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ロースクール二週目。授業でオーラルアーギュメント(口頭弁論)をした件について

今週のTortsの授業。今学期2回目。課題のオンラインでのディスカッションでは、クラスメイトの多数の意見に対して反対意見を書いた。その議論をもとにして急きょ発表されたオーラルアーギュメント(口頭弁論)の演習も、立候補してクラス全員の前で弁論できた。以下に、ディスカッションで何を書いたかと、オーラルアーギュメントについて。

今週は課題の判例の一つ Katko v. Briney (1971)を、自分がJudgeだったら、どういう判決を下すかというディスカッションの課題がオンラインで出されていて、とりあえず判例に賛成してもつまらないので、反対意見を書いて投稿してみた。

Katko v. Briney は、誰も住んでいない農場の家を守るために、ベッドルームにスプリングガン(ボウガンみたいなやつ)を設置して、侵入者に大けがを負わせた事件。非常に有名らしい。過去の判例からも、いくら自分の所有するプロパティを守るためとはいえ deadly weaponを使うのはやりすぎだ、という意見が大勢。

とはいえ、なんとか反対意見をひねり出さないといけない。Factsに出てくる"Deadly weapon"の定義がなんか怪しいと思ったので、the ambiguities surrounding the definition of a "deadly weapon"をテーマに以下のように書き始めてみた。

"Can something truly be defined as a weapon if it is not inherently lethal?" If there exist weapons or devices that lack the potential for lethality, then these instruments would not be effective deterrents against intrusion…

要は、deadly weaponっていっても、侵入者を威嚇するために何らかの装置や武器を設置するなら、それなりのforceを使うわけで、それは武器である以上、深刻なケガや最悪死に至る結果をもたらすことはありえるのではないか。だとすると、deadly weaponの使用の禁止を促すような判決は、スプリングガンだけでなく、侵入者に対する多くの武器や装置の使用を事実上禁止する結果をもたらすのではないか。このケースの判決は、無人の家屋や土地を所有する人たちから、自分たちの資産を守るためのreasonableな手段を奪うことになるのではないか。

まあ、明らかに強引な議論で、この点に関していくらでも反論できる。実際に判例でこの点が出てこなかったのも、そもそも論点にすらなっていないから、というだけな気がする。ただ、自分としては限られた時間で、なんとか反対意見をひねりだせたのでよし。

そして、今日の朝に教授から、授業でオーラルアーギュメントの演習するよって連絡がきた。クラスを判事グループ、上訴側、被上訴側の弁護士団の三つに分けて、判例をもとに弁論するという仕組み。
オーラルアーギュメントは、複数の判事の前で、自分の弁護団の立場を主張し、判事たちからの質問(というか詰問)に応答するイベント。

自分は被上訴人の弁護団に入れられたんだけど、こちらは判例では圧倒的に負けたほう。弁論をする代表者一人を決めなければいけない。10人くらいのグループだったんだけど、先ほど言ったように、この少数派の立場で反対意見を書いたのがグループで自分だけだったので、じゃあぼくやります、ということになった。40人いるクラスで、双方の弁護団代表の2人だけしか弁論できない。せっかくのチャンス。これはやるしかない。

自分の書いた反対意見をもとに、グループから助言をもらって、オーラルアーギュメントが始まった。上訴側から弁論が始まる。開始20秒、弁護人の弁論を強引にさえぎる形で、教授が質問をしてきて、びっくりしてしまった。実はこの時、オーラルアーギュメントが何かよくわかってなくて、ただ10分くらいこちらの立場をスピーチすればいいと思っていた。だから、教授が相手方の弁論を強い口調でさえぎったときに、これはやばい、自分の番になって質問でさえぎられたら絶対頭が真っ白になってしまう、と思って緊張で汗がだらだらでてきた。

自分の番がやってきた。Good evening, your honors. […] May it please the court? という決まり文句から口頭弁論開始。自分も開始10秒で教授からさえぎられる。相手に深刻なケガを引き起こさないように武器を設置できなかったのは、なぜか。どうしたら深刻なケガを防げたと思うか。武器の使用を擁護するということは、人命より人の資産が大事だというのか、みたいな質問がどんどん飛んでくる。質問に回答している途中でも、さえぎられる。圧迫面接みたいだと思った。

自分たちは、不利な立場だし、教授の質問も厳しい質問がくることは予想できた。だから、相手の質問に対するコメントから入って (Thank you, Your honor, for allowing me to clarify my position.) 一呼吸おいて、相手の質問を利用する形で自分の立場を主張するという苦しい展開だった。例えば、個人の資産が命よりも大事なのか、みたいな質問をされて、
Your honor, of course, human safety is more valuable than mere rights in property. However, that is why our client had to face a difficult dilemma, a double-bind situation, where he wanted to protect his property with force but also wanted to ensure the safety of the potential trespassers…
っていう答えをした。要は、はぐらかしというか、どんな質問が来ても、自分の都合の良いように解釈して、ボールを投げ返すという戦略をとって20分間ひたすら耐えた。教授からは、(初めての口頭弁論だから)よくやったというお褒めの言葉。

結論として、流暢に弁論ができたわけでもなく、苦しい弁論だったけど、こういうチャンスがあるときに積極的にチャレンジしてみる姿勢を出せたのはほんとによかった。自画自賛。Casey



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