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読書メモ「生涯学習のグローバルな展開」

#読書感想文

「生涯学習のグローバルな展開: ユネスコ国際成人教育会議がつなぐSDG4の達成」長岡 智寿子・近藤 牧子

12年に一度開催されるユネスコ国際成人教育会議(第7回)が6月に開かれるにあたり、2月5日に開かれたナショナルミーティング「社会教育・成人教育の課題と展望~おとな・ユースの学びを取り残さない」に参加したあと、「ユネスコ国際成人教育会議」が気になり、この本を取り寄せました。

キャリアコンサルタント養成講座を受講していて、生涯学び続けることって大切なことですが、キャリアアップや転職に強く結びつけてしまうことに違和感を持っていました。私はもともと教育系の人間だからかもしれませんが、そのあたりの疑問が本書を読んで、整理がつきました。

成人教育とは

Adult Education and Learnig あるいは Adult and Youth Education and Learnig を「成人教育」と訳し、日本では社会教育および生涯教育・学習の領域に含まれる。
今年の6月に開催される「国際成人教育会議」の第一回は、第二次世界大戦後の1949年に開かれている。
会議では、世界の平和に向けて国家間の寛容や国内の民主主義や、人々のコミュニティを推進することが成人教育の役割とされ、それ以降、12年に一度開催されているという。
「世界の平和に向けて」かぁ。世界を揺るがす事態が起きているタイミングで、12年に1度の会議が巡ってくるとは…考えさせられます。

みんなに教育を「Education for All(EFA運動)」

1990年にタイで「万人のための教育世界会議」が開かれた。会議では、子ども、若者、そして成人のための基礎教育重視の教育支援策が検討され、その問題解決に向けて「EFA行動枠組み」が採択されたとのこと。
EFAの活動の軸となったのは「初等教育の完全普及」「識字」「生涯学習」の3点。生涯学習は、次のような考え方のもと提起された。
「人はいくつになっても学ぶ主体であり、変化の激しい社会に対応できるように、学齢期のみを学びの期間とするフロントエンドモデルではない生涯に渡る学びの必要性を求めた。」

1948年に労働省と文部省で交わされた合意により、分断された職業訓練と職業教育

「労働者教育に関する労働省(労政局)、文部省(社会教育局)了承事項」という1948年に当時の労働省と文部省で交わされた合意があるそうです。この合意により、職業訓練や職業技術教育は労働行政で、公民教育と一般教養、職業教育、レクリエーションなどは文部行政が担当するという役割分担がなされ、厚生労働省・文部科学省になった現在もその役割分担は引き継がれている。(成人教育の窓口は文科省)
諸外国では職業技術教育と職業教育は分けられるものではないという認識で議論しているので、職業技術教育の領域での国際的な議論から日本は取り残されているところがあるそうです。(文科省は担当ではないから)
う~む・・・いわゆる縦割りの問題なのかなぁ。

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本書には、職業教育を含む成人教育についての国際的な流れについて年表にまとまっていたり、様々な会議で発表された宣言の邦訳も掲載されているので、この分野に関心のある方にはお勧めです。たぶん、この分野ではこの本しかないように思います。

キャリア=職業?

キャリアコンサルタント養成講座では、受講生でグループをつくって模擬面談の練習をします。練習をとおして、いろんな方のいろんなキャリア観や今後のキャリアへの悩みを聞きました。
キャリアという言葉からどうしても職業・仕事のイメージが強く、「キャリアコンサルタントの資格を取った」と話すと、ほとんどの方に「転職の相談に乗るんだ」といわれました(笑)
わたしは教育畑の人間だからかもしれませんが、転職や再就職だけでなく、成人教育とか生涯学習の枠組みからもキャリア形成についてアプローチできるような取り組みを考えたい、と本書を読んで改めて思いました。


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