がんの大きさ
時々、患者さんに、今治療している病気のサイズを聞かれる。
パソコン画面で簡単に計測できるけど、
がんって丸くないし、サイズのmmの誤差はしょっちゅうある。
皆さんはあまり知ってないと思うけど、
CTで写ってる画像、あれは、その断面の1枚を見ているのではなく、
難しい話ですが、5mm厚のデータです。
5mmの平面の中にあるデータをまとめたものです。
だから、本当の意味では真の断面ではありません。
特に、腫瘍が小さいと、たとえば1cmの肺転移。
この1cmのうちで、ど真ん中の5mmのデータを画像にすれば一番公平かもしれませんが、たまたま、1cmのうちでその5mmの厚さに入ってるデータが
3mm分しかなければ、本来よりも小さく見えます。
ね、難しいでしょ。
だから、mmの変化で大きくなった、小さくなったというのはナンセンスなんですよ。
そして、がんは、基本、成長しない、もしくは成長がゆっくりになることも
癌治療の効果です。
今まで爆走し、どんどん大きくなったのが、急に月単位、年単位にまで
ゆっくりと増大するようになったら、その薬は抑えている
効いていることになります。
僕らは、臨床試験等で、腫瘍のサイズがその治験薬でサイズが変化する時
主にRECISTという評価基準を用います。
簡単に言えば、CRが完全にがんが消えた
PRはよくなった、PDが悪くなった
ではSDは? これが横ばいなんです。
でも、実際全く変化がないわけではなく
腫瘍が20%以下の増大なら、PDじゃなくてSDなんです。
言葉にしたら、大きくなってるわけで、単に増大、と書きますが、
実際に癌治療は、少しの増大を許容したりします。
それは、がんのサイズが全てではないから。
がんの場所、数、全身状態、全てを考慮して
最終的に求められるのが、生きる長さの延長なわけです。
僕も放射線科を若い時に専攻していて
がんセンターも放射線科でIVRや病棟管理しながら、読影もしてました。
その時に、治療に意味のない画像所見の書き方をしないことを覚えました。
例えば、がんは10個あっても、大きくなるもの、小さくなるものが混じります。
それをちゃんとRECIST基準に当てはめて記載してます。
こういうことを知らない、臨床を知らない医師は
1mm大きくなったら、それを増大、と一言書きます。
小さくなったものがあっても無視したりします。
1mmの増大には上記のように、実は単に撮影の仕方によるアーチファクトだったり、臨床的には意味がないことが多いです。
SDなら、SDが10年続けば、それはがん治療として完全に勝ちです。
だから、僕は、そういう放射線科の読影レポートを患者さんに渡しません。
臨床を理解しないと、患者さんはその言葉に傷つき、
不要な心配をします。
僕の患者さんたちは、僕の言葉を信じてくれます。
ここが少し大きくなったけど、こことここは小さくなった。
総じて言えば、治療は成功していると思います。
全部が小さくならなくてもいいんです。
肝心なのは、長く生き残るために、
必要な臓器、無用な病気の区別をちゃんとして
サイズの変化が生命にどれだけ影響するか、
臨床を理解して、読影してほしいですね。
うちには、いろんな病院から紹介が来るので、
そこの放射線科の読影レポートをみると
ああ、ここの病院はしっかりしてるな、とか
こりゃあだめだ、臨床に全く則してないなど
心のなかでいろいろ悪態ついてます(笑)
みなさんも、増大、の一言だけで一喜一憂しないでください
意味のない、増大、の言葉に反応することなく
信じるべきは、主治医の総合的な判断ですよ
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