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ミライのキャリア #30番外編 アートは生き方

職業?人間だ


【えりな】今回は、アーティストとして生きるには という話をしていきたいと思います。

【Caol】かの画家岡本太郎さんは「職業?人間だ」といっていました。これは確かにそうでアーティストと言うのは表現活動や作品制作をすることが先で、それで生計を立てることはあと。他の職業のように、まず生計を立てるためになる、ということがない。なので、アーティストと言うのは「表現活動をする」という生き方である、と言えます。

【ホリデー】そうですね。職業選択の中でアーティストを選ぶというよりも、やむにやまれずアーティストになる。 職業というか商業アーティストというかいると思うのですけど、多分やむにやまれずそういうことをやるしか自分には生きる道がない、みたいな感じの人が、たまたま 作品が売れたから、まあ自分も一応 アーティストとして食べていけているのかな、 みたいなことになっている。 アーティストになろうと思って、職業として、それを選ぶっていう人って、そんなにいないのだろうなっていうのは、そうだなと思いますけどね。

【Caol】じゃあ 、そういう美術や音楽などのアーティストになるためにはどうすればいいのか。
 結論から言えば、 表現活動や作品制作を続けること、どうしたら続けられるかを考え、実行すること、ということですよね 。

【ホリデー】そういうことでしかない。

音楽家と俳優の年収

【Caol】アーティストが表現活動や作品制作だけで生計を立てるのが困難、というのは2つあります。1つは得られる収入。経済雑誌が職業別の年収の特集をやっていますが、それによると、音楽家の平均年収は300万円ちょっと。俳優は200万円ちょっとでした。

【ホリデー】俳優は200万円。 演劇の中でも、小さい劇団とか小劇場とかでやっているような人は、そういう年収になっちゃうとか、そういうことですかね。

【えりな】いや、そんなことないかも。そういう人たちは 200万円もらえてはない、と、一応演劇学科出身の私は思います。

【ホリデー】200万円も盛りすぎ。

【えりな】どうやって出した数値なのですか。

【Caol】この数字は算術平均。1億円もらっている人と、10万円以下の人の平均を取って、このぐらいになるということです。

【えりな】平均の人はいないけど平均がある、ってやつだ。

年収10万円

【Caol】怖いことに、最頻値、モードと言って、最も人数が多い年収っていうのは、10万円以下なのですよ 。年収ですよ。
 この年収の平均の元となったデータは、経済雑誌の記者さんが、マネジメント事務所に取材して、出来高、仕事が入ったアーティストさんにいくら払えているか、っていうのを調べたて分かったものです。
 声優さんの例なのですけど、単発の仕事をもらい、「やった~」と仕事をしたところ、その月はそれ1本だけ。次はなくて2万円のギャラを半分事務所が取って、自分には1万円振り込み。その月はこれで声優の報酬はおしまい、ということがあったそうです。

【ホリデー】声優ってアーティストというよりも商業よりの人ですけど、商業的に求められているような存在で、でも若干アーティストに近い、みたいな人でもこの有様ってことですね。

1発当たっても一生続くとは限らない

【Caol】アーティストが表現活動や作品制作だけで生計を立てるのが困難、という理由の2つ目。仮に1発当たっても一生続くとは限らない、ということですね。まずそもそも表現活動や作品制作だけで十分な収入になる、となることが大変。宝くじに当たるようなもの、何万人いる100m走のアスリートがオリンピックのファイナリスト16人程度になるような確率ですね。

【ホリデー】一発当てるだけでもすごいですけどね。

【えりな】さっきの例の声優さん。単発の初仕事をもらえている人だから、その選ばれしアスリート側の人なのだと思うのですね。

タレント・アスリート型

【Caol】今回、この話をするために調べて分かったことは、成功し、十分な収入を得たアーティストでも、生涯にわたってずっと表現活動や作品制作のみで終わった人はまれということです。
 28歳で亡くなったジミ・ヘンドリックスや、27歳で亡くなったジャニス・ジョプリンのように人生の方が短いと、一生アーティストのみで終わった、という人がいますが、これは例外。
 ある程度長生き、50~60歳までは生きていた人を見ると、タレント・アスリート型、と副業型の2つのタイプに分類できます。
 タレント・アスリート型というのは若くしてデビュー、作品発表できて、どこかでリタイアし、セカンドライフに入るタイプ。

【ホリデー】それがいいな。

【えりな】いいですね。

【Caol】なれるといいですけど、なれるとは限らない。

副業型

【Caol】副業型というのは、ずっと収入を得る副業があって、ライフステージによりアート活動と副業の比率が変わるタイプ、ですね。

【えりな】賢いのかな。

【ホリデー】副業とアーティスト活動の比率が変わればいいのだけど、変わらない人もいそう。

【Caol】例えば、アートの世界だったら大学の先生になるっていうのは、あがりと思われているのですけども、これは副業がメインになったって言い方もできますよね。月々振り込まれる大学教員としての報酬が生計のメインとなっている状態。これも見方によっては副業型になりますね。

