前払いを条件として1000ドルになっていました。あくまでも、私が目にした一例ですが、これが実際の賃貸価格なのかと思います。

先ほども、地価の上昇に従って賃貸価格が自動的に上がるわけではないと書きましたが、カンボジアの庶民にとって高嶺の花であるそのような高層アパートメントに住む人は誰なのでしょうか?。カンボジアの富裕層は賃貸しないで自分で買います。カンボジアの庶民は高くて借りれません。となると外国人駐在員が主要なターゲットだと想定されます。その人数は限定されますし、供給過多で空き部屋がたくさんある現状は、既に当座の需要を満たしているともいえます。

今後どうなるのか?

では、どのような住宅が必要とされているのか。需要と供給を見ての一例ですが、地方から流入し結婚して子供を作る、プノンペン新住民のために郊外に公団住宅的なものを作るのであれば、それはいくらでも需要があるでしょう。プノンペンの人口は急激に増加していますが、流入した人口に見合った、日本の高度成長期の公団住宅のような、政策としての廉価な住宅の大量供給はできていません。

不動産の専門家ではありませんが、カンボジアに長く住む身としてなんとなく想像する(周囲のカンボジア人も感じている)のは、中国不動産バブルの崩壊の影響を受けて、主に中国からの投資で乱立した高級アパートメントが今後値崩れするだろうなということです。不動産バブルの崩壊によって、政府の施策が遅れて作れなかったいわゆる公団住宅的な役割を補完できれば、結果として中国投資がカンボジア国民に寄与することになるかもしれません。中国を中心とする海外の富裕層が投資したアパートメントが、カンボジア人によって買い叩かれ、中古物件としてカンボジア人家族の住居となる日は来るのでしょうか。

もう一つの懸念、建物の安全

灯りの乏しいタワーマンションを見上げてふと心配になったのが火事に対する懸念です。昨年末のタイ国境ポイペトのカジノホテルでの火事で、数十人が死亡する大惨事が起きた事は記憶に新しいかと思います。ポイペトには梯子車の届く10階程度であっても対応できる消防体制が一切なかったことが判明しています。私の知る限り首都プノンペンにおいても、高層火災に対する準備がなされているとは思えません。プノンペンにおける消防制度の拡充を期待したいものです。

昨年12月末のポイペトカジノ火災


また、そのような状況の国だからこそ、建物がどの程度の耐火性、防火性があるかの確認は非常に重要です。物件を購入する際には、その該当物件ではなく、同じデベロッパーの過去の物件を調べるのが良いと聞いたことがあります。過去の物件が手抜き工事をしていないか。高コストになってもきちんと不燃材料を使って建設し、耐火構造になっているか。高層に対応した充分な数の階段やエレベーターが設置されているか。排煙設備があるか。二方向以上の避難ルートがあるか。こういった視点で見ると業者の誠実さや安全性がわかるかもしれません。カンボジアで合法的な建設なのは当然ですが、例えば日本やシンガポールなどの第三国の基準に準拠した、安全に配慮した建設を行っている物件は少ないようです。

中華物件でよく宣伝されるのは、大理石の豪華なロビーや高層階のインフィニティプールなどの表面的な豪華さですが、前述のように耐火性といった普段は目に見えない点にも注目したいものです。同様に湿地を埋め立てて発展したプノンペンにおいては、基礎工事の信頼性もとても大事です。

もう一点、一家に一台から一人一台になりつつある車についても要注意です。駐車スペースがきちんと確保されているかも大事ですね。この点については、中華プロジェクトは意外としっかりしているようにも感じます。利益を高めるために、階段やエレベーターを減らしたり、駐車スペースを減らしたり、居住する際の快適さや安全性に留意したいものです。

区分所有権、敷地権と高層化

一昔前、サービスアパートメントが立ち始めた頃には、区分所有権の登記がなされていない物件の販売が多く見受けられました。現在は、部屋ごとにきちんと区分所有権のハードタイトルがつくようになったと聞いています。当時はプレビルドで購入し建物が立たなかった場合や、不良建築発覚で短期間に解体する場合のことも想定し、敷地権がどの程度つくのかも調べていた記憶があります。少なくとも底地の権利で一定の金額が回収できるようにと考えていた人が多かったからです。そもそも敷地権が自動的に付帯しているかどうかといった専門的なことは私には不明ですが、高層化すればするほどその権利の比率は小さくなりますので、いくら土地の価格が高騰してるとは言え、最近の高層アパートメント物件では土地に対する資産価値は下がってしまいます。

