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老親介護問題 兄弟姉妹で対応するなら


親がだんだん老いていく。
弱っていく。定年女子として誰もが感じている問題。
そんなことはわかっちゃいるんだけど、つい親に「キーーーッ」っとなる。ガミガミ言ってしまう。怒鳴ってしまう。
そして後から、優しくできない自分に対して落ち込んでしまう・・・。

老親の問題というのは、介護が必要であろうがなかろうが、親がだんだん弱っていくのを、子どもがどう見るか、どう向き合うか、ということそのものだと感じます。

これが他人なら、まだ簡単なのです。
相手は高齢者ですもの。「お年を召して大変でしょう?」という気持ちで優しくできます。
でも親となると、なかなかそうはいかない。
親だからこそ、つい感情が先走る。
しっかりしてよ、何やってんのよ、忙しいのに来て「あげた」のに、
…という何とも面倒な感情、厄介なところです。

しかも、兄弟姉妹がいればいろいろ。
親の方も、わざわざ他の兄弟姉妹のことを「○○ちゃんはよくしてくれた」と言ったり、こっちが会いに行っているのに他の兄弟姉妹に会いたがってみたりするなど、イラつくこともあります。
仮に、兄弟姉妹で諸々分担しながらやっていけるとしても、親についての理解度や関わり度によって、情報共有の難しさがあります。

まあ、兄弟姉妹がいないひとりっ子なら共有する面倒くささがないでしょうが、ひとりっ子は分担する人も頼れる人もなく孤軍奮闘。忙しい時もあるし、自分だけではどうにもならないときもあるでしょうし、どちらがいいやら。
ここでは、子どもである兄弟姉妹が分担する場合にどうするとよいのか、私の経験から参考になりそうな方法をいくつかご紹介します。

大事なことは情報共有、まずはLINEを使って

私の場合、両親は老夫婦二人で暮らしていました。
最初は様子伺いだけだった訪問が、だんだん親が老いて弱るにつれて、「行かねばならない訪問=世話」へと変化していきました。
私は三姉妹。親のことはできるだけ姉妹で共有しながら進めました。
実家に「行かねばならない」タイミングも、姉妹で分担したり交代したり、と。
そこで一番大事なのは、情報共有でした。
グループLINEを使って連絡を取り合い、いつ、誰が行くのか、行って何をする(した)のかを常時共有していました。
実家に行けば親の様子を撮影し、グルーープLINEに画像をアップします。
今日はどんな具合だった、何を食べた、どんな話をした、喧嘩した、など。
後日親から聞くことがあっても、姉妹で共有しているので、無駄な誤解は起きにくくなります。行った日に終わらせることができなかった用事も、次に行く人に引き継げるので、実家に行くのがたとえ短い時間であっても、作業や事態が進みやすくなります。

親の保険証も診察券も画像としてLINEグループのアルバムに保存して共有します。
もちろん病院に行く際には持参が基本ですが、ケアマネやヘルパーから番号を教えて、と電話連絡が入ったり、更新の時期に確認が必要だったりと、突発的確認せねばならないことがあります。誰かが持っていると、結局その人に問い合わせや面倒が集中して負担が大きくなるので、保険証と診察券は親の住む家で置き場所を決め、持参するときはそこから持ち出し、帰宅後は元に戻す形にし、できるだけ姉妹での情報共有を心がけました。

親関連のスケジュールも共有

親の病院の予約などもスケジュールアプリで共有。これをやっている人は多いようですね。
いろんなスケジュールアプリがありますが、私たちは、共働きの子育て夫婦に人気の「タイムツリー」を使いました。介護も子育てみたいなもの💦
たとえば病院の付き添いなどは、常にそれを見ながら調整するのです。
私はふだんはGoogleカレンダーを使っているのですが、そこに親のスケジュールが入ってくるとうるさくなるので、「タイムツリー」にGoogleカレンダーを連携させてダブルブッキングを防ぎました。

このやり方は、いちいち報告・連絡・相談で、まるで仕事のよう。もはや姉妹間での「親の介護プロジェクト」です。
とても面倒なんですが、急に人が入れ替わっても大丈夫な形にするには、これが絶対に大事なことでした。

