抗癌剤で身体が楽になる

今週火曜日は、原発は様々でしたが
肝転移の患者さん3人の治療をさせて頂きました。

いずれも10回以上、最大21回カテをしているベテランの患者さん達です。

今年に入り、うちに研修に来られている外科の先生もだいぶ
うちのカテ室の雰囲気にも慣れ、
さらにお若いのに本当に仕事が出来る。
理解も早く、腕もいい。
カテを挿入する部位の麻酔や最初のカテ挿入なんか
25年カテをしている僕より迷いなく素早く実施してる。
流石、外科医は違いますね。

安心して、手技の半分ほどをお願いしました。
やる気のある若手をみていると、こちらも嬉しいです。

さて、一般的に抗がん剤を皆さんが嫌う理由の第一の理由はなんですか?

副作用、ですよね。

当科では、塞栓術もウリですが、やはり抗がん剤の動注にこだわっています。つまり、抗癌剤を使った治療をしているわけです。

全身抗がん剤治療に準じた制吐剤やステロイドを事前に用いて、
アレルギー対策などもしていますが、

カテで使用した抗がん剤のせいで食欲が落ちたり
倦怠感で寝込んだり
ひどい末梢神経症状(手足のしびれ)や脱毛に悩む患者さんは
ほぼ、いません。

確かに、臓器単位の化学療法となるので、
そして高濃度で臓器を抗がん剤に暴露させますので
抗癌剤の必要量は全身投与よりも減ります。
それでも、そんなに手加減した量でもありません。

例えば、大腸癌や胃癌などで使う代表的な薬のひとつに
エルプラットがあります。
全身で1回あたり投与する量は
一般的に100mg/m2/2hとなります
これをわかりやすく言えば、m2は体表面積あたり、という意味で
まあ、大体1.5倍くらいに考えればいいです。
一般的な成人に対して
エルプラットの100㎎の1.5倍、つまり150mgを2時間で投与する
という意味です。
これを2週間隔で投与するのがFOLFOXという代表的な抗癌剤の使い方です。

当科では、過去の実績や経験から
一般的に大腸癌肝転移や胃癌肝転移、その他一部のエルプラットを使える癌腫に対して、積極的にエルプラットを倫理委員会の承認のもと
動注していますが、

その時のエルプラットの量は
100mg/body/20~30m
としています。
これを言葉にしますと、一般的な肝転移の患者さんなら
一人当たり1回、100mgを20~30分、で投与しています。
これを、3週間隔、
切迫している症例では、全身のFOLFOX同様2週間隔で投与しています。

この量って、全身投与よりは少ないですが、うちの初診外来で
「抗がん剤の副作用が怖いので少なくて効果のでるカテーテルをしたい」
ってくる患者さんにとっては、予想以上に多いイメージみたいです。

抗癌剤による副作用は、人それぞれ違います。
吐き気などで全然受け付けない人もいますが
概ね最初は大丈夫で、徐々に蓄積毒性といいますが
繰り返すうちに副作用が強くなる。
だから、FOLFOXならひとまず6コースで休止します。

さて、この副作用なんですが、
今週カテをした患者さんたちのところに先程回診してきました。

誰一人、吐き気、倦怠感、痺れの増強などを訴えていません。

そして、全員、笑顔です。

肝臓に動注された抗がん剤は、最高濃度でがんを暴露します。
これをファストパス効果と言ってますが
この最初に腫瘍内の抗がん剤濃度を出来るだけ高くすることが大切で
このために、カテの位置、注入速度や時間を調整します。

そして、がんを暴露した後の抗がん剤はどうなるか?
これはがんに溜まりません。
そう思ってる人がいることが多いのですが、
抗癌剤も液体、溜まったらがんが爆発してしまいます。
通常の血液同様、がんの静脈から全身に流出していきます。
その後は、通常の全身抗がん剤と同様、
「量の少ない全身抗がん剤治療」のように全身を周り、腎臓や肝臓から排泄されていきます。
この、全身に回る部分は、血液で普通に希釈されるので、
カテをすれば全身効果をもですか?というと
僕はそこにはつよい期待はしていません。効くことはあります。
ありますが、使ってる量が通常の全身治療より少ないことや
そもそも局所治療の目的を逸脱しますので、
あくまで、ラッキーとして小さくなればいいですねといってます。

話がそれましたが、不思議なことに
これだけ動注しても、抗癌剤自体の副作用を訴える人はほとんどいません。

さて、なぜ、今週カテをした患者さんが
抗癌剤を使ったのに、むしろ治療前より体調がよくなったのか?
これは続きのノートに記載します。



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