ヴァンフォーレ甲府の試合で感じたJリーグの温かさ

2023年秋、僕は2度国立競技場へと足を運んだ。今年、J2リーグで戦っているヴァンフォーレ甲府の歴史的戦いを応援するためだ。

ここ数年はJ2リーグで戦っているヴァンフォーレ甲府だが、昨年はリーグ戦でなかなか勝ちきれない一方、カップ戦の天皇杯では快進撃を繰り返し、10月に行われた決勝戦でサンフレッチェ広島に勝利し優勝するという、想像もしていなかった快挙を成し遂げた。この優勝を受け、ヴァンフォーレは今年、J2と並行してACL (AFC Champions League) というアジアのクラブチャンピオンを決める大会への出場権を獲得した。

ヴァンフォーレ甲府は名前の通り山梨県エリアをホームタウンにしているクラブだが、山梨県は人口も経済規模も小さく、クラブを余裕で支えられるような大手企業やスポンサーは無く、街のクリーニング屋やパン屋がスポンサーとして、ちりつものようにクラブを支えている。当然クラブの運営規模も小さい。ある意味応援したくなるクラブである。そしてこのヴァンフォーレ甲府は1965年設立なので僕と同い歳という事で応援している。機会があれば、といっても年に数試合程度だが、ホームの甲府や東京で試合がある時には観戦に行くのだが、いつも熱い試合を見せてくれる。2012年にはJ2リーグで優勝し、J1昇格を決めた試合もスタンドで観戦していた。実はチームにとって、二部リーグとはいえ全国レベルの大会で優勝したのは初めてだった。2012年の優勝は二部リーグだったが、2022年の天皇杯優勝はその過程でJ1の強豪に競り勝って掴んだもので、本当に日本一の座を掴んだ快挙であった。

という訳で、2023年の秋にACLが始まったのだが、その第一節はアウェイでメルボルンと0-0で引き分けのスタートを切った。予算が少なく、アウェイではエコノミーでの移動を強いられているチームがアウェイでオーストラリアの強豪と引き分けた事は嬉しい驚きであった。

そして第二節、10月4日にタイのブリーラムとのホームゲームを迎えt。舞台は東京の国立競技場。ヴァンフォーレのホーム、甲府のJITリサイクルインクスタジアム(小瀬スポーツ公園陸上競技場)は設備面でACLの開催基準を満たしておらず、特例で国立競技場を借りて戦う事となった。甲府のスタジアム整備については、山梨県の行政に対して言いたい事は山ほどあるが、それはまた別の機会に。

さて、本来はホームタウンで開催したほうが地元のサポーターが集い易いのだろうが、東京で行われるとなれば、応援に行かないわけにはなるまいとスタジアムに足を運ぶ。スタジアムに近づくにつれヴァンフォーレのユニフォームを着たサポーターも多く、気分が高まる。
ホーム側の席に着くと、いつものリーグ戦と違う光景が目に付く。ヴァンフォーレのレプリカユニフォームを着たサポーター以外にも、多くのJリーグチームのユニフォームを着たサポーターが大勢いる。鹿島アントラーズ、清水エスパルス、ファジアーノ岡山、ジュビロ磐田、東京ヴェルディ、川崎フロンターレ、セレッソ大阪、サンフレッチェ広島、FC東京、栃木SC、その他本当に大勢のライバルチームのサポーターのユニフォームが客席を席巻しヴァンフォーレを応援してくれている。どうやらヴァンフォーレ甲府が都内の駅等に他のチームサポーターに力を貸してくれと言うお願いポスターを掲示し、それに応えて多くのサポーターが詰めかけてくれたようだった。

ブリーラム戦 スタンドは一層のみ開放。11千人超の観客数

試合は大きくピンチを迎える事もなく、ヴァンフォーレが押し気味に試合を進めるも終盤までスコアレス。しかし、Jリーグ連合のような熱い応援が実り終了間際に得点を奪取し、1-0で国際試合初勝利という、クラブ史上初の快挙の瞬間に立ち会う事が出来た。得点の入った瞬間のホームスタンドの盛り上がり、各チームサポーターがハイタッチし合う模様を見て胸が熱くなった。試合終了後もスタンドは大盛り上がり、様々なクラブのユニフォームを着たサポーターがヴァンフォーレのチャントを唄っている。

ヴァンフォーレをJ(J2)代表として応援してくれている

11月8日、僕は再び国立競技場に居た。ブリーラムへの勝利の後、ヴァンフォーレはアウェイで中国の浙江FCに0-2と敗北し、今日はホームでのリベンジマッチ。スタジアムには今回も大勢のヴァンフォーレサポーター、そしてありがたい事にこの試合にもJリーグ各チームのサポーターが集っている。試合は開始間もなく先制、前半終了間際に追加点という理想的な展開。全体的に主導権を握り、J2とは思えないような堂々たる戦いぶり。後半開始早々PKで一点を返されるもすかさず3点目。そして終盤にダメ押しまで決めて4-1で完勝。こんなに強いヴァンフォーレを国際試合で観られるとは。スタンドも大盛り上がり。


浙江FCに快勝!

ヴァンフォーレの勝利は勿論嬉しかったが、それ以上に、大勢のJリーグ各チームのサポーターがヴァンフォーレをACLに出場する日本の仲間として応援してくれたのが嬉しかった。リーグ戦では勿論ライバルで勝敗を争う相手だが、こういう試合で共に応援してくれる存在、Jリーグというのがヨーロッパのような殺伐とした空気ではなく、スポーツとして愉しむ事をしっかりと根付かせている事が嬉しかった。

そしてあと一試合、メルボルンとの試合が東京であるので、そちらも応援に来なければ、と思った。

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