見出し画像

バレエ感想⑯「ル•グラン•ガラ」Bプロ

久々に本当に内容が充実したガラ公演でした。いや、もう迫力が凄すぎる。普通バレエのガラといえば、綺麗なダンサー達が綺麗な演目を踊るだけですが、このガラは迫力が凄まじく、全幕を見ているかのような満足感でした。

【ル・グラン・ガラ感想】

1番手のチャイコフスキーパドドゥはレオノール・ボーラックが超カワイかったです。ピンクの衣装がまるで金平糖みたいです。さすがエトワールだなと思ったのが、可愛くて上手なだけで無く、まるで音と戯れているかのように見え、観客を退屈させません。バランシンのストーリー性が無いバレエは美しさを見せつけるものが多いのですが、レオノールとトマ•ドキールが踊ると、これも男女のじゃれあいに見えるから不思議です。ドキールはレオノールほどの余裕はありませんが、明るくてテクニックもしっかりしていて、今後の期待の星です。

なんと驚いたのが、2番手にマノンの出会いのパドドゥ。しかも座長のドロテがここで出てきました!円熟味を増したドロテ•ジルベールと、まだ若さが残るユーゴ•マルシャンは年齢も雰囲気もマノンとデ•グリューに合っており、自然です。この短いパドドゥなのに出会った瞬間の2人の心のざわめきがよく伝わってきました。マルシャンのステップからはマノンに惹かれる思い、アラベスクからは恋する喜びが猛烈に伝わってきて、とにかくステップの一つ一つが雄弁。2人が本当に恋に落ちたかのようなパドドゥでした。

そしてなんと次の演目にマノンの寝室のパドドゥ。またマノンかと思いましたが、幕が開いた瞬間フリーデマンが爽やかすぎる!マルシャンとはまた違う恋するデ•グリューがそこにはいました。リュドミラ•パリエロはコケティッシュで本当に魅力的。このペアもマクミランの複雑なステップを難なくこなしており、物語に引き込む力が凄いです。寝室のパドドゥなのでキスシーンもありますが、まあなんてエロティック…😍 
激しい呼吸まで聞こえてきて、見ているこちらがドキドキしてきます。今まで色々なバレエを見てきましたが、エロティックさNo. 1です。あまりの迫力に観客も大喝采でした。

2組のマノンにグッと引き込まれて、これ以上のものは見れないと思いましたが、次のIn the middle somewhat elevated は振付も雰囲気も全く違く、一気に別世界に引き込みます。スタイル抜群のスクダモアとペザールが演じるから尚のこと異世界です。

さして第一部のトリは、今回のお目当てのアマンディーヌとマチューです。いやー、もうアマンディーヌが演技派すぎて凄かったです。Aプロの恋するタチヤーナとは打って変わり、オネーギンからの手紙に苦悩する様子、オネーギンの気持ちを受け入れたいのを抑える様子、オネーギンが去ってしまった後に苦悩する様子、全てを表現しており、見ているこちらは涙が出てきました。アマンディーヌはテクニックもすごいけれど、演技も凄いです。来日公演、絶対にアマンディーヌの回を取りたいです。
1幕は演目のチョイスも構成もとても良く、この時点で私は大満足でした。

2幕は我らがクララ・ムーセーニュちゃんとニコラ・ディ・ヴィコのパリの炎。濃厚な演技を披露したエトワール達の演目とは打って変わり、若さを生かしたフレッシュな内容が可愛かったです。クララちゃんはこの日も1演目のみ。このガラはおそらく階級や立場によって選べる内容が違うんだろうなと推測。クララちゃんが昇進して、今後もっと色々な姿を見せてくれることを祈りましょう!
音のトラブルとかありましたが、可愛くて若さ溢れるジャンヌでした。2人の雰囲気と年齢にとても合っていて、中だるみもせず、楽しめました。

ビアンカ・スクダモアとトマ・ドキールの「コンチェルト」は幻想的な照明、2人の美しいスタイルを存分に生かした衣装もあり、美しかったです。が、正直ちょっと長いと感じてしまいました。2人とも綺麗なんですが、Aプロでマチュー・ガニオとレオノール・ボーラックが見せてくれた、シンプルな衣装でも会場の空気を変えるほどのオーラはなかったかな。美しいスジェの2人の今後に期待です。

