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なぜマシュー・ボーンがこれだけの作品を生み出せるのか考察

マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」を見てその革新性に驚くと同時に、見れば見るほどマシューの創造力に感銘を受けました。マシューのカンパニー「New Adventures」はコンテンポラリーダンスがメインのため、通常のバレエ団のようにクラシックの型にははまらない自由さがあります。
ですが、ここまで世界的に成功しているコンテンポラリーダンスのカンパニーはほとんどありません。これだけのアイデアを生み出し、革新的な舞台を作り、芸術作品に仕上げるマシュー・ボーンの才能には驚愕しますし、心からの尊敬の気持ちを持っています。

なぜマシュー・ボーンはこれだけ素晴らしい作品をたくさん生み出せるのか、私は彼の創造力に非常に興味があります。シネマの「Nutcracker!」や「眠れる森の美女」を見て、そして生で「ロミオ+ジュリエット」も見て思いましたが、マシュー・ボーンは天才だと思います。舞台を作りあげる才能に恵まれ、芸術性もあり、普通の人とは違う鋭い感性を持った方です。

しかし、世の中に天才と称される人は沢山いますし、それはダンスの世界でも例外ではありません。なぜマシュー・ボーンだけが突出しているのか、私はそこに興味がありますが、残念ながらその答えは私には分かりません。
ですが彼の舞台を見て、もしかしたらその理由の一部かもしれないと感じたことがあります。

今回日本で上演された「ロミオ+ジュリエット」は原作と設定がかなり違いますが、最後の結末は悲劇です。ですが、ロミオとジュリエットが出会うシーンや、バルコニーで2人で踊るシーンなど、見ている観客を幸せな気持ちにしてくれるシーンが沢山あります。マシュー・ボーンの舞台は常に愛が溢れており、見ていて幸せな気持ちになります。私が感じたのは、どの作品においてもマシュー・ボーンがこれだけ観客に幸せな気持ちを与えてくれる舞台を作れる理由は、彼が幸せだからだということです

また、「ロミオ+ジュリエット」ではとても長い名キスシーンがありますが、私はこのシーンを見て自分が好きな人と初めてキスをして本当に幸せだった瞬間を唐突に思い出しました。
マシュー・ボーン自身もインタビューでキスシーンについて答えていますが、これはマシュー自身が幸せな恋愛をしており、幸せなキスの思い出を沢山持っているからこそ、これだけ愛に溢れるシーンを作れたのではないかと思いました。

終わってほしくない瞬間に閉じ込められたようなキスです。観客が持っている若い時の思い出を捉えることができていればいいと思っています。

マシュー・ボーンのロミオ+ジュリエット公式プログラムより引用

「ロミオ+ジュリエット」では反社会的とレッテルを貼られたキャラクター達が主役ですが、マシュー・ボーンのバレエには居場所がなかったり、疎外されて苦しんでいるキャラクターが出てきます。これは彼自身が苦しい思いを沢山してきたからこそ、苦しむ人々に思いやりを持てるというだけでなく、彼が幸せだからこそ周りのことを思いやることが出来るのだと私は感じています。

私は苦しんでいるキャラクターに惹かれます。物語の中で彼らをその苦しみから解放するような旅を与えることに、惹かれるんです。

マシュー・ボーンのロミオ+ジュリエット公式プログラムより引用

マシュー・ボーンは幸せだからこそ、周りを思いやる心の余裕があるのだと思います。彼は幸せだから、周りのことを思いやる優しさがあり、若い人たちを育てることができ、若者達の悩みや社会問題にも向き合えるのでしょう。
そしてマシュー・ボーン自身が幸せで、素敵な恋をしてきたということだけでなく、彼の周りには彼を理解し、尊敬し、大切に扱ってくれる人が沢山集まってきているのだと思います。

マシュー・ボーンの創造力の源は沢山あると思いますが、その一つは確実に彼の「幸福」から来ていると私は考えました。

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