できれば自費サービスも活用したい

それでももちろん介護にはいろんな突発事項が入るので、調整できず誰も行けないときもあります。もうそのときは自費でヘルパーさんを手配しようと、姉妹間では覚悟しました。
しかしいざ段取りを進めていくと、これがなかなかうまくいきませんでした。親は、他人の手を借りることを極端に嫌がり、そういうことなら自分でなんとかする、と言い張るのです。「お前たちの世話にはならない」と。
できないくせに。
老いた父は母に何とかしてもらうと言い、母ができそうにないとなると、できもしないのに自分で何とかすると言う。でも私たちも親のところに行けない。
そこで私が(あるいは妹が)「キーーーッ」となる(苦笑)。
そんな繰り返しの日々でした。

親にとっては、子どもの手を借りることは平気でも、他人の手は何としても借りたくない。特に父は、病院にプロ(=他人)と思われる人に同行してもらっている人を見ると「あの人、家族がいないのかね?!」とよく話しており、他人の手を借りることを少し惨めなことと捉えていた節があります。昔に比べれば、世の中はずいぶん変わってきたとは思いますが、沁みついた親の古い価値観をどうやって変えていくのかは難しい課題の一つですね。

さらに、この自費サービスをどこが提供してくれるのかがわからない。インターネットで探してみつかっても、サービス提供が地域外なこともしばしば。結局一番いいのはケアマネに相談することでした。「自費でいいから」と探してもらうのですが、これもなかなかみつからない。一番の課題は、人手不足でした。
あらかじめ立てられたケアプランをもとにサービス提供される介護保険内のサービスと違って、自費サービスの場合は単発なので人員配置が厳しいのです。我が家の場合は、結局、日ごろお世話になっている介護事業者のスタッフさんが隙間時間をやりくりして自費サービスとして対応してくれることが多かったです。親にとっても顔なじみなので好都合でした。それでもどうしても手配ができない、というケースもしばしば。
今、私が住んでいる地域では、ボランティアセンターなども、この介護保険外のサービス提供者の一つとして機能しています。特にボランティアセンターに登録している人たちは傾聴スキルを学んでいることもあり、高齢者を一人にしておけないときや話し相手の場面などには有償ボランティアとして力を発揮しています。
最近は介護保険外のサービス(自費)を提供する新しい事業者やサービスが次々と始まりつつありますが、保険外はどうしても都会に偏りがち。郊外に暮らす私の親の時には、ネットで探した自費サービスは、ほぼ地域外で全く使えませんでした。郊外ではまだまだ利用しにくそうです。

メールで兄弟姉妹に同時連絡を依頼

親が弱り、要支援/要介護など、介護認定が付くようになると連絡窓口はケアマネ(ケアマネージャー)。
その連絡の基本は電話。この電話の内容を、兄弟姉妹に共有するのはとても大変な作業でした。面倒だからそのままにしておくと、情報共有ができないまま事態が進行し、兄弟姉妹での分担も容易じゃなくなります。
ケアマネの方も話が通じない人に電話をしてもしょうがないから、益々その人に連絡するようになり、負担は1人にのしかかっていきます。

そこで、我が家ではケアマネさんに、連絡はメールを基本に、それも兄弟姉妹全員の宛先にと、お願いしました。
最初はなかなか大変でしたが、我が家の場合、結果的にはこれはとても有効でした。早めに事態を予測しやすくなり、仮に私が忙しくてメールに気づけなくても、気づいた妹が返信をしたり、急ぎの電話対応をしたり、誰かがすぐに実家に駆け付けたり、という流れにつながりました。
介護関係業界はIT化が進んでおらず、これをお願いし、徹底してもらうのは実際はとても大変です。一度はうまくいってもすぐ電話に戻ってしまったり、全員にと言っているのに一人にメールが来たり。それでもあきらめずに何度もお願いし、少しずつ徹底されるようになったのですが、結果的にはこれはとても有効でした。自然に姉妹の情報共有につながり、分担が進んだのです。
私たち利用者はケアマネを自由に選択できるのですから、メール連絡にも対応してくれるケアマネ・事業者を選ぶこともありかと思います。

「担当者会議」には誰かが敢えて出席する

デイサービスや家事支援、訪問介護、福祉器具のレンタルなど、介護サービスは一つ一つが契約で、書類もたくさんあります。これが全部紙で、しかもハンコを押さなくてはなりません。
最近は子どもが離れて暮らすケースが多いだけでなく、コロナ禍もあって、今はこのような契約も郵送で、というケースがきっと増えたでしょう。

