【クウェート#35】カフェとジン
11月10日(金)
BMWのX5で迎えに来てくれたのは、青山先生のクラスで日本語を勉強している、ファイサルさんである。
リーダー・ルームメイトと、四人そろって出かけた。
路上駐車が多すぎて車が一台しか通れない道を越え、Salty Duck という喫茶店に着いた。
どうやらエジプト料理のお店らしい。
あっさりとした味付けが印象的だ。
奇遇なことに、ジンについてのショートフィルムを撮影しているという、ファイサルさんの友人にレストランで会った。
ジン(幽精)とは、クルアーンにも記述される精霊のような存在である。「ジンに憑りつかれた人(マジュヌーン)」という言葉は、「狂人」の意味で用いられることもある。ムスリムにとって、ジンの存在は疑い得ないものだ。
ショートフィルムの筋書きはこうだ。
とある音楽家がジンに憑りつかれた。
憑依されている間、彼はこの世のものは思えぬ音をサンプリングしていた。憑依が解けたのち、彼はその不可思議で魅力的な音の出所を思い起こそうとするが、まったく見当がつかない。
彼は憑りつかれたかのように、音を探求して各地を放浪する。
詩人はマジュヌーンであり、詩の才能はジンにより引き出されている。
そのように見なされることもあったという。
この世ならざる優れた芸術は、人間の力だけでは獲得し得ないのだろう。
他にも興味深い話を聞いた。
彼のおばあさんの家は呪われているらしく、家でノイズや声が聞こえてくるという。
「悪しきスピリットが家に漂っているんじゃないかな?」
彼は言った。
ムスリムにとって、この手の話はどのように理解されるのだろうか。今回は詳しく聞かなかったが、次に機会があればいろいろ聞いてみたい。
部屋をサイードが訪ねてきた。
彼の叔父も、ジンに憑かれたことがあるらしい。
非常に興味深かったので、2時間近く話し込んでしまった。
そのあと、ジンについて少しだけ調べた。ショートフィルムの彼のように、私もジンを追いかけたのだった。ほんの少しだけ。
11月11日(土)
8時48分に起きた。
8時40分に集合してプールに行く予定だったが、間に合いそうにない。
二度寝してもしょうがないので、書き溜めた日記書いたり、宿題をしたりした。
リーダーやルームメイトとだべった。Maher Zain の "Rahmatun Lil’Alameen"が、日本人男子学生のはやりである。
夜に勉強していると、アナスがオーツを茹でてくれた。
こいつはいつも、真夜中にご飯を作ってくれる。
先ほどまで台湾のサイと日本語で話していたので、アラビア語で話しかけるつもりが、日本語混じりになってしまった。
サイは非常に流ちょうな日本語を操る。(「N1はムリ~」とのことだが。)
言葉を切り替えるのは大変だ。
いや、真夜中で眠いから切り替えられないのだ。
はちみつをかけたオーツを食べ、満足しながら眠った。
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