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アフリカの小学校での「手洗い啓発ポスター」作成にもCanvaを活用。ケニアやウガンダでエイズ孤児の支援を行うNPO・PLASのストーリー【導入事例】

NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLAS 代表理事 門田瑠衣子さん

2005年12月にボランティア仲間として知り合った大学生7人が集まり、取り残されたエイズ孤児に手を差し伸べるために設立したというPLAS(プラス)。現在では、第6回エクセレントNPO大賞「課題解決力賞」および第8回「コロナ対応チャレンジ賞」や、第2回ジャパンSDGsアワード「推進副本部長賞(外務大臣賞)」を受賞するなど大きな成果を達成している注目のNPOです。

第2回ジャパンSDGsアワード「推進副本部長賞(外務大臣賞)」授賞式のようす

(第2回ジャパンSDGsアワード「推進副本部長賞(外務大臣賞)」授賞式のようす)
Canvaには、非営利団体を支援するプログラムがあり、アムネスティ・インターナショナルストップハンガーナウを始め、世界各国で活躍する多くのNPO団体に無料でCanvaを活用していただいていますが、PLASもそのひとつです。

CanvaのNPO支援プログラムを利用する前から、一般ユーザーとしてCanvaを使いこなしており、現在はPLASの事業報告書の作成にも活用しているというPLASの代表 門田瑠衣子さんに、エイズ孤児の支援における現在の取り組みやこれからのビジョン、NPOの新しい働き方などについてお話をうかがいました。

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取り残された子どもたちに手を差し伸べたいと仲間と共にNPOを立ち上げる

ーー 日本に住む私たちにとって、遠い場所のように思えるアフリカですが、どのような経緯で活動の場所に選ばれたのですか?

門田さん(以下敬称略):学生時代にケニアにボランティアに行く機会があり、その時エイズで苦しんでいる子どもたちがこれほど多くいることに衝撃を受けたのがきっかけです。そこで、自分も何か力になりたいと思って日本に帰国しました。

帰国後、同じように世界各地で「子どもとエイズ」という問題に直面した他の学生の仲間と出会い、PLASを立ち上げたのですが、他の設立メンバーが活動していたフィールドがウガンダでした。さらに、私が活動していた場所がケニアだったということから、その2カ国で活動することになりました。偶然ではありますが、ケニアウガンダは国境を接しており、世界的に見てもHIVの状況が深刻だったということも理由です。

当時アフリカでは、エイズによって親を失い孤児になる子どもたちが急増しており社会問題となっていました。一方、その問題に取り組む人たちがいないということも大きな課題でした。そこでPLASは、エイズ孤児の課題を解決するということで活動を開始しました。

活動を開始した当初は、支援の対象をエイズ孤児に絞っていましたが、現在その対象をより広げて「取り残された子どもたち」と定義し、エイズ孤児に限定することなく、貧困家庭の子どもやシングルマザーが育てている子どもたちなどを対象に支援しています。

PLASを設立した当時は、エイズ孤児が小学校への通学を断られることが多かったため、学校を支援する活動を行っていたのですが、現在ではエイズ孤児の子どもたちも公立の小学校に通うことができるようになってきています。

今問題になっているのは、入学したものの、経済的な問題などで中退せざるを得ない子どもたちが多いということです。小学校を留年したり、中退したりしてしまうんですね。そこで、家庭の生計を向上しようということで、母親たちが収入を得ることができるスモールビジネスを立ち上げる支援を行っています。

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(母親たちが生計を立てるためのスモールビジネスを支援するPLASのメンバー)

カウンセリングと生計向上支援を両輪にさまざまな事業を展開


ーー それがCAFE事業、FLOWER事業、BRIGHT事業などのさまざまな事業ですね。詳しく教えていただけますか?

門田:CAFE事業は、地域に暮らすHIV陽性のシングルマザーのお母さんたちが小さなカフェを設立して、生計を立てていくことができるよう支援するプロジェクトです。たとえばジュースを作って販売したり、パンケーキのようなお菓子や、現地で親しまれている食事を提供することでビジネスを立ち上げています。

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(カフェを運営する母親)

FLOWER事業はCAFE事業の農業版のようなプロジェクトで、農業や植林で生計を立てていくことを目指すものです。FLOWER事業はカウンセリングプログラムが事業の両輪の一つになっています。

母親と子どもたちそれぞれにカウンセリングを提供することで、母親は子育ての方向性や、子どもの進学について相談することができます。子どもたちには、将来どんな仕事をしたのか、どのような大人になりたいのか、どんな教科が得意なのかなどをカウンセリングを通して考えていきます。

