キスしてる奴らがいた

 パワプロでいうと紫色のグズグズなスライムの状態でこの1週間過ごしていた俺は、風邪が治らず絶不調である。やっぱりこう、お肌がハリを失って(?)ファンデーション(?)の乗り(?)も悪い(?)な。ゆるふわモテカワ愛されメイク(?)で春のオシャレ(?)も一歩リード(?)だからな。

 風邪って普通どれぐらいで治るもんなんですかね。俺はいつも1週間ぐらいはかかるだろうか。それでも風邪ぎみの状態はもう少し続く。

 だから風邪ひいたときに「1日だけ休む」ことの意味が全然わかってない。朝、目が覚めて、ああこれはダメだな。「今日休みます」と電話する。1日ゆっくりするだろ。

 翌日、目が覚める。
 なんっにも変わってないぞ。昨日と完全に同じ状態なんだよ。

 理屈から言えば今日も休まなきゃいけないだろ。でも周りの連中は1日休んだ俺を、なんなら「普通より元気」ぐらいに思ってる気がするから一応行かないと。
 で、行くだろ。1日頑張って、帰ってきて寝るだろ。

 翌日、目が覚める。
 おいこれ最初より悪くなってねえか? 休んだ意味はなんだったんだ。

 今回は喉が終わって本当にヤバい病人みたいな声になった。それ以外は普通だ。こういうときは周りが過剰に心配してくれる。明らかに「病人っぽい」からだ。

 こういうときいつも思うが、外から見るとなんともない病気のときは本当に損するな。俺はおそらく痛風の影響で、足首の関節に小石が挟まったような感覚で、一歩歩くごとに激痛が走る状態になったことがあるんだが、腫れてもないし折れてもないから、周りの反応ときたら「そんなに痛いの?(笑)」みたいな感じだった。いっそ折れた方がマシなんじゃないかと思った。みんな病気の自己申告を信じなさすぎだぞ。「まず疑う」クセは「水素水」とか「マイナスイオン」とかに存分に発揮してくれよ。

 1日中ベッドで寝転がりながら、うっすらエロいことばかりずっと考えていた。病気のときはうっすらエロいことを考えるのが一番だ。これはみんなそうだと思う。男はみんなそうだよな? な!! わかるわ〜。男はみんなそうなんですよ皆さん。

 2デニールぐらいの薄さでいい。「大(だい)エロい」ことは受け付けない。
 「うっすらエロい話だけを聞こう」と、スケベ犬養毅の構えで数日過ごしていた。男はみんなスケベ犬養毅なんですよ。な!! 男はみんなそうなんですよ皆さん。

 で、スケベ犬養毅は〜、「犬養毅」なんですよ。犬養毅は、スケベなんですよ。たぶんね。これには青年将校も怒りますよね。問答無用ですよ本当に。
 R.I.P. 。 R.I.P.だね。令和は平和だよ犬養首相。

 半年ぐらい前になるか、秩父に旅行に行った。「秩父ミューズパーク」という、なんだろうなあれは、テーマパークと公園を足して2で割って、そんで8を掛けて、4で割って、「え、え? それ覚えたら、ボイルシャルルの法則使うタイミング無くね?」って思って、「あ、ああそんなことないわ」って思って、2を足して、で、それが4? 4だよな。4なんですよ。

 でそれが4だったんですけど、でなんだっけそれが。4ってなに? えーとわかんないわ。ああわかんない。もういいかこの話。

 で、そこに行ったんだけど、木の上に登って遊んだり、ゴーカートとかバギーとか珍しい自転車とかに乗れる最高に楽しい施設だった。カインズホームぐらい楽しい。

 中に「ビームライフル」を体験できるアトラクションがあった。「ビームライフル」っていうのはほとんど実際のライフル銃と変わらないと思う。重量も本物感があるし、スコープも飾りじゃなく実際に使う。違うのは実弾が出ないことぐらいで、赤外線のレーザーを的に向かって飛ばして点数を競うのだ。

 このレーザーもかなりシビアで、ちょっとでも手が震えたりすると明後日の方向に飛んでいく。だからスナイパーさながら、狙いを定め、息を止めて、スコープの中心が的の中心と重なった瞬間を捉えて引き金を引かないと高得点が出ない。

