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バレエ感想㊻「眠れる森の美女 in Cinema」Kバレエトウキョウ

今から記載するKバレエによるシネマ版「眠れる森の美女」の感想は、あくまでもバレエが大好きの普通の会社員が感じたことを素直に書いた感想である。私と違う意見を持つ人が沢山いることを知っているし、どんな意見も一切否定しない。全ての意見は尊重されるべきだと思っている。

私はKバレエトウキョウ「眠れる森の美女」初演を見た時、確かに興奮した。素晴らしいと思ったので大絶賛し、自分は熊川哲也版「眠れる森の美女」が大好きでたまらないと思っていた。
しかし残念ながら私は「眠れる森の美女 in Cinema」については面白いと思わなかった。シネマではバレエ映画を見ていて初めて寝落ちした。それほどつまらなかった。

今までの私ならこのように感じた場合はnote投稿をスルーし、何も言わなかったと思う。ただ、私は初演でこのプロダクションを見た時大興奮しただけでなく、大絶賛した。あれだけ大絶賛したのなら、数ヶ月置いて再びこの作品を見た時非常に退屈に感じたことも同じくらい正直に書くべきかと思った。
何度も言うが、今から書くことは私の個人的な意見である。あくまでも私にとっては退屈だっただけで、絶賛する人や好んでいる人が沢山いることを知っている。バレエ界は大絶賛以外の意見は言いづらい環境だが、どんな意見も発言できる世の中になって欲しいと願い、また初演時に大絶賛したことによる責任も感じているため、つまらないと思った理由を分析してみようと思った。
以下はTwitter(X)にまとめた内容をnoteに転載したものである。
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Kバレエトウキョウ熊川哲也版「眠れる森の美女」シネマは、あれほど楽しみにしていたのに私は楽しめなかった。 踊りに魅力を感じず、ローズアダージオではバレエ映画を見ていて初めて寝落ちした。初演時には感動したのに、シネマはなぜ退屈に感じたのか自分でも分からなかった。それくらい退屈で耐えられなかった。

正直に言うと2度目に眠りを見た時は、1度目ほど感動しなかった。2度目の方が席ランクも高く、自分の興味あるダンサーが出演していたが、途中何度も船を漕いでた。 2度目は新国の舞台から直行したため、高身長好きの自分が平均身長が15cmほど下がったように見えた舞台に美しさを見出せなかっただけかと思っていた。(Kのダンサーは男女ともに非常に小柄。平均身長高めの新国を見た後だとなおのこと小柄さが際立った)

初めて熊川版「眠れる森の美女」を見たときは美しい衣装と斬新なストーリーに酔いしれ興奮した。その時の感動を書きまくったし、その感情は本物だった。 2度目に眠りを楽しめなかったのは初台からの移動で疲れ、好みのダンサーがいなかったからと判断し、3度目の眠りとなるシネマを楽しみにしていた。

3度目の眠りだが結論として私は全く楽しめず、船を漕ぐどころかバレエ映画鑑賞中に初めて寝落ちした。最初はKのダンサーよく知らないし、3回見たから飽きたと思った。 でもパリオペラ座も知らないダンサーばかりで、3連続でマノン見たけど毎回心を揺さぶられ、もっと見たいと思った。回数は関係無い。

バレエ映画で寝落ちした自分にショックを受けた。熊川版の眠りはあれほど初演時に楽しみ、興奮したのに、なぜシネマではこれだけ退屈したのか必死に考えた。 一つ思ったのが、私は今までほぼKバレエに行かなかったが、今回アンゲリーナ・アトラギッチが衣装デザインすると聞き、作品に興味を持った。
私はアトラギッチの舞台衣装に興味を持ったからチケットを買い、衣装が美しかったからその魅力に取り憑かれ、興奮したのではなかろうか。 現に自分が当時書いたものを読むと、ダンサー達の感想より衣装の感想ばかり書いてある。初演時、私は確かに感動した。美しい衣装と舞台装置に感動したのである。

アトラギッチがデザインした衣装は美しかった。綺麗なだけでなくデザインが斬新で繊細で、Kバレエの小柄なダンサー達の体型を美しく見せるようかなり工夫されているのがよく分かった。 デザインが綺麗なだけでなく、熊川哲也氏初めスタッフ達もダンサー達が美しく見えるよう、相当確認したと思った。
申し訳ないがKバレエの眠りを見て、私は衣装以外に興味を持てなかったのだと思う。 新解釈のストーリーも2度目は初回ほどの斬新さを感じず、ダンサー達の顔のアップが多く全体を見渡せないシネマは、出演者に興味が無い人間にとっては何の面白みを感じることが出来なかった。だから眠かったのだと思う。

こんな意見、今までの自分だったら批判を恐れて書かなかったと思う。 でもなぜ書いたか、理由の1つは初演を見て大絶賛したからこそ、シネマは良いと思えなかったと正直に書こうと思ったからだ。 もう1つはバレエ団やダンサーのファンで無いから映像を楽しめないと言うことに危機感を抱いたからである。
バレエ団やダンサーのファンで無いから楽しめないって、要するにバレエ自体は楽しく無かったと感じたことに他ならない。バレエが楽しかったらそんなこと気にならないだろう。 現にオペラ座公演はほぼ知らないメンバーで3連続同じ演目を見たのに楽しかった。誰が出ていてもオペラ座の底力は凄かった。

何が言いたいかというと、やはり日本バレエ界は全体としてまだ身内の応援状態から抜け出せておらず、いわゆる身内のような応援すべき推しダンサーが出演しないと観客を獲得できない状態なのでは無いだろうか。 もちろん推し活は尊重されるべきだし、誰かを推して行動するって素晴らしい動きだと思う。
日本バレエ界は今後新たな客層を開拓する必要があると思う。 他に比べKバレエは先を行っており、眠りもそのために制作された斬新な作品と思ってたが、バレエの知識が多少ある私でもこれだけ眠く感じたということは踊りの力で勝負というよりも、推し文化、身内贔屓に頼っているのではと思ってしまった。

上記はあくまでも熊川哲也版「眠れる森の美女」シネマを見た私の感想だ。 眠かったし好きなダンサーがいないから楽しくないと思った時点で、私に訴えてくる踊りでは無かったと思っている。 ただ私も初演は興奮したし、シネマを楽しんだ人が沢山いるのも分かってる。あくまでただの一個人の感想である。

ダンサー達は「シネマだと表情がよく見える」と宣伝してたが、真に迫る芸術性や演劇性を感じることは出来なかったと思う。 でも熊川哲也氏のローザンヌ映像は今でも心を掴まれるし、ウラーノワやプリセツカヤの映像は今でも引き込まれる。生の舞台じゃなくて映像だからという理由は違うだろう。

正直に言って、やっぱり踊りがつまらないと感じたのだと思う。2度目に見て寝かけた時点で気が付くべきだった。本当に心を掴む踊りを見せてくれたら眠くなんかならないし、身長も気にならなかっただろう。 期待したのは私の勝手だけど、全体を通して期待したほどの踊りを見せてくれた人はいなかった。

Kバレエ「眠れる森の美女」は熊川哲也氏が生み出した素晴らしい作品であり、芸術的価値はとても高いと思っているし、熊川氏を心から尊敬している。 残念ながらシネマは私の心に訴えてくるものでは無かった。それを正直に書いただけであって、あの作品も、絶賛する人達を否定したい訳でも無い。

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