【ホリデー】それはそれでいいけどね 。それは全然ありだな。

打席に立ち続ける

【Caol】アーティストとして成功するにはどうするか、どうしたらいいのか、ってことを言えば、表現活動や作品制作を続けるしかない。 野球で言えば、打席に立ち続けないと、ヒットを打つことはできないということです。厳しいことに、一回ヒットを打てたからと言って次もヒットを打つことができるかどうかは分からない。
 となると、表現活動や作品制作と生計を立てることを分けて、表現活動や作品制作を続けられる状況を作ること。さっきのタイプ分けで言うと、ずっとちゃんと生計が立てられる副業があった方がいいよ、というようなことが必要になるわけです。

【ホリデー】創作ってやむにやまれずの部分があるじゃない。生きていかなきゃいけないから生計は立てなきゃいけないし、ってことで、正しいことと思うのだけど、なんか切ない話だね。

【えりな】副業って色々あるじゃないですか。大学の先生とかって自分がアーティストとしてする副業じゃないですか。だからその人が、自分がアーティストとしていられる副業を選ぶ、みたいなことも必要なのかもしれないですね。

【ホリデー】今回のこのメッセージは誰に向けてのメッセージなのか っていうところもちょっとあって。僕らの思う世の中が思うアーティストって、当たり前だけど成功している人がよく目につくわけじゃない。一山当てたら ウハウハだぜ、みたいなことをイメージしている方がいるのだったら、いやいや、相当厳しいからねっていう話かもしれないし、逆に言うと、そういうことじゃなくても、私は表現しないと死ぬとか、表現しなくてはいけない、みたいなやむにやまれずやっている人は、こんな話とかを聞かなくても、創作活動をどういう形でも続けていくんだろうし。
 なんかこうアーティストだけで食っていくって、もう本当に厳しいよ、っていう話、学校の先生とか親みたいな話をするみたいな、そういう感じなのですか。

アーティストに必要な継続性

【Caol】いやいや。こういうネガティブな話は、 だからやめなさい、みたいな文脈で語られることが多いかなと思うのですが、そうじゃなくて、アーティストはいいですよ、続けていくためにはこうするといいですよ、っていうメッセージになるといいなと思って話をしています。
 芸人さんも含めて、駆け出しの頃などに、アーティスト活動とは直接関係がない、いろんな仕事をして生計を立てていて、アーティストとしての収入は十分ではない、ので、そういう仕事は恥ずかしいから隠したいなみたいな気持ちになる人もいるかなと思うのだけど、いやそんなことはない、アーティストとして生計を立てる別の仕事はあるのは当然で、堂々としてほしい、ということは伝えたいところですね。 また、アーティスト活動だけで生計を立てていないと、「それはプロじゃない」とバカにする人も世の中にはいるようですが、アーティストの評価は表現活動と作品のみで評価されるべきものなので、生計の立て方でとやかく言われるべきではない、ということも言いたいです。

【ホリデー】それは前向きな良い話ですね。

【Caol】なんでこんな話を言いたいか って言うと、ご存知の通り、私自身がそうでして公認心理師や臨床心理士は世を忍ぶ仮の姿で、私は音楽家です。

【ホリデー】今日はそれが言いたかった?

【Caol】そうですね。このPodcastでもずっと流れているバックの音楽とか、冒頭の音楽は全て私の作曲と演奏と録音によるものです。Spotify、amazon music、apple Musicでも私の曲は配信されています。

著作権収入

【ホリデー】Caol先生は副業タイプっていうことになるのですけど、副業ってインカムみたいなのっていうのはあったりするのですかね ?

【Caol】あるのですよこれが。著作権があるものを作るっていいなあ、と思うのは、作った後、配信していると、私が働かなくても著作権使用料とか 印税収入が入ってきます。これはいいなと思います。

【えりな】著作権収入!憧れるなあ。二人とも 著作権収入がある人だと思っていましたが、そんなことないのですか 。

【ホリデー】いや僕は印税系ではないですよ。

【えりな】ポンデライオンめっちゃ見るけど、私がポンデライオン見るたびにホリデーさんにいくらはいるんだろう?と思っています。

【ホリデー】ポンデライオンは厳密に言うとですね。僕が会社員時代に作ったのです。今でも著作権は保有しているのです、が、そんなには入ってこない。これを生計のネタにしようと思うと、 本当、今回の話と同じ話になっちゃいますね。

【えりな】ホリデーさんとポンデライオンほどの知名度でもそうか。

止めてもなるのがアーティスト

【Caol】当然私はホリデーさんほどの知名度はないので、著作権収入がある、と言っても、さっきの分類で言うと 年間10万円以下のカテゴリーに入ります。
 子どもの保護者の方に言いたいのは、アーティストになりたい、と言う人はどんなに止めてもなろうとします。表現活動や作品制作=アートは職業ではなく、その人のやりたいことだから。
 劇作家鴻上尚史さんの話ですが、俳優のオーディションでは、必ず30歳代以上のかたの応募があるのだそうで、そういう人は、若い時に俳優になりたい、でも止められたが、でもやりたい、で応募してくるそうです。
 でも俳優の場合、その年齢からプロデビューというのは無理、とのことです。これは本人にとっても周囲にとっても不幸ですよね。鴻上さんははっきり「無理」と言っていたのですが、実際どうです?えりなさん?

