無人島に持っていきたいカメラと本

BBCのラジオ4にデザートアイランドディスクスという長寿番組がある。ゲストに無人島に何を持っていくか(音声レコーディング、主に音楽)を聞くというコーナーがあるという。先日フォトグラファーのポッドキャストを聴いていたら、これを模して、ゲストに無人島に持っていくカメラと本(主に写真集)を尋ねるという企画があった。

自分だったら何を持っていくだろう。

フィルムカメラかデジタルカメラか。そもそも無人島でありながら、現像もできるという設定らしいのでデジタルもOKなのだろう。それでもできればフィルムカメラを持っていきたい。

締切のある依頼仕事はないという前提で考える。使ったことのあるカメラならニコンFE2かライカM6。使ったことがないカメラでも良ければ、中判のプラウベルマキナ670かマミヤ7IIかな。修理業者がないならニコンFE2とマミヤ7IIを選びたい。FE2は登山に仕事に結構使っていたが、ほとんど壊れた記憶がない。内蔵の露出計が針が上下する方式なのでファインダーを覗きながら、露出を感覚的に掴みやすい。それにニコンにしては小型だった。マミヤ7IIは欲しいと思いながら結局買わずじまい。生産終了してからだんだん中古も手の届かない値札が付くようになったからだ。

本、写真集は少し悩む。

好きな写真家はいろいろいるが、無人島に一冊となると迷う。ストリートスナップやジャーナリスティックなものに普段は興味があるのだが、無人島には何か合わない気がする。写真表現とは何か、とか生と死について考えそうなので、本ならロラン・バルトの「明るい部屋」、写真集限定なら川内倫子の「うたたね」だろうか。



前者は言わずと知れたバルトの遺作。母親の死後に見つけた彼女の写った写真から写真について思いを巡らす。いくつか写真が挿入されているが、問題の写真は入っていない。後者も木村伊兵衛賞を受賞したうちの一冊で非常に有名だ。川内氏のデビュー作と言っていいだろう。中判フィルムで表現された淡い色彩は確か真似する人がたくさん出たが、やはり日常を写しながらも見る人を惹きつけ、生と死を想起させる被写体とその構成が秀逸だと思ったのを覚えている。

このカメラと本なら、無人島に流されてもしばらく暮らせそうだ。

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