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183 いま、日本の図書館が新しい②・和歌山市民図書館

日本の新しい図書館を巡る旅。

今回は和歌山市の和歌山市民図書館に来ています。

和歌山の玄関口である南海電鉄の和歌山市駅。その駅を核として商業棟、ホテル棟、公益施設棟からなる複合施設キーノ和歌山が2020年にオープンしましたが、公益施設棟に和歌山市民図書館の本館が移転開業しました。

ここはTSUTAYAを経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となって管理運営する図書館。同じ例は佐賀県の武雄市図書館でも見られます。

9時からの開館ですが、10分前にはこの行列!
期末テスト前だからかな?とも思いましたがそれにしてもすごい人気であることがわかります。

図書館を市民が来たがるような魅力的な施設にすることで多くの人が本を借りたりここで活字を読んで時間を過ごすことになることで市民の知的レベルは確実に向上すると思います。無料で利用できる公共施設ですがこういうところにお金をかけることは将来の投資のために必要だと思います。

中に入ってみます。1階はCCCが展開するTSUTAYAのショップやスターバックスが入る店舗スペース。中二階にきれいに本が並べられた書棚のインパクトがかなり強く、店舗がありながらも雑然とした感じはなく、洗練された印象を与えてくれます。

スターバックスで購入したドリンク類は図書館内持ち込み可能。どこでもコーヒー片手に読書を楽しむことができます(フード類は一部エリアのみ持ち込み可能です)。

エスカレーターから店舗を見下ろします。
一般の商業施設にあるTSUTAYAとは全く違い博物館のショップにいるような印象です。

スターバックスの脇、1階の奥のスペースも図書館の一部。10時からはここも閲覧スペースとして利用可能です。

店舗奥のエスカレーターを登って図書館の中に入っていきます。
特徴的なのは天井より上に並べられた本たち。本棚の高さが場所によって違うのだな、ということにも気づかされました。

こちらは一般的な並びの書棚ですが、窓の向こうの景色まで眺めることができ広い空間の中にいるような気持ちにさせられます。

学習スペースはもちろんですが、木の周りに座って読書することもでき、気分や用途に合わせた時間の過ごし方を楽しむことができます。

4階にある「もぐもぐスペース」で勉強で疲れた頭を癒しましょう。和歌山城をはじめとした和歌山の町の景色を広く望める窓が特徴的です。

話が横にそれますが、私の実家のある町の図書館も5年前に新しく建てられてオープンしましたがそこは完全に「飲食自由」の図書館。おしゃべりも自由というある意味斬新な図書館なのですが、テスト前になると駄菓子屋ら果物やらを持ち込んで談笑する高校生で埋め尽くされとても落ち着いて勉強できる雰囲気ではありませんでした。わたしとしては談笑はこういったスペースに限り、きっちりしたすみわけをした方がいいと思いました。

4階はこども図書館エリアですが、ここにあるのが本棚で作られた「えほんの山」。本棚を登りながら、目当ての本を見つけると座って読むことができる。見た目にもインパクトがあるし、子供の遊び心を誘ってとてもいいアイデアだなと思いました。

後ろにある階段を登っていくと屋上に出ることができます。

屋上は人工芝が敷かれています。ちょっと退屈してしまった小さい子供たちが遊ぶのにうってつけです。

この日はときどき雨が降る天気でしたので人がいませんが、気候が良ければここで学習したり談笑したりすることもできます。北は紀の川、南は和歌山城。和歌山の景色を堪能することができます。

望遠レンズで和歌山城を撮影。

CCCは図書館運営への参入に積極的で今後も全国で「ツタヤ図書館」がつくられる計画です。
選書がCCCの恣意に委ねられてツタヤの売れ残りを押し付けられるだけになってしまう、お金にならない郷土資料などの貴重な資料が展示されないといった懸念があってCCCの参画には反対論もかなりあるのは事実です。

一方で施設の作り方やディスプレイの仕方、集客のノウハウなどライバルに打ち勝つために知恵を絞りだしてきた民間企業のもつアイデアは、行政担当者が逆立ちしても到底生み出すことができなかったものであることも事実。市民に足を運んでもらえる魅力ある図書館をつくるにあたって、民間の知恵を借りない手はないと思います。

民間の都合のいいようにやられてしまう、という問題は行政がそうさせなければいいだけの話で、行政が民間をうまく使うようコントロールすればいい。

ツタヤだけではなく民間を活用した図書館は今後も増えていくことでしょう。全国各地にオリジナリティあふれる図書館ができることが楽しみで仕方ありません。


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