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その数式に物語はあるのか?

あっという間に夏休みが終わりましたね。
今年の夏は暑かったなー!昨夜あたりはだいぶ涼しくて寝やすかったけど。

2学期制が導入されて以来、多くの公立中学校では、かわいそうに、夏休み明けはすぐに前期の期末試験が始まる。しかも中間試験とは異なり、試験科目は全部で9教科。3教科ずつ3日間にわたり行われる。つまり夏休みのラストの週は『テスト1週間前』となり、自由研究や読書感想文などの夏休みの課題は一刻も早く仕上げて、テスト用の勉強を始めなければならない時期となるのだ。

我が家の場合はさらに深刻だ。中学3年生の息子がいるからである。5か月後には高校受験が控えている。今回の期末試験が終わると、前期の成績表がつけられる。そしてその成績と後期の成績を併せたものが『3年生の成績』となり、受験する高校を選ぶもっとも重要な目安となる。そんな重要なテストを3日後に控えてはいるものの、我が息子は相変わらずのんびりマイペース、ソファーでダラダラとくつろいでいる。でも一応、彼の名誉の為に(?)付け加えておくが、手にしているのはスマホではなくチャート式の参考書、そう、ご存知、数研出版の名著である。

息子は数学が大の苦手である。私自身も根っからの文系で、高校3年生になりようやく理数科目とオサラバできたときは、あーこれでもう一生あの訳の分からぬ数式や記号を見なくていいのか!と喜びに涙した側の人間だったので、息子が数学が大嫌いというのは、とてもよく理解できる。しかし、理科は好きらしい。まあしいて言えば、理科の中でも生物や植物は好き、しかし質量を求める、地震の震度を測定する、などの計算が絡んでくる苦手。本人曰く、数字を目にすると、とたんにやる気を失うらしいのだ。

頭はそう悪い方ではないと思う。塾へも行かず、国語と英語に関しては、テスト前はほぼノー勉(あえてテスト用に勉強しないという意味ですね)でも、まあまあの点数を取ってくる。その他の教科も成績で言うと5段階中の4平均。ハッキリ言って、私が中3の頃よりも全然できる。
がしかし、数学はからきしダメ。「もー!理解力が無いわけじゃないんだから、もうちょっと日頃からコツコツと、1日1問でもいいから問題解くように習慣づければいいのにー!」と私は常々言っているのに、彼はいっこうに数学だけは手を付けない。テスト前日にワークの問題を数問解いて、でも当然のことながら全く解けなくて、いやになって泣く。毎回このくり返し。 なぜ?

そんな息子が、『社会』を勉強しているときに、やたらとニヤニヤしているのが目に入った。先週のことである。どうやらワークの問題を解いているらしく、『蒋介石』と解答している。「どうしてそんな笑いながら解いてるの?」と私がたずねると、「だっておもしろいじゃん」と息子。彼のノートをのぞき込むと、蒋介石の顔が落書きしてあった。さらにその横に吹き出しが描いてあり、その中に「中国共産党のバカヤロー!」とセリフが書かれてあった。そういえば以前、英語の教科書にもリクだかメイだかの登場人物の落書きがあり、“No way!”とか、“I want to defecate.”などと、けっして褒められる言葉ではないが、あながち(文法的には)間違ってはいないセリフがあちらこちらに書かれてあるのを見たことがある。(授業ちゃんと聞いてんのか?)

どうやら息子は、そこに書かれている教科書の内容の向こう側を想像し、そこから物語を創りだし、その世界を浮遊するのが好きらしいのだ。
息子が中学2年生のころ、国語の授業で『走れメロス』を学んでいたとき、違うエンディングを想像して書いてみようという課題がだされると、原稿用紙がすぐに足りなくなってしまい、彼だけ何枚も『おかわり』しに先生のところへ行ったそうである。
英語では、読み物として教科書に載っていた物語文(星の王子様)を、先生に言われてもいないのに、授業の合間などにコツコツと翻訳していたらしい。(しかもなぜか関西弁で。コイツに関西弁をしゃべらせたらおもしろそうと思ったらしい。あとで見せてもらったけれど、彼の解釈は斬新で、なかなかよく出来ていた。)
中学校の『社会科』では、地理・歴史・公民の3つのエリアを学習するのだが、人物(しかもとても興味深い背景をもつ)が最も多く登場する歴史が一番好きで得意である。それらの歴史上の人物の性格や本性?を想像して描くのが大好きなので、その人物やそれを取り巻く事件や背景を知ること=勉強をすることが苦ではないらしいのだ。

