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「自分らしさを大切に」~介護四姉妹と語るcarewillの「服」に期待すること

今回は、2021年5月に行った介護四姉妹とのパートナーセッションの後編をお届けします。介護四姉妹の長女ゆるねえさん、次女ちゅうちゃん、三女もよさんに、介護と「服」について掘り下げて伺いました。後編では、carewill創業の思いに通じるお話や、carewillのオーダーメイド服を作ることになった経緯等、carewillへの期待など、たくさんのエピソードに涙しながら伺いました。ぜひ最後までお読みください。

四姉妹と介護のブログ

前回は「めざせ人生のソフトランディング」ということで、介護四姉妹の思いについて伺っています。まだでしたらそちらもぜひご覧ください。

◆carewillと介護四姉妹の出会い


ーーcarewillについて知った時のエピソードがあれば教えてください。
もよ:Twitterを通じて知りまして、最初は深くは存じ上げなかったのですが、、、。笈沼さんが私がJINSの老眼鏡についてツイートしたことに反応してくださって(笑)
そこから笈沼さんのYouTube動画等を拝見して、創業のストーリーや製品づくり、高齢縫製者を探している活動等、あらゆる面に共感を持ちました。
その時の感動は私の個人ブログにも書かせていただいています。(笑)

◆carewillと根っこでつながる介護四姉妹の原体験とは


ーー介護四姉妹さんが在宅介護をするうえで「原体験」のようなものはありますか。
ちゅうちゃん:根底に流れる思いは、母の介護における後悔です。
母は18年前に認知症を発症し、主に父が母を見ながら長年介護していました。

私達姉妹も横から口や手をだしていましたが、父はとても頑固な人で、見当識障害のたびに母のことを強く叱ってたんです。母も叱られれば叱られるほど抵抗し、ときに父に噛みついたり、駅の自動改札を突っ切ってしまったり、家を出て徘徊して警察のお世話になったこともありました。

父はそんな母が認知症だということをなかなか認めてくれなくて。母の病気が進行し、状況がかなり悪くなるまで、病院にも連れていけなかったし、父が大声で叱るのを止めてあげられなかった。それが私達の後悔になっていて、「お母さんごめんね」という気持ちです。そこから、今の父への「人生のソフトランディング」を目指す介護につながっているんです。

もよ:笈沼さんの「原体験」にも親の介護についての後悔があると伺いました。


子が親を思う気持ちが原点になっていて、さらにお母様の縫製技能を活かしてお母様とビジネスをされている。人の生きる意欲に、服を通じて灯をともそうとされている。笈沼さんのお父様が入院していた時、お母様は、バスに乗って服を届けてられていたと。お母様は服装が生きる意欲に影響することをご存じだったし、「これではいけない」という切迫感があったんだと思います。そんな切迫感が、carewillの原点にあり、私たち四姉妹の介護の根底にもある気がします。

◆オーダーメードを依頼したきっかけ


ーーこのたびのオーダーメード服を依頼いただいたきっかけは何でしょう。
もよ:今、母のオーダーメード服を作っていただいていて、本当にありがとうございます。もともと父の服と声掛けいただいたのですが、よく考えると、父より母の方が先が長そうで(^^;)。また、母の方が服の必要性が高かったので母の服をお願いしました。

母が元気な頃、母に時々服をプレゼントしていたのですが、母はいつも色がきれいなブラウスを選んでました。当時買った「大人可愛いピンク色」のブラウスが母にとても似合っていて。でも母の腕は拘縮していてもう10年以上も前から着られなくなっていました。まして今は介護施設にいますから、母らしい装いなんてとっくに諦めていました。そこでオーダーメード服のことを知り、母が今着たい服は何だろうと考えたときに、母だったらの気持ちを姉妹で考えたんです。あれこれ考えて、「人前に出る時にきちんとして見られたい」のではないかと思いました。

