中東のクウェート大学に留学している学生の日記です。
基本、日本の友人に向けて書いてはいますが、留学を考えている人たちの参考になれば幸いです。

9月17日　クウェート大学に初登校。

　登校のため、朝7時に寮を出るバスに乗る。本日クラス分けテストを受けることは分かっていたが、今日のいつ・どこで・どのようにして受験するのか分かっていなかったため、保険として早く出て、キャンパス内を捜索することにした。

　なぜか。クウェートの人たちは大抵適当だからである。
「インシャーアッラー、明日にはWi-Fiが繋がるよ」
と言われて四日経つが、未だに寮の部屋にWi-Fiが無い。(そのため、街の怪しい市場で買った、ひと月だいたい2500円で300Gの格安回線を使って日記を投稿している！)
　彼らはことあるごとに「インシャーアッラー、私は何々をしますよ」と言ってくれる。インシャーアッラーとは、神が望むなら、という意味だ。彼らの信仰心を示す言葉であるが、適当さの隠れ蓑でもある。
　だいいち、寮の名簿に登録されている私の名前は「マスカーリー」だ。言うまでもなく、私の本名からはかけ離れている。驚くべきことに、一文字しか合っていない。
　私は「マスカーリー」と印刷された書類にサインをすることになるのだが、私はいつも「本名」を記入している。しかし、明確に異なる名前を見て指摘するような職員もいない。

　彼らの適当さを挙げるのは、今回はここまでとしておこう。
　ただし、彼らにはしっかりとしたおもてなし精神がある。あくまで適当なだけである。道を聞けば、大概教えてくれる。その方向があっているかは別の問題なだけだ。

　バスでは、フランスからの留学生たちと居合わせた。

　最初にサッカーが話題になった。フランスの学生が、日本代表は強いと言ってくれた。それから彼は、先日のドイツ対日本の試合結果を詳細に語り出した。
　欧州勢のサッカーに関する熱意は極めて高い。特にドイツはフランスのライバル国の一つだ。そのドイツが日本に完敗したとあって、彼らの脳裏に鮮明に焼き付いたのだろうか？　"fallen Germany" と言ってニヤニヤ笑っていたのが面白かった。
　私はフランス代表の強さを賞賛した。言葉は少ないながらも、自身と誇りに満ちた反応を返してくれた。もしかしたら、フランスを誉めて貰いたいから話題を振ってきたのだろうか？

　もう一人のフランス学生は文化人類学で学士号を取ったようだ。
　「レヴィ＝ストロースは読んだ？」
と聞いてみたところ、好きだけど古い、と言われた。私の専攻分野と全く異なるため、正直なところピンとこないが、彼曰く「『力』への視点」なるものが足りないらしい。
　フーコーはその視点を持ってるのか聞いてみたところ、どうやら持っているようだ。特に『狂気の歴史』を高く評価していた。オルテガはどうかと聞いところ、
「読んでないけど、少し違う」
とのことだ。
読んでないものを自信を持って一蹴するのが彼の凄みだ。ただ、完全否定するにしても「少し」と付け加えるのが彼の良いところでもある。

・Lila Abu lughad
・Pierre coasters
・David Graeber

　これは彼がお勧めしてくれた本だ。暇な読者がいたら、是非内容を教えて下さい。

　それから彼らは、一つのことを教えてくれた。
「ここの人たちはインシャーアッラー何々する、と言う。でも本当にしてくれるかは全然信じられないぜ。」

やっぱり、みんなそう思ってるんだな。

　30分ほど経ってから、シャダディーヤキャンパスに着いた。今からランゲージセンター(マルカズ・ルガート)に向かう。

　とても綺麗でゴミ一つ落ちていない。私たちの寮とは正反対の、清潔で新しくてキラキラした空間だ。(日本人留学生の一人は寮の一画を指して「朝6時の歌舞伎町」と表現していた。)

　150分のクラス分けテストが朝9時から始まった。テストがあるということ以外、何も聞いていなかったので、対策のしようもない。

　もしかしたら来年以降の留学生が読んでいるかもしれないので、少し詳しく説明しておこう。
　イメージとしては、全体的にTOEICに近い。全ての問題が4択回答方式で、加えて課題作文がある。
　最初に文法問題と語彙問題が出てくる。文章の一部が抜け落ちていて、欠損箇所を4択で答えされられる。全語に母音記号が振ってあるので、その点は安心して欲しい。読解問題では、文章(母音記号ぬき)を読んで正解を選ぶ。リスニングは聞いた内容に基づいて、ただしい内容を選択すれば良い。
　全体的に、飛び抜けて難しい語彙は登場していないようだ。ただし、語彙が不足していると基本的に全ての領域で苦戦することになる。
　偉そうに講釈を垂れてはいるが、私はまったく出来なかった。将来の受験生たちは安心して欲しい。
　試験は2時間半に及んだが、早々にやることがなくなったので、持ってきていた抹茶ラテを飲んでから寝た。試験官も適当な人で、試験中にインスタのショートと思われる動画を見ていた。抹茶ラテを飲んだ程度で何かを言われようハズがない。フランスの学生たちは何かを話し合っていた。もうメチャクチャだ。

　午前中にはテストと自己紹介が終わり、バスで帰宅することにした。サブウェイやスターバックスなど、飲食店もあるにはあるがやや高い。寮に帰れば、無料のご飯にありつける。

　恐ろしい量のバスがあるため、バス探しは難航した。46℃の炎天下の中で歩きまわったため、少し疲れた。


　以上が私の初投稿/登校だった。やや書きすぎてしまった。午後にあった出来事についても書きたいが、今回はやめておきたい。あるいは、インシャーアッラー、続きを書くかもしれない。