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100億円達成でやったこと

「売上は力、利益は品質」
これを提唱しまずは市場の力を試したかった。
そして社員の力を信じてみて一度向き合ってみたかった。
デビューの年であった2015年の売上は50億円の壁をいとも簡単に破り、52億円だった。翌年も56億円、2017年には一気に60億円を突破した。

何をやったのか?
時間に余裕を持ってもらおうということで、朝一の会議、毎週の会議を月に1回だけに減らし、後は報告書という形で進めた。
何でも会議を足し算方式で、対策会議など、どんどん足しては、掛けてはという形だったので、2015年1月からは引く、割るということをやってみた。疲弊している組織からゆとりのある組織。
尚且つ、お金で解決できるものはお金で解決。投資するものは投資する。工作機械のメンテナンスは費用削減のために自社で行っていたが、保守点検も含めて外部に依頼し、自社による品質向上ではなく、多面的な部分での品質向上に努めた。
社内コミュニケーション自体は特に変えなく、時間の軸から変更をしてきた。

順調に伸びつつある海外市場
キャニコム、アメリカへでも紹介をしたアメリカ市場が急激に伸びてきた。これはインフラ整備、投資によるアメリカのレンタル産業が活性化した。レンタル事業のRevenue(収入)は年率10%以上と伸長しており、レンタル事業の強化とアプローチは必須だった。またレンタル会社同士のM&Aでで大きく変化があった。変化の兆しとしてはUnited RentalsのM&Aと日本の商社である住友商事、車レンタル大手のHertz、そしてSunbelt Rentalsという現在のアメリカTOP5の4社がインフラ整備関連事業に攻勢を仕掛けてきたのである。簡単に言うとコンクリート関連に製品に着目しているということだ。
そこは見逃すわけがない。

また2012年にMBAの卒論で研究をした「代替エネルギーにおけるプランテーションの機械化立案」に基づき、パーム油などのバイオディーゼル、それ以前のトウモロコシ、サトウキビによるバイオエタノールのアプローチを行い、アジアの紙市場(パルプ関連)、オセアニア地区の洪水、山火事なども全て同時に戦略として組み込んだ。とりあえず猛烈に海外に行きまくった。おそらくトータルで地球を30周以上はした。(現在理論上では地球は60周分以上の距離を飛行機で乗っているみたいです。)

マレーシアにおけるパルプ市場での草刈り

ここで困ったのが安定的な生産量を確保するための新工場と人材だった。1960年代に工場を建てた工場もこの時点で55年経過していた。
板金加工のできる工作機械が1993年製で、レーザーで鉄板を切るのに月に12トンしか切れない。簡単に言うと1日中、夜間2交代制で加工をしても全く間に合わないということだ。
新規のお客様を海外から連れてきた。当時の工場を見てほとんどのお客様が落胆した顔で帰っていく。
「こんないい製品を作るのに、なぜ設備がこんなに古いのだ」
これから取引をするのになぜ落胆されなきゃならんのだ。お金で解決する最終的な部分はここだ。
「新工場を作る」
実は新工場のプロジェクトは2013年に祖父と進めていたプロジェクト。祖父の急逝や候補地の問題、そして一番の難関は資金だった。
もうこれ以上借入ができないほどの資金難だった。
キャニコムの機会損失は年間で5億程度。これからの機会損失は10億近いものだと試算をした。そのために金融機関に借入をしなければならない。
2017年で60億円突破し、2018年に61億円という形で微増ながら増収を迎えた。海外比率も4割近くになり、問題が明るみに出る。

「キャッシュフローのショート」
黒字倒産という言葉がある。「売上は力、品質は利益」ということで、売上を拡大し、損益分岐点を超えれば勝手に利益はあがると考えていた。
そこが間抜けの始まり。中小企業における海外比率4割というは恐ろしいことを意味する。簡単に言うと支払いのサイトの話。
基本的に製品はコンテナ船で輸送をする。シアトルまでの輸送が約14日~16日。欧州になると30日~45日となる。そこで支払いサイトもL/C90~180のサイトを組んでしまっていた。
当時の60億の売上の40%なので、24億円。売掛金が10億近く回収が約90日~180日後という形になっているため、キャッシュが回らなくなってしまったのだ。工場を建設する以前の問題で、海外取引の契約を見直すきっかけとなった。
「海外取引のバイアス」
商慣習の壁というのは誰が作ったのか?2004年に入社した時の壁は商慣習を無視して、我々のスタイルを垂直統合で進めようとした。それに嫌気を指した全ての顧客に見限られた経験があった。そのため相手側の有利になるような契約で推進してしまった。これは海外取引が無くなるリスクを鑑みた話だったが、L/C90日~180日、T/T90日、120日、180日という設定をせざるを得ない形だった。商品力、英語交渉力すべてにおいて劣っていたからだ。しかし、相手有利の契約のおかげで海外取引は活性化した。円高、リーマンショックで奈落の底に落ちかけたこともあるが、海外取引のシェアは伸びて行った。まだシェアが20%台の場合は支払いが180日後の現金であろうが、何とかキャッシュフローは回せていた。
だが40%に近づくようになってきた頃には180日の支払いサイトでは全くキャッシュが回らなくなってしまった。我々は製造業のため、調達をしなければならない。調達先の支払いは30日後払い。海外の顧客からは180日後にしか現金が入らないが、仕入れは30日後に支払い。単純に恐ろしい形を自ら作ってしまっていたのだ。

支払いサイトの短縮の交渉から始まる。
売上が伸びても、キャッシュフローが回らなくなる。支払いをT/T30にしてもらうのです。結果としては交渉は難航した。何回も足を運ぶ、そして飛行機のマイルが鬼のように貯まるという循環ループが出来上がってしまうのですが。。。最初は渋って、財務諸表を提出しろだとか色々と言われるわけです。ただあまりにも必死の形相に相手側も理解をしていただいた。
180日以上の支払いフローを短縮してもらうことで納得していただいた。その背景には円安基調がどんどん忍び寄っていたから結果的に了承を頂いただけなのかもしれない。

演歌の森うきは(2021年8月竣工)

売上100億円達成の話がまだまだ前段の前段である海外交渉の話でした。ポイントとしては、「海外販売の拡大」「キャッシュフロー」「人生最大の投資、新工場(演歌の森うきは)」の3つのファクターが合致してからこそ達成したと思っています。ここまでになると新工場建設の話に繋がってくるのでまだまだ長引きそうです。


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