このカウンセリングは一連のプログラムなのですが、母親がこれを受けることで、農業で収入を得て、家計を支えることについて目的意識が明確になります。子どもの小学校卒業後、中学校に進学するにはどのくらい貯金が必要なのかなどといった目標を設定できるようになるんですね。このため、FLOWER事業ではカウンセリングと農業を組み合わせています。

BRIGHT事業はユース(若年層)に向けたサポートです。10代や20代前半で出産して、シングルマザーとして子育てしている人がかなりいるんです。彼女たちはHIVに感染したシングルマザーであり、しかも若くて経験値が少ないという複数の困難を背負っています。このプロジェクトではHIV陽性のユースを支援していますが、シングルマザーの方も少なくありません。皆さん若い母親なので、0~3歳くらいの小さい子どもたちを抱えながら若者どうしで助け合っています。このプロジェクトでは、ヘアサロンなどスモールビジネスを立ち上げ、それを軌道に乗るまでサポートしています。

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(ヘアサロンを開店したユースとPLASのメンバー)

カウンセリングがきっかけで生まれる家庭の変化

ーー 国際協力の現場では経済的な自立を目指すというのは一般的なアプローチだと思いますが、カウンセリングまで踏み込んでいるというケースは特徴的です。

門田:シングルマザーの母親が、少しずつ自分で収入を得ることができるようになったとき、そのお金をどう使うかを理解することは重要です。支出が多くなってしまうことのないよう家計のバランスを取ることが非常に大切だと思っています。

国際協力の仕事をしていて、よく聞く失敗としては、せっかくお金を稼げるようになったものの、お酒やギャンブルに消えてしまうといったケースです。本当に必要なことにお金を回すことができず、結局生活が改善しないという話もあります。

そのためPLASでは、事業プログラムにカウンセリングを組み合わせることで、稼いだお金を何に使うのかということ、そして支出を抑えることによってどのように家計のバランスを取っていくかということを専門のカウンセラーと一緒に学びます。テーマは、生活そのものをどうやって向上させるかですね。

たとえば母親によっては、宿題があること自体を知らない人もいます。子どもと学校について会話できなかったり、学校に関心がなかったり、どうせ自分はお金がないから子どもを学校に通わせることも難しいし、進学なんてとんでもないという母親もいます。そのような人でも、少しずつお金を稼ぎ、カウンセリングを受ける中で、「うちの子どもは宿題をやっているんだ」と気づき、子どもに「今日の宿題は?」などとたずねるようになっていくんですね。

このように、本当に小さな変化ではありますが、日本の私たちにはちょっと想像できないような背景があるのが実情なんです。

子どもは宿題について声がけされたことで、母親が自分の勉強に関心を持っていることに初めて気づき、自信につながります。今まで宿題をやらずに遊びに行っていた子が、きちんと宿題を終わらせるようになったり、得意科目について考えたことがなかった子が、もしかしたら算数が得意かもしれないなどと思うようになったり、子どもたち側にも変化が生まれます。そこを私たちがフォローしていくという形になっています。

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(教育は子どもの未来を生み出す力)

現地に詳しいパートナー団体と連携

ーー PLASは現地に駐在員を置くことなく、その国で活動しているパートナー団体と協力してプロジェクトを進めているそうですね。

(パートナー団体の活動に感謝する母親たちのインタビュー)

ケニア、ウガンダそれぞれの国に、現地で立ち上げられた、現地の人たちが運営するNGOや自助組織があります。自助組織はいわば町内会のような規模で、生まれ育った地域に暮らす人どうしがグループを作って助け合っています。NGOはもっと広域で、公のために活動をしています。

PLASはそのような団体と連携して活動しています。それは、自律性や主体性が大切だと思っているからです。現地の人が何を考えていて、どのように解決したいと思っているか。その点を共に計画・調査しながらプロジェクトを立案する姿勢を大切にしたいと思っています。そうすることで、私たちがいなくなっても、現地の人だけで活動を続けることができるからです。

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(ケニアのパートナー団体のスタッフ)

HIVが広がった社会的背景とは

ーー 非常に初歩的な質問なのですが、なぜアフリカにこれほどHIVが蔓延したのでしょうか。

門田:HIVは性感染することもあって、人に伝えづらかったり、感染したことを責められたり、偏見の目で見られたりすることがあります。そうなると、検査に行くことを避けてしまい、感染していることに気づかず他人に感染させてしまうことがあります。HIVについての差別がある社会の中で感染が広がっていったと感じています。

もちろん知識が欠けているということも大きな問題です。HIVの感染経路を知らない人もいるんです。たとえば、悪魔や悪霊に取り憑かれて感染したのだろうとか、前世で悪いことをしたから感染したと思っていたりなど、まったく知識がない人もいました。そのような人たちにHIVの感染予防や治療について知ってもらい、身を守ってもらうことが大切だと思っています。

