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もし小説を作るなら、著者よりも翻訳者になってみたい

先日、本のトークイベントを聴きに行きました。

台湾作家・甘輝明さんの最新著書『真の人間になる』が日本語訳され、日本でも刊行されました。

1945年9月、日本人も犠牲となった「三叉山事件」をモチーフに、ブヌン族の少年ハルムトの成長を描いた感動の大作。17年かけて執筆し、台湾・中華圏の文学賞を制覇した注目作、ついに日本上陸!

上巻では、終戦前後の混乱した状況下で「三叉山事件」が起こるまでが描かれる。
台湾原住民族のブヌン族の少年・ハルムトとハイヌナンは、子供のころから野球が好きで、アミ族のコーチ、サウマが率いる野球チームに入る。1941年春、霧鹿部落を離れ、花蓮港中学に進学した二人は甲子園出場を目指して練習に励む日々を送る。だが真珠湾攻撃が起こり、野球どころではなくなってしまう。
ハルムトは、日本人が営む料理屋で働きながら学校に行くことになり、学校や仕事場で日本人、漢人、他の原住民族の学生たちと接する中で、ブヌン族としての自覚を強くし、ハイヌナンに友情以上の思いを抱くようになる……。

HPより

戦後に台湾で起きてしまった三叉山事件。他国からも多く被害者が出たにも関わらず、日本どころか、台湾でもあまり大きな話題にならなかったとのこと。

甘先生が執筆するにあたり、念入りで丁寧なフィールドワークを行った話も聞いた。なんと、日本の古本屋にまで訪れたのだ。

甘先生の作品に対する気持ちはもちろん、私は翻訳を担当していた白水紀子先生にも注目していた。

こんなに複雑でセンシティブな外国語の作品の翻訳を担当するのは、側から見たら大きなプレッシャーかもしれない。
しかし、白水先生は作品や翻訳に対する思いを熱く語る様子を見て(当日は司会進行として参加していた)、かっこいいと素直に思った。

もし、私が小説を作るなら、おそらく小説家は向いていない。今まで色んな本を読んだせいか、オリジナルを作る自信ない。
もしなるなら、翻訳家になってみたい。外国語のスキルだけでなく、その物語の舞台である国の背景や世情の知識、個人レベルのアイデンティティを考慮する必要がある。辛抱が必要な職業かもしれない。それでも、魅力的に感じるのは小説家と同じくらい作品に向き合い、調査し、作者の意図を汲み取った上で、それが伝わるように訳する。このプロセスに惹かれたのだ。

翻訳家にはなれないかもしれないけど、物語の背景を知ろうとする姿勢と、言語を越えて人に伝える方法を模索してみたい。

イベントの最後には甘先生からサインをいただきました!ありがとうございました!

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