またアパートメントの開発を始める前には、まずは土地を取得しなければいけませんが、開発する土地の権利が信頼できる形で公に確定してるかどうかを確認するのも重要なことです。特に外資による投資プロジェクトの場合、投資を行うその土地が誰の名義を借りており、所有権に問題がないかを確認をすることも必要です。名義借りにより多くのトラブルが起きているので、気をつけたい点です。サービスアパートメントの建設プロジェクトにおいては、底地のハードタイトルを購入者に公開するのが当然です。中国人デベロッパーの場合、カンボジアに帰化して自分名義で購入する例もあると聞きますが、日本と同様に中国では二重国籍を認めておらず違法ではとの声も聞こえてきます。もし自分で購入するとすれば、土地の所有権がどうなっているのかを確認した上で、自分の購入した区分所有権に底地の権利も含まれてるかどうかについても確認する必要があるなと思いました。

私もこの辺り詳しくはありませんが、カンボジアに生活していて聞きかじった例を記します。一般的な雑居ビルにおいては、1階を所有するものが底地の権利を持っており、2階以上は区分所有権のみになると言われています。デベロッパーが土地の権利を占有していて、購入した部屋には土地が付随していない場合もあるようです。こういった契約の場合、建物に不備があったり、老朽化して解体したときには、区分所有権を持っている人には何の権利もなく、全てデベロッパーのものになるんですかね。区分所有権にきちんと敷地権がついているのか、あるいはデベロッパーが総取りするのか、この辺り不勉強ですが知見のある方に教えていただきたいものです。

こういった話の参考になる2016年のJETRO調査がインターネット上で公開されていますのでご紹介します。登記に関して全般的な基礎情報が書かれています。些細な点ですが、カンボジアでは、法令で指示されている管理組合の設置、管理規約の制定がほとんど進んでいないとも指摘しています。資産運用のためには適切な管理による資産価値の維持が重要だと指摘されており、この点も注意が必要です。

どの投資物件がいいのか

あくまでも私見ですが、条件によるものの農地物件はざっくり平米あたり2ドルなのかなと思っています。またプノンペンの不動産に関しては既に高騰しており、全般的に時既に遅しなのかなと感じています。確定した利回りを考えるのであれば、不動産購入でリスクに踏み込むよりは、銀行に米ドル建で預金するのが1番確実ではないでしょうか。カンボジアにおいては年利8%程度のものも散見されます。こちらもまとまったお金で交渉すると、高金利が個別に設定されることがよくあります。また、日本の大手銀行等が出資している銀行なども複数あり、預金に対する信頼感も得れるのではと思います。

それでも預金ではなく不動産を購入されたい方には、スターツやエイブルといった日本の大手ブランドも進出していますので、そういった複数の会社の情報を入手してみることが良いと思います。またJETROのような政府機関も存在しますし、日本人会日本人商工会のようなコミュニティーも存在したくさんの日本人が住んでいますので、多くの方からのご意見を聞いて、慎重にご判断されたらよろしいかと思います。

どうしてもサービス、アパートメントへの不動産投資がしたいと私が相談された場合、

-完成するかどうかわからない、また品質が確認できないプレビルドは避ける
-実際に問題がないか確認が出来るように、建設後数年経った物件を選ぶ
-平米単価が多少高くても、耐火性など安全に配慮した、今後新たにできる物件とも競争できる高品質物件を選ぶ
-将来の老朽化に備え、敷地権があるものを選ぶ
-敷地権の比率や防災を考慮し、あまり高層でない物件を選ぶ

こんなことをお勧めしようかと思います。

改めて申し添えますが、こちらの投稿内容は(この投稿だけでなくこのブログ全体がそうですが)、カンボジアに長く住んでいる日本人個人としての私見です。不動産に関して同じような質問を受けることが多くなってきましたので、個人的に思ったことを文章にまとめてみました。これからは類似のご質問をいただいた場合、この投稿見てとご案内しようと思っております。

また、文中で中華物件といった表現を使っておりますが、中国からの投資を一概に否定するものではありません。国籍に依らず玉石混合だと感じています。

最後に一言、「皆が儲かると言い始めたら投資ブームはもう終わり」なのかなと思います。前回はシェムリアップジェラートについて私見を書きましたが、今度は不動産。リクエストいただければ、こんな感にカンボジアに関係するあれこれ書いてみるかもしれません。(書かないかもしれません。

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