金言230:経営者の意図

今朝の朝刊1面の右肩トップ記事を覚えていますか。
オーナーのワンマン経営が順風満帆で、政財界に評価されていた当時の某私企業のです。きっかけは何かわかりませんでしたが、ある朝、ある部門の男性社員50名(本社ビルの男性はすべて幹部社員、女性は縁故採用)が社長室の前の廊下に並ばされて、点呼をうけ、爪が伸びていないか、ネクタイはしっかり結んでいるかのチェックを受けました。職場に戻ると、朝礼で職場長が、朝刊の1面記事の見出しを覚えておくように指示しました。
翌日は損益分岐点について勉強するよう指示がでました。

オーナーは週に2回本社ビルに早朝出社します。管理職の社員はその30分前には各自デスクで待機します。時々、ヘリコプターからの甲高い声で直接指示を受けることもあります。オーナーが発した言葉の意図を、オーナーが気に入るように解釈し実行できる能力を持つ人が管理職の地位を維持できます。忖度が一番大事。

ある日、社内研修がありました。先代創業者の御遺訓と現オーナーの考え方を、本社社員に徹底するためです。講師は、先代に直接躾けられた古参幹部が順番に登場しました。席は指定席でした。理由はわかりませんでしたが、座るべき場所が決められていました。研修中、窓の外を眺めながら話を聞いていた時間がありました。そうすると、休み時間に直属の上司に呼ばれ、「窓の外を見ていた=話を聞いていない」と叱られました。席が決まっているので、講師は、座席表で、聞いていない社員を特定できました。

ある時、毎週金曜の夕方、ロビーで社員バーが始まりました。各部門が輪番制で準備しました。飲食の費用は会費制で、幹事が翌日各職場をまわって回収しました。想像するに各職場で取引先からもらうビール券が、この社員バーの原資になったようです。
お約束がありました、参加は自由ではなく、かつ、同じ職場でない社員のテーブルで飲むように指示されていました。上司の悪口はオーナーの悪口に通じますので、だれも口にしません。オーナーならこうするにちがいないと確信して社業に励んでいる従業員の集まりですから、会社に対する不平不満が出るわけがありません。この社員バーでは、オーナーに直接叱られたこと・殴られたことなどを各自自慢する話題で小一時間、盛り上がります。時間になると、また職場に戻り、サービス残業です。

経営者の意図など、従業員にわかりようがありませんが、リストラもなく、給料の不満もなく将来に不安もない安心安全な会社でした。ただし、オーナー経営者のご機嫌を損ねると、解雇も減給もありませんが、タイトル剥奪の処分になります。しばらく謹慎すると元に戻ります。ですから、ノンタイトルで坊主頭の年配社員が現場にいたら、気をつけなければいけません。1ヶ月もするとボスのポジションに復帰します。酒席では、古参の従業員がオーナーに直接叱られたとか、殴られたとかを目を潤ませて自慢します。
当然ながら、会社に疑問を感じると、職探しをしなければなりません。
何はともあれ、古き良き時代でした。

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