【旅ごはん・散歩ごはん】 埼玉県 東北道羽生PA(上り) 鬼平江戸処・五鉄

池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」が好きだ。その中で主人公の鬼平こと長谷川平蔵が食す料理の描写がいかにも美味しそうに描かれている。また、ドラマ化された作品でも鬼平を演じる中村吉右衛門氏の食事シーンが秀逸で、劇中に出て来る食事、特に劇中で鬼平と配下の密偵達がしばしば集う五鉄という店で供される軍鶏鍋は機会があれば是非食べてみたいと思っていた。しかしながら都内でもそれらしい軍鶏鍋を食べさせるお店はそうそう無いみたいで機会を伺う日々であった。

そうこうしているうちに、東北道の羽生パーキングエリアがリニューアルにより、施設を江戸の街並み風にリニューアルし「鬼平江戸処」という名称で、小説に出て来る食事を再現したメニューをフードコートで提供しているという話を耳にした。それからなかなか行けなかったが、ようやく機会をみつけ、これまた鬼平ファンの友人を伴い週末に行ってみた。

羽生は東京から東北道を走り、埼玉県と群馬県の県境辺りに位置する。折角なのでその辺を少し観光した後で夕食をそこで摂る事にした。週末の夕方という事もあり、パーキングエリアの駐車場は混む事が予想できたので、高速には乗らず、パーキングエリア外にある一般道の駐車スペースに車を停めて徒歩でパーキングエリア内へ。駐車スペースに面した店舗のファサードは江戸の商家風に揃えられ、テーマパーク的な雰囲気を出している。

セットみたいに見えるが、店舗棟のファサード


駐車スペースの目の前が江戸の世界

中に入るとフードコートがあるが、我々の狙いは「軍鶏鍋 五鉄」さん。こちらでは小説にたびたび登場する軍鶏鍋、そして一本うどんを再現したメニューがある。両方食べてみたかったので、ひとりではなくふたりで来たのは戦略的に正解。席を確保し、食券を購入し待つことしばし。

まずは軍鶏鍋。ご飯とお漬物がセットになった軍鶏鍋定食という形で提供される。小鍋に軍鶏肉、つくね、豆腐、ごぼうが煮えており、しっかりと味が染みていて美味しい。これが鬼平の愛した味かぁ、等と食べながら感慨ひとしお。

待望の軍鶏鍋

一本うどんは、丼の中に太いうどんが一本ぐるりと寝そべっているもの。うどんの太さは親指よりも少し太い程度だろうか。中心まで火を通すのは時間もかかりそうで、市中のうどん屋だとこれをお品書きに加えると手間がかかるだろう。これだけの太さだと食感はうどんというよりも餅に近いかもしれない。関東風の濃いめの出汁に浸かっているので、その出汁と一緒に味わうのだが、太さがある分歯応えも強く、さすがに啜り込むわけにはいかない。鬼平犯科帳の劇中ではせいろに載っているとあるのでざるうどんのような形で供されたのかと思うが、出汁に浸かっているほうが食べやすいかとは思う。

一本うどん 

売店で売っているのも鬼平犯科帳、あるいは江戸に由来しているものばかりで羽生といった土地柄を感じるものはほぼ見かけなかった。パーキングエリアというよりは小さな江戸のテーマパークといった感じで、鬼平ファンは一度食べに来ると愉しいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?