ーー その結果、両親のいないエイズ孤児が増えたのでしょうか。

門田:現在では、さまざまな取り組みの結果として、エイズ孤児そのものの人数は減っており、HIVの新規感染者も少しずつ減少しています。

しかし私たちがPLASを設立した当初は、両親ともに亡くなっているというケースが多かったです。父親が感染していれば、結局母親も感染しているというケースが多いのです。しかし現在では治療薬が開発され、投薬しながら一生付き合っていくことで、寿命まで生存できる病気になっています。

現在増えているのはシングルファミリーです。父親はエイズでで亡くなってしまったけれど、検査を受けた母親は抗HIV薬で治療を開始することができたというケースもあります。またシングルマザーで出産したというケースも非常に多いです。

母親たちは出産時に必病院でHIV検査を受けるため、そこで初めて感染に気づくことになります。そうすると、赤ちゃんに感染させないよう予防プログラムを受け、自分も治療が開始します。現在はケニアでもウガンダでも、治療薬は無料で手に入ります。中には僻地に暮らしており、なかなか病院に行くことができない方もいるのが現状です。

負の連鎖を断ち切るために

ーー エイズ孤児の子どもたちを取り巻く環境には、容易に解きほぐすことのできない複雑な問題が絡み合っているんですね。放置するとよくないサイクルに陥ってしまう。

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門田:特にそのサイクルが、親から子へと連鎖していくのが問題です。母親がHIVに感染して貧困状態に陥ると、子どもが学校に通い続けることができなくなります。そうするとおとなになっても職に就けなかったり、自分の身を守ることができないという問題に直面します。HIV/エイズについての知識がないために自分もまた感染してしまう。PLASが提供しているのは、このような悪いサイクルを断ち切っていくための事業と考えています。

世代の連鎖を断ち切るポイントは、次の世代、未来の世代に伝播させないということです。結局のところ、子どもを支援するためには、その養育者である母や父がしっかり自立して子どもたちに教育を提供することが大切だと思っています。

そこで子どもたちに教育の機会を提供し、未来を切り開いていってもらうためには、親をサポートするという形になっています。PLASが子どもに教育費を支援するという形にしたとしても、子どもたちが育つのは家庭なので、親が自立していなければ、いつまでもお金を贈り続けなければならず、支援できる人数も非常に限定されます。親が自立できれば、私たちはさらに別の困っている人を支援していくことで、活動にいっそう広がりが出ると考えています。

熱い気持ちを持ちながら、冷静に判断し、冷静に行動する

ーー PLASの活動は非常に戦略的に練り込まれたアプローチだと感じました。NPOというと、どちからかというとエモーショナルな動機で活動されているのではとも思っていたのですが。

門田:限られた条件の中ではありますが、データに基づく判断や、結果を数値として評価することで、現地の人の暮らしが改善されると考えています。採用時も、分析的なアプローチにある程度理解があったり、造詣の深い人を選ぶようにしています。さらに役員にも社会的なインパクトを評価することが得意な人を迎えるなどして、組織として取り組んでいます。このように、データを分析したり、緻密に計画して評価する姿勢を評価された結果、第6回エクセレントNPO大賞での「課題解決力賞」受賞につながったのだと思います。

もちろん皆それぞれ、情熱や原体験などを通じて静かなエモーションを持っていると思いますが、熱い気持ちを持ちながら、冷静に判断し、冷静に行動することが非常に大切だと考えます。

Canvaでコミュニケーションコストを大幅に削減

ーー Canvaを知ったきっかけについて教えて下さい。

門田:もともと、CanvaがNPOへの支援プログラムを提供する前から無料ユーザーとして使っていました。その後、NPOに対する支援プログラムがあると知って申し込みました。たとえばTwitterへの投稿や、ウェブサイトに掲載する現地レポートのヘッダーデザインや、プレゼンテーション作成などに活用しています。

さらに最近は、年次報告書もCanvaで作成しています。編集者さんやデザイナーさんなどに外注していたこともあったのですが、現在はすべて自前で作成しています。操作は簡単ですし、デザインはテンプレートが豊富なので自分たちにあったものを選択できるので。時短になるというメリットもありますし、制作費もコストダウンできます。直近の2019年2020年の事業報告書はCanvaで作成しました。

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このような資料を外注する場合、コミュニケーションコストも相当必要になります。組織内で修正内容をまとめ、それを外部に依頼して、仕上がったものをさらに確認するという一連のやりとりにかなり時間をかけていました。

