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【ケアまち座談会Vol.1】「アートがケアに必要な理由とは?」開催レポート

2020年5月25日、21:00〜22:00、「ケアまち座談会 vol.1 アートがケアに必要な理由とは?」を、オンラインで開催致しました。

記念すべき第1回はアートについて。

第1回ケアとまちづくり未来会議のメンバーを中心に立ち上がった# SaveArtsプロジェクトのプロジェクト責任者、家庭医の年森慎一先生と、# SaveArtsプロジェクトに参加するアーティストの桜田ゆみさん、軽井沢でケアの文化拠点を作っている藤岡聡子さんにお越しいただき、ケアとまちづくりとアートの可能性を考えました。

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※前回開催、「ケアまち座談会 vol.0 なぜ「ケアとまちづくり」は必要なのか」は下記からアーカイブ動画をご覧頂けます。

当日のプログラム
・ケアと芸術
登壇者:年森慎一
・ダイアローグセッション
登壇者:桜田ゆみ、年森慎一、藤岡聡子、守本陽一
ファシリテーター:密山要用
・座談会
参加者全員

スピーカー
・桜田 ゆみ (劇作家、脚本家、演出家、サルスエラ歌手、一般社団法人日本サルスエラ協会代表理事)
武蔵野音楽大学卒業後、スペインへ留学。2001年、スペイン芸術サルスエラを通して両国を繋ぐ、日本サルスエラ協会を設立。2005年「国際ロータリー財団100周年記念専門職務奉仕賞」受賞。また日本テレビ「エンタの神様」で漫才師デビュー。09年「カンヌ国際広告祭」グランプリ受賞。脚本を務めるNHK「オペラ寄席すぱげっ亭」で2014、2017年「NHK編成局長賞特賞」受賞。2017年 スペイン国王フェリペ6世より奨励に与る。駐日スペイン大使館、海外公演をプロデュース。

・年森慎一(日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医 第1回ケアとまちづくり未来会議in豊岡運営メンバー)
1988年愛媛県生まれ。学生時代に触れた旅や様々な出会い・文化から、体の健康だけでなく、心や社会的な健康の重要さを強く感じ、「人生・家族・地域を見る専門医」としての家庭医を志す。家庭医としての勤務の傍ら、演劇、音楽、銭湯、スポーツ関係者たちと、地域の健康づくりに積極的に携わる。「第1回ケアとまちづくり未来会議in豊岡」を、実行メンバーとして運営。2020年3月、コロナ禍に見舞われる中、平田オリザ氏・桜田ゆみ氏に声をかけ、今回の「"#SaveArts"プロジェクト」を始動。

・藤岡聡子(環境福祉設計士)
1985年生まれ、徳島県生まれ三重県育ち、長野県軽井沢町在住。夜間定時制高校出身。㈱ReDo代表取締役、医療法人オレンジ 理事、軽井沢町 ほっちのロッヂ 共同代表。口癖は「なんで老人ホームには老人しかいないの?」趣味は髪型を変えること。

・守本陽一(総合診療専攻医、YATAI CAFE店長、ケアまち会議)
1993年、神奈川県生まれ、兵庫県出身。総合診療専門研修プログラム専攻医。学生時代から医療者が屋台を引いて街中を練り歩くYATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェ)や地域診断といったケアとまちづくりに関する活動を兵庫県但馬地域で行う。現在も専門研修の傍ら、活動を継続中。

ファシリテーター
・密山要用(よーよー)(家庭医、ケアまち会議)
家庭医。コミュニティドクター。時々、屋台。東京と栃木で医者をしながら、地域で「おせっかい」できる医療者や市民を育てる学習プログラムの研究開発・実践をしている。

ケアと芸術

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ケアと芸術、どんな関係があるのだろう。
その説明をする前に、医療というものが何をやっているかから説明したい。

健康の定義
健康とは病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。*1)

医療の定義
人間の健康の維持、回復、促進などを目的とした諸活動*2)

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病院のイメージは治すことに偏っている。健康の維持や促進になかなか力を裂けていない。健康の維持、促進は「まちづくり」側も主として関わりしろがあると考えている。

芸術の定義
表現者から、表現されたものを、鑑賞者が受け取って、お互いが相互作用をしながら変容するもの

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上記のように、芸術そのものにケアの要素があったり、芸術から与えられる視点自体に、ケアのヒントがある。

何よりも、「みんなが楽しめる!」ことが一番大切だ。

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過去を振り返ってみても、精神的な部分、物理的に表現できない内面的世界を、皆が分かちあえる形で培ってきたものが、芸術だと考えている。