【えりな】稀にあるけど、いや無理でしょ、無理だと思います。

【Caol】もうプロデビューとかが無理なのに、やりたいからやるっていうのは、本人や周囲の人にとっても不幸ですよね。なので、アーティストになりたいというのは、止めない方がいいですよ。これを聞いている親御さん。心配いらないのは、止めなくても、なれないことがほとんどです。
 本人の納得って大切で、チャレンジしてダメだった人っていうのは、ちゃんと昇天して、きちんと本人が納得して、次のステージ、その先の人生を進めることができます。

【ホリデー】ものすごい後ろ向きな話だけど、なんか前向きですね。

【えりな】でも宇宙飛行士の話ってあるじゃないですか。子どもが母親に「俺宇宙飛行士になりたい」 と言っても、それを止める必要はない。宇宙飛行士になりたい人は、もちろん宇宙飛行士を目指すのだけど、じゃあ宇宙飛行士になるために英語の勉強は必要、その人が頑張って勉強して、宇宙飛行士になれずに、英語の先生になったっていいわけじゃないですか。いろんなことを学ぶだろうし、そこで出会ったなんか違うものを職業にするかもしれないし、人の道を誤らなければ、まず頑張らせてみては、みたいな話でどうでしょう。

【Caol】何かのために努力するプロセスで得られたものって、必ず他の分野にも役に立ちますよね。

【ホリデー】こういうことを言うと、ちょっと嫌なやつな感じがするのですけど、僕、結構、何事においても器用なんですよ。大体は、ソコソコこなせてしまう。 
 で、学生の頃からめちゃくちゃゲーセン通いがひどくて、対戦格闘ゲーム 、バーチャファイターをずっとやりまくっていたのですよ。結構真剣に取り組んでいたから、本当に強い人たちのプレイとかを見て学んでいたのですけど、本当に上手い人たちのプレイを見ていると、一切この領域に、「僕、到達できない」みたいな感覚があり、その挫折感がすごい あったのですよ。
 やったらソコソコできるから、やったらできるんじゃない、みたいな自信があったんですけど 、バーチャファイターで、ああそうか、人間努力では到達しえない領域があり、 才能やセンスみたいなことがあるんだ、ということをバーチャファイターから学んだことがあります。そういう意味では、100円をたくさん積んでいた経験っていうのは無駄ではなかった、と思います。

【Caol】今の人だとe-sportsのプロになりたい人に響く話ですね。

【ホリデー】アーティストも e-sportsも、普通のスポーツのアスリートもそうだけど、そこで活躍できるって、マジで本当に、ものすごい競争の中で生きているよな、って思うし、何だったら自己プロデュース能力も必要だし厳しい世界ですよね。

【Caol】ポジティブに言えば、一度やってみると凄さがわかるし、ひょっとしたら自分に才能があることが分かりますね。やってみないと分からないよ。

出会うって才能

【えりな】私、出会うって才能だと思っていて、例えば、オリンピックってたくさんのレア競技があるじゃないですか。レアではないですが、カヌーという競技を例にすると、私ってカヌーの才能がものすごいあるのかもしれないけど、カヌーに1回も出会わなかったから、私はオリンピック選手になってないわけじゃないですか。すると、その人の環境で出会った物って、すごい縁だし、才能だと思うのですね。だから出会ったらやってみる、っていいかもしれないですね 。

【ホリデー】それは結構大賛成です。このミライのキャリアは、キャリアに対していろんな情報を聞いてもらいながら、その人にとって、より良いキャリア感みたいなのが形成されて、良いキャリアを歩んでいけたらいいよね、っていうことなのだけど、難しいのが、「こっちの方が得なんじゃないか」とか「こっちのほうがリスクが低いんじゃないの」みたいなことだけでやっても、自分の幸せに繋がらない可能性もあるんじゃないか。
 出会いが才能みたいなのって、すごくいいなって思って、自分がピンとくるものに出会えただけでも超ラッキーだし、超才能だと思う。
 出会ったものに、とことんまで付き合って1回やり切ってみるっていうことで、気づくことがめっちゃたくさんありそう。その先の自分のキャリアも主体的にできる、という意味ではものすごいいい話だ。

【えりな】出会ってとことんやりきるためには、若ければ若いほどやりやすいじゃないですか。 歳を重ねるほどやりにくくなっちゃうから、若い時にこそやりきることが大切ですね、保護者の方、ということですかね。

【Caol】そうですね。これまでミライのキャリアで述べてきた、偶然の出来事がキャリア形成には重要、というのはアーティストやアスリートにも良くあてはまる、と言うことだと思います。
 未知のものに出会って、これをやってみたいと思ったものっていうのは、偶然ですけれども それはその人にとって、決定的なキャリアを形作るものになるかもしれないですし、やりきるって事がちゃんと次にもつながるかな。
 と、ここまで述べてきた副業型、タレント型と言うアーティストの分類も、どちらのタイプでもちゃんとキャリアの中でやりきる経験をしているはずです。

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