ところが現在Canvaで年次報告書を作る場合、たとえば海外事業の報告書は海外事業の担当者が作成しています。最新の状況を、常に担当のスタッフがアップデートしているので、わざわざ進捗を報告しなくても、Canvaにアクセスさえすれば、誰でも進捗状況を確認できるよう情報共有できています。

また、PLASではSNSの活用をとても大切にしているのですが、この点でもCanvaは便利です。ひとつの画像をTwitter、Instagram、Facebook、ウェブサイトなどに簡単に応用して活用できる点も助かります。

(YouTubeにもCanvaを活用)

だからほかの団体にもCanvaを薦めています。NPOの中には、イラストレーターやフォトショップを使えるボランティアさんにデザインワークをお願いしているところもありますが、ボランティアさんが忙しいと、デザイン関連の活動が進まなくなったりします。だからCanvaは本当に大革命だと思っています。いろんなデバイスから確認できる点もありがたいです

アフリカの小学校での「手洗い啓発ポスター」作成にもCanvaを活用

門田:現地での活動にも一部Canvaを活用しています。たとえばコロナ感染予防のためのポスターを小学校に設置したとき、手洗いのやり方を教えるポスターをCanvaでデザインし、現地で印刷しました。

Canvaだとデザインの修正や編集も簡単です。現地で手洗いの啓発ポスターを作る場合、文字を読めない人も多いので、文字をどの程度使うか考えなければならないんです。でも子どもたちは学校で習っているため文字が読めるので、手洗いの方法を英語で少し説明するために、文字が入ったバージョンと入らないバージョンの2パターンを検討し、文字が入っている方を採用しました。

以前は、一度デザインを決定したら、変更するために時間や手間がかかりました。でも今ではデザイナーに頼まなくても自分でデザインでき、簡単に修正できるので助かっています。

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(学校に設置した手洗い啓発ポスター)

子どもたちによりよい世界を残すために

ーー 仕事とプライベートを両立させるこれからの時代のNPOの働き方についてご意見を教えてください。

門田:PLASでは、コロナが問題になり始めた去年からリモートワークに切り替えて、基本的にみんな自宅勤務です。このため、クラウドでデータが保存され、PCでもスマホでもどこからでもファイルにアクセスできるCanvaが活躍しています。

私たちが大切にしているのは、残業をせずに、限られた時間で効率的に働きながら、働きがい以外に、自分のやりたいことを実現するということ。たとえば子育て、介護、習い事、大学院など、それぞれのメンバーがやりたいことと仕事を両立できることが大切です。PLASの作りたい社会と、それを実現するための働き方がうまく調和したらいいなと思っています

働き方についていえば、PLASは働き方でも評価をいただいています。Canvaをはじめとして、セールスフォース、Google、Dropboxなどを活用し、さまざまなツールを使いこなして新しい働き方を実現していきたいと思っています。おこがましい言い方かもしれませんが、NPOの新しい働き方のひとつのモデルケースになれればと思い、さまざまな賞をいただいたり、情報発信をしています。

ーー その姿勢が「よりよい世界をつくる」ことにもつながりますね。

門田:個人としては、すべての子どもたちが自分に価値があるということを自分で認識できる世界を作れたらいいなと思っています。私たちが対面してきた子どもたちの中には、自分が悪いから母が苦しんでいるとか、自分が家族に迷惑をかけているなど、自分がよくないことの根源になっているという意識を持っている子がいます。そういった子どもたちに、そうじゃなくて、あなたには価値がある、あなたの命に意味があるということを活動を通じて伝えていきたいと思っています。

ーー 最後に、PLASの活動に興味を持った人に対するメッセージをお願いします。

門田:一番最初にお願いしているのが、月々1000円で参加できるマンスリーサポーター制度です。母親たちが自立したり生活を改善していくのは、非常に時間のかかるプロジェクトです。毎月ご支援いただくことで、長期的な視野で子どもたちの未来を作る助けになります。サポーターになっていただければ、最新の情報もお知らせできます。

資金はあまり出せないけど、ボランティアをという方は、特に学生さんにはインターンをぜひおすすめしたいです。学生さんには、広報やファンドレイジング(資金集め)などにご協力いただいていますが、ここでもCanvaを使ってさまざまな資料作りやSNSのデザインに役立てています。

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(PLASで活動しているインターン学生)

Canvaには、非営利団体を支援するプログラムがあり、アムネスティ・インターナショナルストップハンガーナウを始め、世界各国で活躍する多くのNPO団体に無料でCanvaを活用していただいています。詳しくはこちらをご覧ください。

(写真はすべてNPO法人エイズ孤児支援NGO・PLASによる提供)

NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLAS 代表理事 門田瑠衣子さん
PLASのウェブサイト
門田さんのTwitter
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