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ぼくは(狂った)王さま #60

 ダンジョンから戻って来たぼうけんしゃの一党パーティがやる事と言えば、一つしかありません。そう、戦利品の分配を兼ねた打ち上げ会パーティです。

「いや、分配するような財貨など拾ってはいないが……」

 おひいさまが呻くようにつぶやきました。そもそも、さっきまで戦っていたのは自分の居城なのですから、そこから金銀財宝、絵画や彫刻を勝手に持ち出された挙句に分配などされては堪ったものではありません。

「そんな……ではアラカ君は、一銭の得にもならない危険な戦いに身を投じていたというのですか……?」

「アラカは金で動く傭兵ではない。今や立派なこのえ兵なのだ。王の城に攻め寄せた賊を排除すべく身命を賭して戦うのは当たり前のことだろう?」

「あんな王さまの住まうお城を守る為に? 違いますよね? 今の王さまが失脚して、いずれ貴女が手中に収めるお城を守る為、ですよね?」

「人聞きが悪いことを。あの城は私とアラカが住む城でもあるのだから、アラカが城を守る為に戦ったことは何の問題もないと思うが?」

 もう本当は一人でも立てるりゅうの女王ですが、まだ少し本調子ではないフリをしてアラカの肩を借りて立っていることにしました。この状況で下手に動けば二人の怒りの矛先がこちらに向けられるかもしれません。

「おひいさま、ここはぼくにしゃべらせてくれ。まずプリスにはあやまらないといけない。プリスをきょうかいに残したのはぼくの都合だから、ぼうけんで手に入れた宝物をわけてもらえる権利は当然ある。あるけど、命からがら手ぶらで戻って来たのは、ぼくの落ち度だ。本当にごめんなさい」

 めったに脱がないこのえ兵の帽子を脱いで、アラカはぺこりと頭を下げました。

「謝罪は受け入れるとして、問題は今後のことですよ。つまり……」

 プリスが人差し指と親指で、輪っかを作って問い掛けます。

「うん。二度とプリスを置いて、だまってぼうけんに行ったりはしない」(続く)

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