治療成功期間、って概念がある。
ようは、治療を継続できた時間。

治療は、効かなくなったり、副作用で続けられなくなったら
当然中止になる。そして、まだ次の治療が残っていれば移行する。

その際に、絶対に覚えていて欲しいことは
治療を変えることは、次が効く保証はなにもないってこと。
むしろ、今やってる治療よりも効かないことも多々ある。

治療期間が2か月だったら、ほとんどその治療に意味はなかったかもしれない。なぜなら、無治療でも2か月くらいはがんのサイズの変化は画像ではわからない。1mm、2mmの変化がわからないからだ。
だから、はっきりと、具体的には5mm程度増大したら
画像では悪化ととらえますが
それががんを抑えていた期間なのか、そもそも治療しなくても同じだったのか、微妙なラインですね。
がんの自然経過、僕らはナチュラルコースといいますが
これよりも上回り、さらに治療の副作用が許容できなければ
治療の意味がありません。

生存期間は、治療成功期間の足し算です。
一つ一つの治療をしっかりとやりきりましょう。
中途半端に中止したら、その治療が本当は
がんの増大を多少なりとも抑えていたとしても
通常は中止されたおなじ治療を今後再度実施することはありません。

例外的に、例えばうちでは大腸癌に対して、エルプラットの休止期間が長かったりしたら、再チャレンジといって、もう一度同じ治療(FOLFOX)などをしますけど、これはエルプラットがもともと有望な薬で、でも神経毒性で長期間継続しにくくて、でもきっと再チャレンジを考えるころには他の薬がないから、です。


ちなみに、今回の新記録、
僕が、同一の患者さんの同一の病巣に対して実施した過去のカテ回数
最高20回、か、21回でした。
その記録は、原発性肝癌だったので、今皆さん(再発がん、転移がん)とは違って、これは時限爆弾のように肝臓の中のがんの芽が再発を繰り返します。ベースに肝炎があるからです。だから、出たらカテ、出たらカテ、という感じでした。
再発転移は違います。血行性に飛んできてそこに居座った、もっと質の悪い病態です。
原発性と違って増大速度も速く、数も多く、複数臓器に病巣があることがほとんどです。

そんな中で、局所治療であるカテを導入し、肝転移の方ですけど、
他にも肺やリンパ節にも小さな転移がありますけど、
さらに、僕のところに初めてきた1年以上前の外来では
車いすで移動するのがやっとくらいの難しい状態でしたが、

まだまだ続きます

途中コロナで中断したり

外国に遊びに行ったり(笑)

治療をずーっとやってるわけではないのですけど、

そして、何度か薬が効かなくなってそのたびに頭を悩ませましたが、
持っている武器は少なかれど
技術、薬の使い方、治療のタイミング、
これらの工夫で今でも本当にお元気で治療を続けておられます。

患者さんが書いていいとおっしゃってくれたので書きますが、

次回で肝転移に対して22回目の肝動注、塞栓術を行います。

僕にとっても未知の領域です。そして、何度か効かなくなったのに
またまた奇跡的に治療が効きました。

僕が出来ることは、自分が持てる最高の技術で、
自分の経験で決めた血管から
当院で決められているいつもの抗がん剤と、時に塞栓材料を
自分の経験で決めた治療間隔で
注入してくる。
「どうかまた効いてくれ~」と祈りながら。

最近、若く優秀な先生が勉強にカテに来てくれていますが、
カテはさせてあげても、実際の薬を入れる部分は自分でしています。
本来は、薬を注入することのほうが単純でこれを若い先生にしてもらうことのほうが他の施設は多いと思いますが

僕は、とにかく患者さんをよくしたい。主治医として。
その責任と希望があるから
武器である抗がん剤は、僕が祈りを込めて注入しています。

ああ、注入中は、20分位かかるので、患者さんがスタッフとみんなで雑談しています(笑)。

治療に前向き過ぎる方(絶対に完治してやる)
治療に後ろ向きの方(ど~せ何をやっても無駄)
このふたつのご性格の患者さんよりも

その中間、まあ、なるようになるさ
だから、先生、頑張って治療してくださいね
そして、いつもがんのこと、治療のことを考えるのではなく
食べ物や旅行のこと、とにかく楽しいことを普段考える
そんな方の方が、圧倒的に長生きされているように感じています。

少なくとも、僕のところに受診したり治療に来られる患者さんは
長いお付き合いとなる方はこういう方が多い気がします。

さて、21回分のカテが、その方のいのちを21回分延ばしています。
まだまだいけそうだよね、と僕も患者さんも楽しく話しています。

22回目のカテも、しっかりと希望を込めて、抗がん剤をがんに向けて注入してこようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?