例えば、母が一時帰宅するときに、車いすで介護タクシーからおりて家に向かう間、近所の人に見られた時「ああ、〇〇さんはこんなになっちゃった」と思われるのは悲しいはず。孫たちと写真を撮るときも、地味な介護服より「母らしい服」がいいはず。今コロナで帰宅がままなりませんが、時々帰宅する際、きれいな「お出かけ着」があったらよいのではと考えが行きつきました。

ーーそれで、今オーダーいただいている「ピンク色のブラウス」になったんですね。
もよ:はい。でも、そこに至るまでの間、carewillの笈沼さんと笈沼さんのお母さまとのメールのやり取りや、オンラインでの会話がありました。会話をしながら、母の気持ちにより深く寄り添うことができ、とてもいい導きをいただいたと思います。

◆「自分の母親」という視点と「介護職」の視点


ーーゆるねえさんは介護福祉士でもいらっしゃいますね。
ゆるねえ:はい。私は介護職なので、どうしても自分の母親という視点のほか、介護職の視点でも見てしまいます。介護する側としては、「ゆったりとしていてのびる服」「着せやすい服」。イメージとしては前開きのもの、頭からかぶるものなら首回りや袖幅がゆったりしているもの。無理をしてけがをさせてもいけませんし、サイズ感も大きいものが便利です。一方で、自分の母親にはきれいな服も着て欲しいと思います(笑)

ーーちゅうちゃんもケアマネジャーとして、介護現場にお詳しいですね。
ちゅうちゃん:施設では、他界された方の残した服を使うこともあります。母が行ったショートステイ先でもそうで、きれいめの服を借りたときは、母がけっこうステキに見えたこともありました。でも、母自身だったら、他界された人の服なんて着たくないだろうと思います。服は「ちゃんとして見せる」こともできるし、自分の気持ちとして「尊厳を保つ」ことにもなる。本人が健常な時に着たい「本人らしい本人の服」を着て過ごすということは、今の介護現場では難しいですが、とても意味のあることではないでしょうか。

ーー介護する側が「着せやすい」、介護される側が「着ていたい」の両立ができると良さそうでしょうか。
もよ:どんな場面で着る服か、とcarewillから質問されたのもヒントになりました。
介護の日常生活で着る服もありですが、「ここぞ!」という時にパッと着られる渾身の一枚があると、単調な日常に彩りが加わります。まさに「要介護5」という思い込みの呪縛から解かれたような気がしました。母のオーダーメード服が出来上がるのが本当に楽しみです。

◆carewillのストレスのない服への期待


ーー「パッと着られる」というのが重要ですね。
ちゅうちゃん:はい。そういえば、今回オーダーメード服のために母の施設に採寸をお願いした時に、施設の人から「サイズはうんと大きめでお願いします」とか「首はかなりゆったりで」等、やたらと念押しされました。オーダーメード服というと「着せるのが難しそう」というイメージがあるのでしょう。「一体どんな服を持ってこられるのか!?」とヒヤヒヤしている様子でした(笑)

ゆるねえ:腕も脇も全部が開く形でオーダーしているので、出来上がったら施設の方も「これなら着せられる」とびっくりするはず(笑)

もよ:介護状態でも装いを諦めなくていいのは本当に朗報。介護には「人生終わり」みたいなネガティブなイメージがつきまといますから。

ーー着る側も着せる側もストレスがない服が、ご本人の気持ちやケアの現場の何かを変えられそうですね。
ちゅうちゃん:選択肢って大事です。母の場合はもう自分の尊厳という感覚は残っていないかも知れませんが、「きちんとしている」を演出することは服によって十分可能。
服装によって「大事にされる」というか、周りの人から一目もおかれることもある。
体に不自由があっても、自分らしい服がノーストレスで着られることは、超高齢化時代の希望の光になると思います。

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皆さんの原体験と、carewill代表の笈沼さんの原体験を伺いながら、パートナーセッション中に涙を流すメンバーもいたこの回。まさにこの時作っていたお母様のオーダーメイド服についても伺ったのでした。このパートナーセッションの後、実はもよさんから、その後のお話を寄稿いただきました。次の記事では、もよさんの寄稿をお届けいたします。



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