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ものづくり キャリア・カウンセリング/キャリア開発のための人事制度講座(49)

★エコキュート

 日経BP社が日本の技術の発展に寄与する目的で創設した「日経BP技術賞」が先日(といっても2005年)発表されました。
http://www.nikkeibp.co.jp/information/newsrelease/newsrelease20050325.html
 電子、情報通信、コンシューマーIT、機械システム、建設、医療・バイオ、エコロジーの各分野で、産業や社会に大きなインパクトをもたらす優れた技術を表彰しているそうですが、この中の機械システム部門では、エアコンや冷蔵庫などのエネルギー消費を3分の2に抑えることができると期待される「エジェクタ・サイクル冷凍機」を開発した株式会社デンソーの方々が受賞されたそうです(このほかに日本発明協会の21世紀発明奨励賞なども受賞しているようですね)。
 たまたま同社熱開発部室長の武内裕嗣さんの記事が出ていたので知ったのですが、この技術、鈴木京香さんが出ているCMの「エコキュート」にも使われているそうですね。
 エコキュートとは、電気で直接お湯を沸かすのではなく、自然界に存在するCO2(二酸化炭素)を圧縮して熱を発生させ、その熱でお湯を沸かすという仕組みだそうで、その筋の煽り文句だと「使用する電気エネルギーに対して約3倍の熱エネルギーを得る」ことができ、「媒体としてフロン系冷媒を使用しないため、オゾン層破壊や温暖化ガス排出の抑制につながる」のだそうです。
 昼間よりも割安な夜間電力を使用し、効率的なヒートポンプシステムと組みあわせることでランニングコストを低減できるとか(うちにも欲しいような・・・でも戸建てではないからなぁ・・)。
 ちなみにエコキュートという言葉は、エコロジーの頭に文字に「給湯」と「cute」(かわいらしい)を引っかけたものを組み合わせたとか。

★ものづくり

 デンソーの貢献は、従来のヒートポンプ(熱を発生させるところ)にコンプレッサー(圧縮機)を使っていたのを、エジェクタと気液分離器という装置を使うことで、熱発生に必要なエネルギーを3分の2にしてしまったことだそうです。
 詳細は
http://www.jmf.or.jp/japanese/energy/h15/03.html
を見てください。

 このエジェクタを使って圧力を上げるという発想は蒸気機関車に使われていたほど古くからあるものだそうですが、これを使った熱交換システムは効率が悪いために実用化には至っていませんでした。
 今回、エジェクタに更なる改良を加えて実現化に至ったそうですが、開発した武内さんは、なんとこの道10年以上。
 しかもこの道一筋ではなくて、エアコンの風速と体感温度の関係などその他のテーマも抱えているのだそうです。
 やはり日本の技術者は格好いいなぁ。

 このところ技術者というと青色ダイオードの件をはじめとして、研究開発に携わる人に組織としてどのようにこたえていくべきだろうかということがずいぶんと論議されるようになってきました。
 キャリア・ゴールといえば「部長」「取締役」「社長」くらいしかなく、「技術職・専門職=管理職になれなかった人またはなろうとしない変わり者」だった頃から比べれば本当によくなったと思います。
 もっともっと技術者、専門職を応援したいです。

 こたえる方策として、その発明がもたらした利益がどれくらいで、そのうちのどれほどを本人に還元すべきであろうかといったこともずいぶんと論議されています。
 そういったことも確かに大切なのでしょう。
 しかし、私が新聞記者をしていた時代も、そしてコンサルタントとして現場の方からヒアリングしていても、変わらず感じるのは「好きな仕事をさせてくれ」ということのように思います。
 その仕事でどれくらい稼げるかという発想は無いとはいいませんし、それが大切だと感じる技術者の方もいらっしゃると思います。
 でも多くの技術者の方は、「自分が追っかけているテーマの仕事をさせて欲しい」「それに関わる予算をきちんとつけて欲しい」「没頭できるような時間と環境が欲しい」「他の技術者と切磋琢磨できるような場が欲しい」「アウトプットをきちんと評価して欲しい(できれば専門家に)」と考えていらっしゃるように感じます。
 発明に関わる報奨金がクローズアップされているのは、「これだけ世の中の人に受け入れられ、活用される研究だったのだ」という成果をきちんと評価して欲しいという意味であるように思います。
 技術者、専門職が尊厳を持ってキャリアを全うできるように人事諸制度を整えていく必要がありますね。

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