息子にとって、勉強のやる気の尺度は、その向こうに物語が見えるかどうかということらしい。なるほどね。確かに、
『2x+ax+b=0の解の1つが2-3√6のとき、a,bの値を求めよ。』
などと言われても、なんの物語も見えてこないもの。(少なくとも私には💦)

……いや、ちょっとまてよ?
最高視聴率34.2%を誇ったあの名作ドラマ、『やまとなでしこ』に登場する中原欧介(演/堤真一💕)はどうだ?
彼は物理学者リチャード・ファインマンの『数学や物理というのは、神様のやっているチェスを横から眺めて、そこにどんなルールがあるのか、どんな美しい法則があるのか、探していくことだ』という名言を引用し、「ひょっとしたら、人と人が出会う事も、そのルールに則っているのかもしれません。」と、熱く語っていたではないか!そして神野桜子(演/松嶋菜々子✨)のような美しい伴侶を得たではないか!(←いやそこは関係ない💦)
そう、一見すると退屈で理解不能なあの数式にも、見ようによっては、解きようによっては、そこになんらかの物語が存在するのかもしれない。

そんなわけで私が思いついたのが、『チャート式中学数学3年』である。
さっそく近所にある比較的大きな書店へ行き、この本を手に取った。その昔私が使っていたものよりもはるかに進化しており(当たり前だ)、なんとページがめくりやすいソフトカバーになっている。(昔はハードカバーだったから扱いにくかった) そしてその内容は…………わ、わからん💦💦 
わからないけれど、カラーでなんだかとっても見やすそう、なんとなく。
少なくとも、問題集のように、ただ問題文がダァーっと羅列していてそれを淡々と解いていくより、まずはじめに、カラフルな図や見やすいレイアウトの文字で記された説明文を読み、そのあとに問題を解くというこの参考書のスタイルのほうが、息子には合っているような気がする。

「これ、良さそうだったから買っておいたよ。今回の試験範囲の箇所だけでも目を通しておけば?」と私は言って息子に渡した。息子はその本をろくに見もせずに、しばらくほったらかしにしていたが、つい先ほど、ふと見るとその本を手にしているではないか!読んでいるではないか!
息子曰く、この本は、
・説明が簡潔でわかりやすい
・説明文のすぐ後に問題が数問(2~3問という量がミソ!)あり、すぐ試せる
・そのすぐ後に答えがあるからラク(答えが別冊になっているタイプでない)
なので、扱いやすいとのこと。とりあえず、手にしてくれただけでも、よかった、よかった。

彼の解く数式の向こう側にはまだ、物語は見つかっていないようだ。
もしかしたら、もう数学はずっと苦手なままで行くのかもしれない、私のように。それに大きな声では言えないが、「数学なんて将来何の役にも立たない!」という持論が私の中にある以上、彼に対しても何が何でも数学を勉強しろとは強く言えないのが正直なところ💦
でも、苦手な教科を通して、考えること考えようとすること、あるいは、一生懸命考えても理解できなくてイライラすること、そういった体験を、若いうちにできるだけ多くしてほしいとは思う。だって大人になったらそんなことばかりだもの。対峙する対象は数式ではなく、人間関係仕事にとって替わるけれど。
好きな物語の世界だけで生きてはいけない。まだ若く、脳みそも柔らかいうちに、苦痛なことにもできるだけ多く向き合っておかなければ。(克服する必要はない。ただある一定の期間向き合うだけでいい。)

ふと横を見ると、とっくに参考書は置き去りにされて、息子はソファーでゴロゴロしながら動画タイム。
やれやれ。
そう言っている私もそろそろ立ち上がり夕食の準備をしなければ。
「何が食べたい?」と聞くと、「ハンバーグ!」と勢いよく返事が。
そうね、好きなものを食べるぐらいしか楽しみないものね、特にテスト期間中は。


※オススメの参考書(特に数学と理科)をご存知な方はぜひ教えてください!

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