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パリ大学修士全落ち体験記

私のパリでの大学生活は、コロナ禍の影響がまだ強く残る2021年9月にL3(Licence 3ème année:フランスの大学学部最終学年にあたる3年生)に編入するところから始まった。ただ、実を言うと最初から編入を目指していたわけでもなんでもなく、マスターに全落ちしてL3への編入しか選択できなかったからで、一時はすごく落ち込んだという背景がある…。

今回はそんな失敗例ではあるけれど私の体験を紹介したい。


まず、個人的な経歴を少し説明しておくと、私はすでに日本の大学で学士(文学部社会学専攻)を取得していて、教育・IT系分野での職務経験がある。マスターを取得したいと思った一番の理由がキャリアの方向転換だったので、出願の際はマネジメント系のプログラムを中心に、既にフランスに住んでいる状態で各大学のeCandidatから出願した(2023年現在、修士1年目への出願はMon Masterというプラットフォームにまとめられていて、私が出願した当時とは出願方法が少し異なっている)。

出願したのはParis Dauphine、Paris 1、Paris Citéのマスターだったが、第一志望は Paris Dauphineだったのと、ちょっと選考プロセスが特殊だったのでここでは Paris Dauphineへの出願〜選考過程を中心に取り上げる。

Université Paris Dauphineとは

Paris DauphineはJacques Attaliの出身校でもある国立の大学だが、大学再編で経済系のグランゼコールとしても認定されていて二面性を持つ高等教育機関になっている。実際、募集要項だったかeCandidatだったかにパリのプレパ御三家(Henri-IVLouis-le-Grand、Saint-Louis)出身学生は云々なんて記載もあって、プレパ生枠それも名門校出身者用の枠が存在するなんて「完全にエリート主義のグランゼコールじゃん!」と少し驚いたりもした(私が一方的に"普通の国立大学"と認識していたただけで、間違いなくグランゼコールなのだが…)。

補足しておくと、なぜか日本ではフランスのグランゼコール(名門でエリートな学校)>大学(誰でも入れる学校)みたいなイメージがあるが、一概にグランゼコールと言ってもピンからキリまででレベルは様々だ。そして、Paris Dauphineは経済系の大学で、経済分野は元々人気が高い分野ということもあり入学希望者が多く選抜が厳しいのは確かだが、特にパリ大のようにフランス国内から人が集まる大学や人気の専攻は誰もが希望通りに入学できるわけではないし、門戸が広いからと言ってレベルが低いわけではないので念の為。

フランスはécole de commerce、université、gandes écolesで入学方法の違い等も含めて土俵が少し分かれていることもあり、Paris Dauphineはビジネススクールのランキングなんかにはあまり載っておらず日本では知名度が低いかもしれないが、フランス国内ではHECやSciences Poと比べられることもある良い大学である。

出願プロセス

同じ大学でも専攻が違えば選考プロセスも異なるが、Paris Dauphineで私が第一希望として出願したマスターは

  1. 書類選考

  2. 面接

の2段階の選抜があった。
ちなみに別の大学のマスターでは、この2段階目に面接か筆記テストがある場合有りとなっていたこともあったし、書類選考がほぼなく1段階目がSPIみたいなテストでそれに受かれば面接という選考ステップのマスターもあった。

書類選考

こだわりすぎたり考えすぎるのも良くないとは思うけど、それでもやっぱり志望理由書はとても大切。特に、英語のレベルもパッとせず、DELF/DALFもギリギリの成績で、学生時代は飲酒と部活とバイトに励んだため大学の成績が爆死してる私のような留学生にとっては…同じような状況の学生諸兄姉はもう志望理由書くらいしか改善できるところがないので、志望理由書は頑張って書きましょう…!

B2くらいのレベルになると語学学校で進学・就職用の志望理由書の書き方講座みたいな時間があると思うけど、そこでは一般的な"型"を習うだけで、実際に説得力のある良い志望理由書にするためはどう書けば良いのかみたいなことは教えてくれない。私はMBA卒の中国人の友人のもの(プロによる添削済み)を参考にさせてもらい、入学を希望する理由から自分の職歴や学部時代の専攻、それらを選択をした理由などのストーリーが一貫するように書き、いろんな人の意見を聞きながら何度も推敲を重ねて作成した。

あとは大学の成績などの必須の書類の他、出身大学の教授&前職の上司の推薦状2本を添付して(推薦状の添付は必須ではなかったはずだが一本目は絶対大学教員からと指定されていた)、締め切り3日くらい前に出願した。5分くらいの動画も添付できたけど、何をどうしたらいいか全く分からず下手な動画を添付するくらいなら何もしない方が良いだろうと思って付けなかった。プレゼンや動画作成編集が得意な人はぜひ挑戦して欲しい!