今回、コロナ禍で芸術の支援が遅れたが、芸術は不要不急のものではなく、私たちが生きるチカラの集大成なのではないだろうか。

医療とは直接関係のない芸術だが、このような視点から、社会的処方の一つのコンテンツとして、芸術の重要性をこれまで訴えてきた。

しかしそんな中、直接人とつながりのある芸術のジャンルが、致命的な打撃を受けてしまった。

精神的、社会的な健康を謳ってきた身として、何かしたいと考えた。それが #SaveArtsプロジェクト

#SaveArtsプロジェクトの2つの目標
1.直接的な芸術家の支援
迅速な資金的援助
支援者からのメッセージをアーティストへ届ける
2.間接的・社会的支援

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「コロナ」とは、日食の際、周りにフレアとして現れるもの。コロナウイルスという名称もこれに因んでいるが、日食は必ず終わる。

身体の健康をしのいだ後、心や社会の健康を復活できるよう、世の中を支えていきたい。

ダイアローグセッション

登壇者ピッチをきっかけに、登壇者間で「ケアとアート」について対話を行いました。各登壇者のコメントを一部抜粋し、掲載致します。

桜田)
アートを大切に思ってくれていることに、救われた。心を治療してもらった感じがした。クラウドファンディングで沢山の方たちに支援してもらった。アーティストだけで立ち上げたのでは、ここまで広まらなかったと思う。沢山の人達に広がり、ケアをして頂いた。

自分自身も舞台に立つと、お客さんから元気をもらうことができる。共感という空間が「舞台」だと考る。それゆえに、無観客の舞台ってなんだろう、と考えることがある。今は、どうやってアイデアを楽しくしていけるか、皆が元気になるように何をすれば良いか、考えている。

守本)
桜田さんもアートで表現することで元気になってほしい、とおっしゃっていたが、健康をアートが与えてくれる。医者や看護師も演劇をしてみると、患者さんへの説明がうまくなったりする。ケアはアートの良い面をもってこようとするが、アートは自己表現でもあるので、尖った部分もある。その尖った部分をどうすれば良いか、皆で話してみたいと思う。

藤岡)
4月1日から小さな診療所が始まった。テーマとしては、今までやってきた成功体験を手放す。私はアートは、自己表現の一つだと考えている。患者、利用者、そして働き手全員が表現者だと思っている。今までと違った表現を、変え抜かなければならない。過去の成功体験は大事で、根本の姿勢を変えるのは難しいが、パフォーミングアーツにおける限界突破を試みていきたい。

桜田)
この現状が、舞台裏だし、演劇になる。今しか体験できないこと、きっと子供や孫へ伝えていくものにもなってくるだろう。

藤岡)
職場のメンバーは落ち着いているが、世の中がコロナウイルスでいろんな意味で”言い訳ができる状態”となってしまっていた。その時に、自分自身を動かせる原動力となるのはなんだろう、と試されていると感じた。原動力がないと、動けなくなってしまうと思う。

桜田)
例えば、お客さんから批判された悔しさなど、以前は、色々なことが原動力となった。ただ、こういう状況では、一人だと落ち込む。チームで行動することで、お互いフォローし、高め合うことで原動力を生む場合もある。演劇も、自分がしゃべるだけでなく、相手とのキャッチボールで成立する。医療の現場ではどうだろう?

年森さん)
家庭医をやるきっかけはコミュニケーション。医者になり、まず、救う方に求められた。病院で話せない人を担当することがあり、精神が削られていく気がした。その中で、医者という役割を行い、そこに患者さんが応えてくれた時に嬉しいと思えた。そのような経験を増やし、新しい価値観と出会える環境を求め、家庭医となった。そのため、コミュニケーションはとても大事だと考えている。
限界突破や歴史に残るという話があったが、物語や歴史に残るのはこういう大変なとき。ある意味、歴史に残る瞬間を感じている、物語の主人公と感じる点はアート的だと感じる。原動力は内からくるものもあるが、外からつくられるものもあると思う。

桜田)
与えられた台詞が、今の自分にとって必要な場合があるように、外からのきっかけが、自分の気づきになる、ということがある。

質疑応答


Q:アーティストの方が大変な状況にあると思うが、こちらとして応援したり励ましたりできることがあれば教えてほしい

A:身近な身内など、メンバー同士で励ますのとは全然違う。#SaveArtsで誰を応援しているわけでなく、アートを応援してくれていることが嬉しい。個人で応援してもらうのとは別にジャンルとして応援してもらえる喜びがあった。必要とされることの喜びを感じた。益々頑張っていきたい(桜田)


#SaveArtsプロジェクト

今後のお知らせ

今後も様々な方と登壇者としてお招きし、座談会を行いう予定です。

開催告知、開催レポートは、下記snsで配信致します。よろしければ、フォロー頂ければと思います。

note
https://note.com/caremachi

facebook
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#ケアまち座談会

参照)
*1)世界保健機関憲章前文
*2)Wikipedia

(執筆:小原恵美、編集:小林弘典)



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