1986年夏。運転席に天海広（あまみ・ひろし）、助手席に大地ヒカリ（だいち・ひかり）。二人はこれから大学の音楽サークルの夏合宿に参加するところである。

天海「えーっと。ここら辺だと思うんだが」
ヒカリ「あそこじゃないですか？スタジオ・ホテル・キャメロットって看板が出てますよ」
天海「あれか。ふーむ、新築でいい感じ」
ヒカリ「もうみんなは着いてるかしら」
天海「バスはとろいからな。抜かしたかもしれないな」

車を止めて、後部座席から楽器を降ろす。天海は右肩にベースを掛け、左手でヒカリのシンセを担ごうとする。

ヒカリ「天海先輩、私、自分で持ちますよ」
天海「まぁ、まぁ。君は大事なMTRを持ってくれたまえ」
ヒカリ「はい。ではお言葉に甘えまして」
天海「えーっと。入り口はどう見ても此処だな。ちわーっす。」

ロビーではヒカリの同期である1年男子が煙草を吸っている。

男子A「あ、天海さん、おはようございます」
天海「よお。そっちの方が早かったか」
男子B「タッチの差っすよ。ちょっと前に着きました。」
天海「みんなは？」
男子C「それぞれの部屋で休んでます。天海さんは2階の3号室だったかな」
天海「ふぅん。で、女子の部屋は？」
男子A「6号室から8号室が女子だと思いますけど…」
天海「まずはそっちだ。ほれ、行くぞ」
ヒカリ「はい」

二人を見送る男子ABC。

男子B「あの二人、そうなの？」
男子C「まじ？いつの間に」
男子A「俺、ちょっとショック」
男子C「お前、ヒカリちゃん狙いだったの？」
男子A「いや、どっちかっていうと天海さん…」

男子BC、後ずさる。

場面変わって6号室の前。

天海「此処か。（ノックとほぼ同時にドアを開け）失礼しまーす」

中からいきなり大ブーイング。

女子A「キャー、ここは女子部屋よ。いきなり入ってこないで、天海君」
天海「わりぃ。楽器が重たかったから、つい。」
女子B「楽器は自分の部屋に置くに決まってるでしょ」
天海「だからぁ、俺の楽器じゃなくてヒカリちゃんの楽器」

シーンとなる。

天海「あ、ここは2年女子の部屋か。失敬。ほれ、退散するぞ」
ヒカリ「はい」

二人を見送る女子ABC。

女子A「何、あれ」
女子C「どういうこと？」
女子B「きっと、そういうことよ。ユリ、大丈夫？」

二段ベッドの上でユリが壁際に寝返りを打つ。

場面変わって8号室。天海がヒカリのベッドの上にシンセを置く。

ヒカリ「ありがとうございました」
天海「どういたしまして。じゃ、MTRは預かるぞ」
ヒカリ「どうぞどうぞ。かわいがってやって下さい」

天海は軽く中指を立てて嬉しそうに出ていく。ナッチとアキとヤヤが寄ってくる。

ナッチ「ヒカリちゃん、集合場所に来ないから心配したよ」
アキ「天海先輩の車で来たんだ。わー、どうして、どうして？」
ヒカリ「天海先輩は、私じゃなくて、MTRを迎えに来たの。」
ナッチ「MTRって何？」
ヒカリ「6トラックとカセットデッキが一緒になってるミキサー。って言ってもかわんないか。とにかく多重録音をするのに便利な機材なの。私がそれを持っているのを知って、天海先輩が合宿に持ってこいって。でもシンセも持っていきたいから両方は無理ですって言ったら、迎えに行くぜ、みたいな話になって」
ヤヤ「ヒュー、ヒュー、なんかイイ感じ。天海先輩かっこいいからうらやましいな。でも、そのことで2年の女子がざわついていたよ」
ヒカリ「まじ？2年の先輩にはさっきも失礼なことしちゃったし、ちょっと挨拶行ってくるわ」
ヤヤ「一人で大丈夫？」
ヒカリ「大丈夫、大丈夫。ありがと」

6号室をノックするヒカリ。部屋には入らずに廊下から挨拶をする。

ヒカリ「1年の大地ヒカリです。遅れて到着したことと、先程失礼があったことをお詫びします。これから5日間、よろしくお願いします」

女子AとBは無反応。少し間を置いてCが口を開く。

女子C「入んなよ。」
ヒカリ「は、はい」
女子C「ユリ、来たよ」

ヒカリは二段ベッドの上にも人がいると知り驚いて見上げる。

女子A、B「ユーリー」

ユリは上半身だけを起こし、近視の目を細め、ヒカリの頭から足先までを嘗め回すように観察する。無言のまま30秒。

ヒカリ「あ、あの、よろしくお願いします」
ユリ「天海さんと来たんでしょ」
ヒカリ「は、はい」
ユリ「どうだった？」
ヒカリ「どうって…。安全運転でした」
ユリ「ふっ」

ユリはまたバタンとベッドに倒れこんだ。

女子C「もういいよ、行きな」
ヒカリ「は、はい」

（続きはコチラ：https://note.mu/candycandy/n/n7477f406fcb5）

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シナリオなんて書いたことないのですが、突然書きたい衝動にかられて書き始めました。だいだい、あんまりドラマとか見ないし、noteで受けるかどうかもわからないのですが、とりあえずアップしてみます。もしも★が３０付いたら続きを書くかもしれません。

（写真は昨夏撮影したものです。）