 何年か前、友達が都内にあるビームライフルの練習場に取材に行ったらしい。そこは早稲田大学のライフル部かなんかが練習に使ってるところで、その年の早稲田にはこれまでのあらゆる日本記録を塗り替えた伝説的な選手がいたらしい。その「伝説」は就職したそうなんだが、ビームライフルの実績を買われて「公には言えない機関」に行ったそうだ。そんな機関あるんだな。「内閣府暗殺課」みたいなのがきっとあるんだよ。

 つまりビームライフルはそれぐらいリアルってことだ。おもしろそうじゃねえか。ここで高得点を叩き出せば、俺も暗殺課から声がかかるかもしれない。「職業? しがない公務員ですよ。ちょいとばかり特殊なね」って言ってみたい。やろう、ビームライフル。ぜひやろう。

 ゴルフコースみたいに、フィールド内に色々な想定の的が15個ぐらい設置してあって、ライフルを担ぎながら歩いて回る方式だった。
 「30m先に撃ち下ろす」
 「50m先の的をロングスナイプする」
 「30m先に撃ち下ろすやつのちょっと違うやつ」
 「45m先の的をロングスナイプする」
 パターンはあんまりなかった。的が動いたりはしない。

 俺たちのパーティが回ってる前には大学生らしき8人ぐらいの集団がいて、男女5:3ぐらいの比率だ。それにしても世の中には男女5:3ぐらいの比率の集団が多すぎる。残りの2はどこに行ったんだ。カインズホーム資材館か? 資材館行かないからわかんないな。

 その集団の中に「明らかに可愛い子」が1人いた。今流行りの言葉で言うと「森ガール」みたいな感じだ。森にいそうな女の子のことだ。と言ってもハグリットぐらい森の奥ではない。どこにも存在しない浅い森だ。

 ワイワイ盛り上がってる集団の後ろを、ニコニコしながらその森ガールはついていっている。なんかこう余裕たっぷりだ。ワイワイには距離を置いた「清楚系」の感じだ。おおなるほど。まあな。でもそういう奴に限ってな。限ってなんだよなあ。と思いながら、見るともなしに見ていた。

 ワイワイした集団から、1人の男がスッと抜けた。ものすごいさりげなさだった。いつのまにかエアコンの設定温度を変えてる奴ぐらいさりげない動きだ。

 男はこれといった理由は無いがどういうわけかモテる感じの奴で、さほど寒くもないのにロングコートを着てるタイプのファッション先行型の風体だった。こういう奴がエアコンの設定温度を勝手に変えるのだ。ロングコートを脱げよ! 男はスッと森ガールの左後ろにピタッと着いて、無言で2人が並んだ。

 ははん、なるほど。みんなに内緒で付き合ってる感じか。はいはいはい。まあね。2人は肩が触れ合うような距離感で並んで歩いている。先行するワイワイ集団は気づいていない。
 もう厳しい審判だったらファール取ってるところだけどな。内緒にすんなよそういうことを。気い使うんだよ。まあまあ、俺らも関係ないからファールは出さなかった。ワイワイ集団にアドバンテージだ。次、変な動きしたら試合止めるからな。

 と、不意に男は、森ガールの左肩をトントンっと叩いた。

 森ガールは首だけを男の方に向けて2人は見つめ合う。

 チュ。……、チュ。

 2回ほどさっぱりしたキスをして、2人は照れ笑いを浮かべながら、また集団に着いていった。集団はワイワイしたまま全く気づいてなかった。

 おいおいおい!! カードカードカード!! 主審試合止めろ!! マイボマイボ!!!
 フリーキックだよ! フリーキックさせろ!! おいカード出るぞおい!

 なんだあれは。俺たちは全員男の5人組だったんだが、とんでもないラフプレーを目の前で見せられて顔を見合わせ呆然としていた。

 「なんかエロかったな」
 「なんかエロかったっすね」

 なんか悶々とした感じと、何かに対する漠然とした怒り、何に対してかな、「自由の無い国家」にかな、だけを残して、大学生の集団はずんずん歩いていった。

 「自分もそういうことしたことある!」と思った人は大いに反省しなさい。ファール取ってるからな。ドス黒いベッタベタなカード出してるからな。家でやりなさい。家で。でもなんかエロかったわ。それはそうだわ。

 この話から言いたいことは、ありませんね。家でやってください。それだけを言うために今回書きました。ありがとうございます。

 今となっては良い思い出である。

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