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60. 人生最後の引っ越しをします 2

「丘の家」から全ての荷物を移してみた。
 とりあえず寝床としてベッドを入れられるのは、窓の上にボトルを並べて埋め込み壁に漆喰とシーラーを塗り終えた(だけの)寝室2。ここの壁だってまだペンキも塗っていないし、最終的に取り付けたいミニキッチンだって何も用意されていない。でもここしかないのだよ。壁だって一面まだド開放(つまり、壁ついてないってこと)だし、ドアなんてまだまだ。なので何かの時のためにと購入しておいたピンク(ピンク!!)のシートを天井から床まで、あっちからこっちまでビチっとクマ夫が張ってくれた。なんだか不思議な気分。ベッドはいつものデカくて快適なベッドのままなのに、私の右側はピンクのシート。家具もとりあえず他に行く場所がないのでそこに置いておく感じ。

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 作りかけのキッチンにもそれなりに冷蔵庫を置き、少しずつそこで調理ができるように。洗濯機置き場にも洗濯機と、隣のパントリーに置く予定の棚を置き、一応仮のパントリーとす。

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 ガラ空きの屋内に、今まで使っていた自分たちの家具家電を入れると(そこが仮の場所であっても)なんとか居心地が変わるものだ。ああ、ここが私たちの家なのね、と。

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 ゆっくりのんびりできるはずもなく、「丘の家」の片付けに向かう。
 庭から掘り起こした薔薇の木。これにはちょっとセンチメンタルな思い出がありましてですね。この「丘の家」に住んでいた通算9年の他に、間に3年ほど都会に家を借りておりましたのよ。そこで飼っていた猫の曼荼羅が残念なことにふとしたすきにドアから出てしまい、一晩遊んだのだろうか、その帰り道だったのだろうか、家に顔を向けた位置で車にはねられてしまったのね。悲しくて悲しくて、その亡骸を小さな庭に埋め、その上に薔薇の木を植えたのでした。薔薇は一年に3〜4回花を咲かせてくれました。それを、「丘の家」に戻ってくるときにうまく掘り起こし、曼荼羅の骨も一緒に持ってきて移植しておいたのですよ。そして今、「丘の家」からArkadiaに。ちょっと待て。私が日本からメキシコにやってきたときに連れてきた初代猫ファンファン。彼はメキシコに来て一年半で亡くなり、この「丘の家」の玄関脇に葬ったのですが、もちろん、私は彼もArkadiaに連れてきました。なので、薔薇の木は曼荼羅とファンファンを一緒に葬るために。

話は長くなったが、要するにこの薔薇は薔薇としてだけではなく、ファンファンと曼荼羅の二匹のお墓でもある、というわけで。

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 それと、空気をきれいにする虎の尾とサビラ(アロエ)と、テキーラの原料になるアガベ。これらもうまく掘り出してArkadiaに移植。
 断捨離と言っていいのだろうか、それまで人と会う仕事ばかりしてきたので、マニキュアなんか30本ぐらい要らないのが出てくる。バッグももう使わなそうだし。洋服も、もう着なくなった(でも結構新し目)のが結構ある。
 隣人はばあちゃんお母さん中学生の娘。この子がよちよち歩きの頃から知っていて、例の都会の家から戻ってきてからは私のスペイン語がほどほど彼らと通じるようになったからか、よくお裾分けし合ったり、一時帰国時の猫の世話をしてもらったりとなかなかのいい関係を作ってきた。
 ちょうどコロナ禍で学校もなく、おしゃれにも目覚めてきたらしい娘のサマンサに、マニキュアやら洋服やらをあげることに。でも待て。メキシコ人もそういう時は結構気を使うタイプで、ただ物をもらうことを気にする。なので交換条件。荷物を運び出した後の家を掃除してもらい、ゴミとして出すものを彼女たちの家に移動させ、ゴミ屋さんがきたら出してもらう。その代わり、それら洋服やらをもらってもらいつつ、お小遣いも渡す。主にその作業はサマンサがやってくれるとのこと。いいんじゃない?ちょっとしたバイトよね。お母さんも喜んでた。私も嬉しい。サマンサも嬉しい。Win-win-winの関係。

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 すっかり綺麗に片付いた「丘の家」。
 この家に入った時は家具が揃っていた。家具付きレンタルの家だった。
 一度、都会の家に移る時、家主のフランシスコからその家具を全部買い取った。で、空っぽになった家に戻ってきて、また空っぽに。この12年間、さまざまなことがあった。ついこの3年前、フランシスコはまだ若いのにあっという間に逝ってしまった。私にとっては聖フランシスコで、彼がいなかったら、彼がここの家主で私を迎え入れてくれなかったら、私のメキシコ人生はおそらく数ヶ月と短いものだっただろう。血を分けた兄よりも私を支え、私を教え、私を理解してくれたフランシスコ。彼がいなくなったちょうど1年後に私はクマ夫と結婚し、そこから2年後、こうして新しい(でも割と近く)土地に家を建て、ここを出ていく。
 ガランとした部屋を見ながら、フランシスコに感謝をした。
 ありがとう。お世話になりました。

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2020年11月28日掃除も終わり、家の鍵をフランシスコの妹に返す。 

さあ。これで完全に私たちの生活を100% 、Arkadiaに移すことができた。

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