次のマチュー・ガニオとリュドミラ・パリエロの「ヴィヴァルディ・パ・ド・ドゥ」はさすがエトワール。まず美しさとオーラが桁違いで、どんな難しいパもリフトも軽くこなしてしまいます。オペラの歌声に合わせて動く2人がとても美しく、見ているこちらはうっとり。緩急あるパドドゥなので、飽きもせず、じっくり楽しめました。前回のダイヤモンドはとても色っぽかったけれど、このパドドゥは哀愁漂う感じでした。エトワールって本当にすごいです。

1幕では爽やかな恋するデ・グリューを見せてくれたフリーデマン・フォーゲルは話題のマルコ・ゲッケ作品で豹変。人間の体ってこんな風に動かせるんだな、人間じゃないみたいな動かし方にダンサーってすごいと思いました。実はキャスト表をよく見ておらず、高身長と手足の長さで最初はオードリック・ベザールが踊っているのかと勘違いしていましたが、オードリックにしては体が柔らかいと思ったらフリーデマンでしたw 照明暗くて顔見えなかったんだわw。
そしてフリーデマンと並ぶ美の女神レオノールが登場。よく分からん作品でも美男美女が踊ってくれると、見ているだけで眼福。やっと終わったと思ったら、まだ続くんかい!という長時間ものでしたが、途中でマッチを擦って火を付けたり、煙をうまく反射させていたりなど、テーマはよく分からないけれど面白かったです。長かったけれど、美男美女が演じれば誰も文句は言いませんw

今回のお目当てアマンディーヌ・アルビッソンはオードリック・ベザールと椿姫の鏡のパドドゥを踊りましたが、鏡!鏡ボケボケやんけ!鏡が全く機能しておらず、その辺のアルミホイルの方が使えんじゃね?というレベルでボケボケ。せっかくサイド席に座ったので、アマンディーヌの顔が映ってはいるけれどよく見えないw
アマンディーヌの演技と技術は絶品。何を演じさせても上手です。そしてオードリックですが、リフトするとき手が震えとるやーん!見てるこっちがハラハラします。オードリっくは長身で堅気な雰囲気のハンサムさんですが、アルマンにしては落ち着きすぎている気もします。まぁ2人で踊っていると美しいからヨシとしますか。
ちなみにオードリックはAプロでは白鳥の湖も踊っていましたが、今回のガラではキャリアを推し進めていくべく、オペラ座で人気の演目をあえて踊らせたのかなという印象を受けました。チョイスが愛に溢れてますね。はい。

さて、Bプロの大トリは座長のドロテです。このガラではパートナーのシャッフルが何度もありましたが、ドロテ・ジルベールだけは全回ユーゴ・マルシャンと踊りました。今回は背の高い男性が多く、ドロテもそこまで高身長なわけではないので、身長が原因ではなさそうですが、相性がいいんですかね。
マイヤリングは初めて見たのですが、とっても刺激的なパドドゥでした。キスどころではなく、服は脱がせるし、相手を殺そうとするし、ピストルを打つし、狂気的なものを感じました。1幕で出会いを演じたフレッシュな2人とは思えぬほど狂気的で、重苦しかったです。しかし、これだけ短時間でこの重苦しさを伝えてくるのは流石です。

今回のル・グラン・ガラはマチューとアマンディーヌ目当てにAプロBプロどちらも行きましたが、演目も構成もとても良かったです。なんと元エトワールのエルヴェ・モローがコーディネーターをしていたと知り、驚いています。演目についてはダンサー達の希望も聞いたとは思いますが、熱烈なバレエファンがいる日本の観客のことを考え、心から楽しめて感動できる構成を考えてくれたと感じました。
バレエ大好きなので、様々な公演に行きますが、近年見た中でも特に素敵なガラでした。オペラ座の来日公演も楽しみです。

【良かったところ】

①粒揃いのキャストにオペラ座ならではの演目
②演目数が多く、とても充実
③立っているだけで美しく、夢のような時間を体験できた

【改善してほしい点】

①ウェブサイトが酷すぎて前売券をどこで買うか分からなかった
②グッズが少ない上にデザインがイマイチ
③カーテンコールの撮影ルールが意味不明

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?