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フランスの大学院全落ちを振り返って

2021年に出願した全てのフランスの大学院に落ちた私。

今回は、その原因を考察してみる。


フランスの大学院受験も情報戦


パリの大学院に全落ちした私だが、そもそも大学院入試に関する情報が圧倒的に欠けていたことが一番の原因では、と改めて思う。

私は社会人を経てB1レベルで渡仏し語学学校に通っていたのだが、大学在学中なら自然に耳に入ってきたであろう最近留学した先輩や先生からの最新の情報がなかったこと、そもそもコロナ禍で渡仏する留学生が少なかったこと、渡仏当初は仏語レベルも低く出願まではDELF取得の忙しく、猪突猛進のままに大学院入試に挑んでしまい、リサーチして現状を見つめ改めて出願先をゆっくり考えてみるという一番大切な過程をすっ飛ばしていた。何より、当時はどこかには受かるだろうと楽観視していた気持ちがあったことも大きい。

不合格通知には不合格理由が書いてあるけれど、あなたを受け入れるための十分な空きないとかばかりで、具体的な不合格理由はわからない。なので、これは全て憶測なのだが今改めて当時を振り返ってみると、

私の主な敗因は

  • 日本での学歴やキャリア等の経歴の専門性の無さ

  • マスターの定員オーバー問題

が大きかったと思う。

大学院の選考基準

まず、こちらは法学系なのでより厳しそうだが、この記事によるとマスターの選考基準は

  1. 成績

  2. キャリアパスの一貫性

  3. 職業(アルバイトやインターンシップ)の経験

  4. 海外での経験

  5. ボランティアの経験

  6. 内部進学生かどうか

の6点となっている。

私のような社会人を経た留学生の場合は、就労経験、海外での経験、ボランティアなど学生時代に取り組んだ活動はあまり関係がないと思うので選考基準が少し異なるか、このような基準の中でも重視される点が異なると思うが、学部時代の取得科目やその成績は見られると思うし、何よりフランスでは「一貫性」が非常に重視されているように思う。

フランスの専門性認定の厳しさ


そもそも偏差値主義&新卒採用システムの日本とは異なり、フランスは大学で学んだこと→就職後の仕事内容までが一貫している傾向があり、日本のように文学部を卒業してIT系企業でSEとして採用されるなんてことはほぼほぼない。特に私が目指していた分野のマネジメント系のマスターは、学部時点で経済や経営を専攻していることを入学の条件に課している大学も少なくなく、門戸が広いプログラムはあるが限られる。

大学から就職まででやったこととやりたいことが細かく枝分かれしている状態のフランスでは、私のような文学部卒→マネジメント専攻希望(学んだ分野と志望の分野が異なる)、かつキャリアチェンジを目指している(=志望分野の職務経験もない)、かつもう若くもない私のような留学生(少数だが年齢制限があるマスターもある)は必然的に、一貫性がない=専門性もないと捉えられ出願先が限られてしまう。このフランスの専門性認定の厳しさの下では、MBAなどのプログラムならいざ知らず、大学院でマスターを取ってキャリアチェンジという私のプランはそもそも最初から詰んでいたことに出願直前にやっと気づいたのだった…

とはいえ、パリに暮らす外国人の友人達の中には、私のように出身国で学んだ内容やキャリアと全く関係ないフランスの大学院の専攻を選んで出願して合格し無事に卒業した子もいるし、私のように同じ専攻の学士卒であっても履修科目や経験が足りないと判断されて修士入学が認められずL3に編入した例も聞いたことがあったし、4年制の学部を卒業してそのまま同じ専攻のM2に出願して編入した友人もいた。これは経歴、出願先、タイミングでいくらでも結果が変わりそうなので、結局何をどうするのが「正解」なのかは分からない…

私が出願先に落ちたのは純粋に能力不足だと思うが、マネジメント系に固執して出願してしまっていたので、日本の大学での専攻だった社会科学系寄りのマスターや自分の経歴が使えそうなコミュニケーションや人事系のマスターにも幅広く出願するか、もしくはビジネススクール受験も検討していたら全落ちは避けられたかもしれないと今も少し心残りがある。

日本の大学のシステムとフランスの大学のシステムは異なるし、限られた情報から自分の希望と合格の可能性を見極めていくのはかなり難しいと思うので、私のように自分の経歴に一貫性がなく出願先が未経験の分野の専攻を選ぶ場合は、なるべく早めに責任者の先生や在学中の学生にコンタクトを取って、どういうバックグラウンドを持っている学生を想定しているかや学生の他の出願先などを教えてもらえればより最適な出願先を選ぶ参考にできるかもしれない。

昨今の大学院定員オーバー問題


また、フランスで近年問題になっているのが、大学院の定員が足りていないという問題だ。

Ministère de l'Enseignement supérieur (高等教育・研究・イノベーション省)の発表によると、2021年にフランスの学士号を取得した学生のうち2人に1人以上が翌年修士課程に入学している(58%)。対して、日本では、2022年の学校基本調査によると大学の学部から大学院への進学率は12.4%。フランスの学生は文系理系関係なく、日本の学生よりも圧倒的にマスターに進学するのが今やスタンダードになっている。

さらに、バカロレアを取得して高等教育課程に進学する学生が増えているのでにマスターの定員は増えておらず、法学や心理学など特定の分野や人気のマスターによっては20名定員のマスターに1900名が出願したりという状況もあるらしくフランス人学生でさえも希望のマスターに進学することはなかなか厳しい状況にある。

この記事が詳しい。


2023年度からM1への出願はMon masterというプラットフォームを通すことになっているが、下記の記事によると7月末の時点で全体で146 000人の進学希望者のうち27 000人が進学先がない状態らしい。とはいえ、これはプラットフォームに登録した全体の数字で人気の専攻や都市部の大学はやはり人が集まると思うので、今年度も合格率5%以下みたいなことになっているマスターはたくさんあると思われる。


私は自分自身の経歴や成績に強みがあるわけではなかったのに全国的にも倍率高めなパリ大数校しか出願しなかったので、今考えても相当リスキーだったなと思う…

大学によっても選考基準や求める学生像がかなり異なるので、これから出願する方は都市部だけでなくその周辺にある大学にも出願し(特にパリ周辺なら絶対)、かつ可能な限り多くの大学に出願することをオススメします…!

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