他のマスターには、志望理由書を手書き指定しているところや、10枚くらいのレポートをオプションでつけられるところもあり(私はつけずに出願した)、志望先によって添付書類が異なることがあるので当たり前だが事前にしっかり確認しておくことをオススメする。

面接対策

一次選考突破の連絡が来るとともに、面接の日程の連絡が来る。一次選考合格のお知らせから面接までその間約一週間くらいなのと、第一志望と言いながらまさか書類選考に受かると思っていなかったので大急ぎで面接の準備を始める。

公表されていないので実際書類選考の段階でどれくらい落とされているかとかマスター毎の倍率は不明だが、Le Figaroの大学情報によるとParis Dauphineの学部1年目には募集人数700人のところに6000人が応募している(倍率8.6倍)。自分が全受験生の中でどれくらいの位置にいるか不明だからなんとも言えないけど、まあ現実的に考えて特に優秀でもなんでもない私が受かるのは無理じゃない…?

Chaque année, ce sont 6 000 candidats qui postulent pour intégrer la première année de l’un des cursus de l’école, pour seulement 700 places disponibles. 

Le Figaro étudiant

とは言え、学部でParis Dauphineを受験する層は第一志望がプレパや難関ビジネススクール、Sciences Poな学生もいると思うので合格者も多めに出しているはずだが、マスターはマスターで留学生や他の大学からも受験しに来る学生も多そうなので、倍率は低くなく書類選考の段階で落とされる可能性も高いと予想していたし、実際この時点で落ちたと報告している受験生も少なからずいた。

面接対策は、FBやインスタグラムを使いながら情報収集した。FBは時代遅れなツールというイメージがあるが、大きな大学だと在校生用のグループが存在する場合が多い。私もFBのParis Dauphineの在校生のグループに入れてもらい他の受験生と情報交換したり、インスタグラムでマスターのアカウントにDMし在籍中の学生を紹介してもらいコンタクトを取って、前年度の質問内容や面接の様子を聞き、質問を想定し回答を考えて準備した。また、実際に本番を想定して光の加減や服装、写り方も含めて確認しながら語学学校の先生とオンラインで面接の練習をした。

面接本番と不合格


面接は10〜15分で、Teamsを使って学年責任者の先生と一対一で行われた。

質問内容は事前に聞いていた通り志望理由や職務経歴に関するベーシックなものから、なぜそもそも日本を出たいと思ったのか等少し突っ込んだ質問で、ほとんど準備していた内容で答えることができたものの、今よりもっとずっと経験不足だったため相当付け焼き刃な印象を与えたと思う…

そして、この後お祈りメールが届き、結局私は合格することができなかったわけだが、専攻やその年の状況にも左右されると思うのでこれは完全に一個人の体験だけど、私が情報交換していた受験生の中ではParis Dauphineの学部に在籍中の学生しか合格しておらず、私を含め外部の大学からの受験生は皆落ちていた。内部進学生が優先されるのは分かるが、そうなると当然残りの席は少なくなるので外部からの受験生にとっては選考がよりハードモードになるという印象を持ったし、後日知人のフランス人からも同じような印象のコメントももらったのでやっぱり難しいんだなと思った。

修士全落ちからの合格通知


正直この時点でほぼ燃え尽きていたが、この後Paris Dauphineの第2希望で出願していた別のマスターの不合格通知が届き、続いてParis 1やParis Citéのマスターからも不合格通知が届いてめちゃくちゃ落ち込んだ。

Paris Dauphine受験生仲間も同じようなプログラムのマスターに出願していたので出願先は大体被っていたが、皆軒並みParis 1にも落ちていて第二第三の悲報に慰めあった。でも、彼らは自分の大学のマスターには受かっていたので秋からの進学先が保証されていて、どこにも所属してない野良留学生の私は行くところがなかった。秋からどうしよう…と絶望していたところに保険のつもりで出願していた今所属している大学のL3から合格通知が届き、志望順位は最下位だったもののどうにか大学生になれることが決まったのだった…

※   ※   ※

今当時を振り返ってみても、そもそも楽観的に構えすぎていて知っておくべきだった情報が圧倒的に欠けていたなと思うことが多々あり、そのせいで出願先を戦略的に選べていなかったから全落ちしたのではと自省する時がある。

次回は全落ちから学んだそんな気づきについて書きます…!


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