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サッカーと過ごした10年間①はじまり?

はじめに

 「趣味は何ですか」と聞かれると、決まって「サッカーです」と答えている。

 休日にはフットサルやJリーグ観戦などをするし、一人でも近くの公園でリフティングもする。今となって、サッカーは私の日常にある。

 しかし、子ども時代の一選手として過ごした時間は、決して楽しいものではなかったのかもしれない。

きっかけ

 たしか、幼稚園の頃だった。たまたま父が観ているテレビを眺めていた時だった。父がチャンネルを変えた次の瞬間、鳥肌が立った。

 その画面では、青い服を着た人が、白い服を着た外国人にぶつかりながら1つのボールを懸命に守って前に進めていた。そのガタイの良さや真剣な顔つき、驚くべきボールさばきなど、すべてが新鮮に、そして、とてもかっこよく見えた。

 その姿を見ている大人たちが、今テレビを見ている物静かな父とは異なり、誰もが恥ずかしがることなく、自分出せる最大の声量で応援していた。会場が揺れるほどの「おー!」という大きな声とその迫力が、目の前の画面からも感じられた。

自分もこんなプレーができるようになりたい」
「こんな大きな声援を送ってもらえるかっこいいサッカー選手になりたい」

と思い、初めて自分が心の底から「やってみたい」と思えるものがサッカーであった。

 親は兄弟の誕生や金銭面のやりくり、私が小学校生活に慣れる時間などを考慮し、小学3年生のとき、やっとサッカークラブに通い始めた。

入団

 サッカークラブは通っていた小学校とその隣の小学校のクラブと2つあった。友達が多い前者のサッカーに行けばよかったものの、私は一番の親友がいたことと、親にとっては月謝が安く送り迎えやお茶当番などがないことから、隣の小学校のサッカークラブに入団することになった。

 入団のちょうど2日前に同い年の子が入団していた。その子とも気が合い、「何とか頑張れそう」と思いながら過ごした。

 自分の足より大きいボール、蹴ると痛みを感じる薄いシューズ、どこに走ればいいかわからない大きなピッチ…すべてが新鮮だった。

 利き足のインサイドキックさえまともに蹴れなかったが、このころはまだ、「これからテレビで見ていた選手へと少しずつ近づいていくんだ」という高揚感と楽しさしか感じていなかった。

試合

 入団の1週間後、ちょうど練習試合が組まれていた。たかが数日しかボールを蹴っていない私も出場が許され、自分のボールとシューズ、お弁当をもって初めて試合に出場した。

 3年生はまだいわゆる「団子サッカー」で、キーパー以外の7人はひたすらボールを追いかけるサッカーだった。このサッカーでは体格にいい人や我の強い人のみボールを持つことができる。

 どこにどう動いていいかわからない素人は、ボールが行った後を懸命に追いかけることしかできなかった。もっとも、気の弱い遠慮がちな私はすぐに弾き出され、結局その「団子」に参加しようとはしなかった。

 その代わり、空いているスペースに走っては、ただひたすらボールが来るのを待っていた。ボールを持つ姿は褒められなかったが、空いているスペースを探すことは自然とでき、皮肉にもボールを蹴っていないところは褒めてもらえた。このころは自然と周囲のことを見て動く力がついていたのかもしれない。

 結局私のもとへボールが来ることは数回のみで、ただ走って待つだけの時間だった。でも、この時間も楽しかった。たった1回だけボールにさわったりチームのために走るだけだったが、小さなサッカー選手としてグランドにいるという実感がわいた。

終了後

 試合終了後、コーチを囲むようにして話を聞いていた。開口一番、コーチが一番背の高い子に「試合楽しかったか?」と聞いた。

 彼は「楽しかった」と答えた。そして、残る私たちも同じように答えた。

 次の瞬間、キーパーグローブではじめに答えた背の高い子の頭を軽くたたいた。その後、「どんな試合も勝たないと楽しくない!」と静かに、しかしとげのある乱暴な口調で言った。

 一番初めに叩かれた彼は半泣き状態で、それでも涙をこらえながらじっとコーチの方を見続けた。

 残りのメンバーも、皆同じようにたたかれた。私と始めたての2人もたたかれた(その後、「まあ、まだ始めたばっかだけど…」と言いながら、キーパーグローブで申し訳程度に頭を撫でられた)。

 「体罰」「ハラスメント」などの言葉を知らない純粋な3年生にとって、この先一生忘れることのない、衝撃的な時間だった。

 それでも、何もわからない小学生たちは、ただ純粋に、「そうだ、勝たないといけない!」と思い、次の試合は懸命に走って戦ったであった。

 このころからなんとなく、このクラブへの違和感を感じ始めていたのかもしれない。

おわりに

 こうして私のサッカー人生が始まった。以降、

自分もこんなプレーができるようになりたい」
「こんな大きな声援を送ってもらえるかっこいいサッカー選手になりたい」

という思いは変わらず、常にこの気持ちを持ち続けながらサッカーの練習に励んだ。

 それとともに、小学校時代の私には常に「勝たないと何かされる(叩かれる)」と思いながらボールを蹴り続けていたことも事実だ。

 以降、数回に分けて自分のサッカー人生をまとめていく。


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