通常、介護保険を使う場合は、どんなケアプランで進めるかを本人と事業者で確認するため、親(本人)に関わる介護事業者が親(本人)のもとに集まって情報共有するための多職種連携「担当者会議」があります。
うちの場合は、家事支援、入浴介助、訪問看護、訪問マッサージ、訪問薬局、福祉機器業者(お風呂用の椅子、ベッド横の手すりなど)にお世話になっていたので、「担当者会議」にはこれらの事業者が利用者(親)の家に集まるのです。
そこに親(本人)がいることは必須なのですが、我が家では親(本人)だけでなく私たち子どもの誰かも、都合が合えばできるだけ顔を出すようにしていました。事業者との契約書のサインやハンコもその場で済ませました。
ケアマネは忙しい家族にも、理解が曖昧な高齢者にも、慣れているので、たとえ行かなくても「進めておきますから」と言ってくれます。
親も「住所と名前を書けばいいのね」「ハンコはここに押せばいいのね」と言って書ける限りは、誰も立ち会わなくとも進められないことはありません。

親が自分でしっかり契約できるうちはいいですが、それもだんだん難しくなっていきます。離れて暮らす家族の場合は、それらの契約書は郵便でのやりとりが、一般的です。
ただ、このように一堂に揃うタイミングは意外に大事な機会と私は思います。私たち子どももそう頻繁に親の家に行けるわけではなく、介護事業者の人と会うことも実際にはほとんどありません。それでも、この「担当者会議」は、親の介護保険に関わる事業者が全員が揃う場。直接会えば、いざと言う時のお願いも御礼もクレームも言いやすくなるものです。親の癖や志向等もそのときに伝えられます。日ごろ一緒に暮らしていなくても、子どもがきちんと立ち会う姿勢を事業者の皆さんに知ってもらうことは、緊張感を保ちつつもいざと言う時の安心感につながるのではないかと思います。
そういう意味で、誰かが立ち会うのは大事なことと捉えていました。

介護度が低い時が一番大変、新しいツールを活用する

老親の介護で一番精神的に大変なのは、親が要支援~要介護1・2程度までの時期だとケアマネに言われたことがあります。それは本人も家族も。
介護度がそれ以上に重くなれば、ある程度路線が決まってくる。それまでの経験の積み重ねで気持ちの上での覚悟もできてくる。
でもこの段階は、介護保険の仕組みも介護サービスの種類も、本人も家族もあまりよくわからず、親の方は弱気になったりわがままになったりして(子どもの目からはそう見える)、子どもの方はこれから親がどうなっていくのかの予想がつかず、仕事などがこれまで通りのペースで進められなくなり、妙に振り回される時期。
だからこそ、兄弟姉妹の情報共有が大事なのだと思います。

コロナの前でしたが、我が家の場合はオンライン(Zoom)を活用しました。夜中に姉妹でたびたびZoomで相談をしました。
うちは3姉妹だったので電話で同時にしゃべることを考えると、Zoomは好都合だったのです。お風呂も済ませ就寝前のパジャマの状態で夜な夜な相談したものです。
おかげでコロナ禍でのZoomには全く抵抗感がなかったです(苦笑)。

キーパーソンを決めて全権移譲する方法も

上記は我が家のやり方ですが、まったく別な方法として、誰か一人キーパーソンを決めてその人に全権移譲する、という家族もあります。
そのかわり他の人は後から文句は言わない(言わせない)というやり方。どちらかと言えばこちらの家庭の方が多いかもしれません。
連絡はキーパーソンに集中させ、キーパンソンが独断で決めることもあるし、キーパ―ソンから兄弟姉妹に相談が持ちかけられ、そこで協議するなど。

子どもが全員フルタイムで仕事をしていたり、そうそう自由に動けなかったり(連絡対応できなかったり)する場合、このキーパーソンを誰かが引き受けると負担感が大きくなってしまいます。
仕事をしていない人がキーパーソンになるケースも多いのですが、そうなるとヒマだろうからと何から何まで押し付けられて相談もでいなくなったりする人もいるので、注意が必要と思います。

親の介護に関わる費用を子ども側が負担する場合には、お金を負担する者と、実際に動く者とで、役割分担する、という家族もあります。

兄弟姉妹の関係や家庭によってどんなやり方がいいかはいろいろ。
ただ、親の弱っていく様子を知り、その時期のまわりの大変さを知ることは、やっぱり大事なことではないかと私は思います。
すべておまかせや、丸投げではなく、せめて状況を知っておきたいもの。
それは自分自身の将来を考える上での参考になることはもちろんこと、その後訪れる親の相続など、死後事務手続きを進める際のトラブル軽減にもつながるのではないかと思います。

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