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直ちに『感電』⚡️したい件 その2

『海の幽霊』輪廻転生

 『海の幽霊』の発売前の時期に不安だったことがある。

 米津さんが28歳になったばかりの頃だ。

 「27クラブ」ー27歳で死亡したミュージシャン、アーティストたちが多いーという言葉は知らなかったけれど、米津さんがブログ『picnic』のなかで

「太古の昔のロックンローラーには自らの寿命を27歳に設定せねばならないというドグマがあって」と書いていた。重ねて、平成が終わる時期だった。

 不思議だけれど、元号が変わる頃、まるで殉死をするようにその元号を象徴する人が天に召される。明治は乃木稀典、大正は芥川龍之介、昭和だったら、美空ひばり、手塚治というように。

 その時28歳になったばかりの米津さんも死の世界へ旅立ってしまうのではないか、そうでないにしろ、表舞台からスッと姿を消してしまうのではないか。

 そんな漠然とした不安を抱いていた時、身代わりのようにWOWAKAさんの訃報が届いた。その後、発表された『海の幽霊』は、もちろんWOWAKAさんが亡くなる前に作られた曲だが、米津さんも「ほんとに彼に向けた曲にしか思えなくなってきて」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年7月号)で語っている。元々、10代の頃、多大な影響を受けた五十嵐大介著『海獣の子供』の映画主題歌、それも自分から提供を申し出たという、米津さんにとっては、集大成のような曲でもあった。

 そして、ここで描かれているのは、『Lemon』、『TEENAGE RIOT』、『Flamingo』で描かれた「生」と「死」の世界を超えてゆく、生の世界と死の世界は対立するものではなく、循環するもの、つまりは「輪廻転生」の世界に入っている。

 生の世界と死の世界とは分断されず、亡くなった人とも、またいつか、どこかで会える。

 それが、曲の最後の「風薫る砂浜で また会いましょう」と謳いあげられているのでしょう。

『馬と鹿』力強く”生きる”

 ラグビーをテーマとしたドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として書き下ろされたこの曲。

 「ラグビー」、「池井戸潤」、「日曜劇場」

 いい悪いではなく、今までの米津さんの世界とは真逆でラグビーのドラマの主題歌と知った時は意外に思った人が多いと思う。それもその筈で

「自分に足りないものを補いながらずっと生きてきた」(『ROCKIN’ON JAPAN』2019年10月号)米津さんが自分に足りないものを作品化したのだ。

 曲調自体も力強い。

「体の奥底で響く 生きたりないと強く」こんなプリミティブに力強く”生きる”ことを歌った曲は、米津さんにはいままでになかったように思う。

では『感電』は?


 『Lemon』生きている側からの「死」→『TEENAGE RIOT』と『Flamingo』自分自身が死の世界へ→『海の幽霊』輪廻転生→『馬と鹿』力強く”生きる” 

 米津さんが辿り着いた「力強く”生きる”」こと。ただ、力強く生きることは、それができる人間ばかりではないし、ずっと、力強く生きていたら、誰でも息が切れてしまうだろうとも思った。

そんな時、私が思い出したのが

「楽しく生きていくというのが、いちばん大事なんじゃないですかね。」という子ども向けに放映された米津さんの『パプリカ』インタビューの言葉だ。

 いちばん大事なのは楽しむこと。

 次の『感電』はこれを踏まえて生きることを楽しむような曲になるのではないでしょうか。それは、コロナ禍のいまだからこそ、必要な曲となると予想します。当たるかどうかはわかりませんが。

ただ一つ確実なのは『感電』拡大することでしょう。

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