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英国産未輸入スパークリングワインのテイスティングディナー備忘録

先日は桜満開の東京ミッドタウンにて開催された、日本未輸入の英国産スパークリングワインのテイスティングディナーに、旧知の友人からのオファーを頂き、日本のワインマーケットを良く知るプロフェッショナル(キャー!緊張する)として参加しました。

会場はモダンジャパニーズスタイルを提唱するHAL YAMASIHITA 東京本店、この時期はテラスから壮観な桜並木が鑑賞できる素晴らしいロケーションのレストラン、六本木をホームグラウンドの一つとするカジュアルワインゼミを主宰する僕であっても早々来ることはございません。(涙)

今回のイベントはイギリスに本拠を置くSOMMERIER'S CHOICEのTim McLaughlin Green氏からの依頼で、日本側エージェントがワイン関係のプロフェッショナルを集め、Tim氏が用意した3生産者5種のスパークリングワインと1種のスティルワインをテイスティングしたうえで、日本参入の可能性やそれぞれのクオリティーを評価する内容。
参加者には日本を代表する某ワインスクールの講師の方の顔も見られ、業界の異端児的な僕として、またシャンパーニュのアルローのアンバサダーを務める身としては、いつも異常の臨戦態勢(?)で臨む感じ、まあその前のPROWINE TOKYOで飲み過ぎてるだけとも言える…(苦笑)

今回のイベントで供出されるスパークリングワインの生産者は下記の3生産者。いずれも20年以上のソムリエとしてのキャリアを誇るTim氏のセレクト。

1本目はSimpsons Wine Etateのスタンダート・キュヴェであるCharklands Classic Cuvee NVで、セパージュはピノ・ノワール40%、 シャルドネ30%、ピノ・ムニエ30%、瓶熟は18ヵ月、現地価格は£29.00 GBP。
名前こそClassic Cuveeだが、最近のシャンパーニュにも多い、イーストを抑えクリスピーな印象をあまり前面に出さない、フレッシュ&フルーティーな爽快感を強調した、現代的な味わいでオールマイティーに使える一本。

2本目はSugure South Downsの主力商品であるZODO MVで、セパージュはシャルドネ60%、ピノ・ノワール40%、瓶熟は不明(原酒のヴィンテージから48ヵ月程度と思われる)、現地価格は£65.00 GBP。
リストを見て、ラベルを見た瞬間に、この生産者はかなり曲者だと警戒して飲んだ一杯、味わいは予想通り、いえいえ予想を超える曲者、少々誇張して言えば、ジャック・セロスを初めて飲んだ時の衝撃を思い出す。今回のアイテムの中では一番、日本市場でのインパクトを容易に想像できるアイテム。

3本目はちょいと変化球でSimpsons Wine EtateのDerringstone BdN Pinot Meunier2022、要はピノ・ムニエ100%のスティルの白ワインで現地価格は£24.00 GBP。
もうね、初めて飲んだよピノ・ムニエ100%の白、コトー・シャンプノワでもそうないようなブラン・ド・ノワールをイギリスで造ってるなんて愕き。
イタリアワインのようなガラス栓を使っている所にもかなりのこだわりが感じられる、そんな事よりなにより美味いんですがなこれ、余韻が長く残るから樽熟させてるのかなと思ったけど、そこまで樽熟の感じがしないのでTim氏に聞いたら樽は使ってないとの事、恐らくMLF(マロラクティック発酵)を強めにして酸味を和らげ、より旨味を強調させているのかなという予想。

4本目はExton Park VineyardのExton Park RB23 Roseで、セパージュはピノ・ノワール70%、ピノ・ムニエ30%、瓶熟は36ヵ月、現地価格は£39.00 GBP。
勝手に色合いからダイレクト・プレスによるロゼ・スパークリングかな思って、気になってオフィシャルサイトで調べたら見事に正解!(笑)
繊細ながらも華やかな白桃のような香りを漂わすロゼで、ベタだけど外のテラスから見える桜並木が最高のつまみになる一本。

5本目はもう僕の中では曲者のイメージしかないSugure South DownsのRose Ex Machina 2016で、セパージュはピノ・ノワール70%、ピノ・ムニエ20%、シャルドネ10%、瓶熟は48か月、現地価格は£55.00 GBP。
さすがに曲者のSugureさんだけにExtonのロゼより味わいのインパクトが強いが、ZODOに比べるとだいぶ大人な印象。サイトを見る限り、ダイレクト・プレスでもセニエでもなく、キュヴェに20%の赤ワインを混ぜてるっぽい、そこまで色濃くないんだけどなという印象。熟成感もありシャンパーニュに通じるしっかりした個性も感じられる。

最後はExton Park VineyardsのプレステージでもあるExton Park Blanc de Blancs Vintage 2014で、セパージュは当然シャルドネ100%、瓶熟は驚きの72ヵ月、現地価格は£65.00 GBP。
注がれると同時にグラスかあふれ出すイースト香、まさにシャンパーニュを思わせる佇まい。味わいもナッツを思わせるクリスピーさが強めで奥深い旨味と長い余韻、まさに王道のシャンパーニュに遜色ない味わいを魅せるプレステージ・キュヴェ。

もちろんコースで料理も用意されていたのだけれど、例のごとく料理の写真を撮り忘れまくるという失態、そのなかで牛肉の炭火焼はしっかり撮っていた、もうこれ夢に出るくらい美味かった。

個人的な好みを考えながらも、日本のマーケットを考えた時に一番トピックになりそうなのはSugure South Downs、曲者よばわりしたけど僕的には誉め言葉以外の何物でもないし、そうじゃなきゃジャック・セロスを持ち出したりしない。(笑)

英国産スパークリングワインを日本で売り出そうとすれば、温暖化でイギリスの気候がシャンパーニュに似てきて云々なんとかの一つ覚えのキャッチがよく聞かれるけど、それじゃシャンパーニュとのブランドの差は埋められないし、そんなキャッチで食いつくのはブドウの栽培限界どうのこうのの一部のマニアだけだと思う。

要は世界で一番酒にうるさいイギリス人が本気で造った極上スパークリングワイン!ぐらい言わないとシャンパーニュが絶大なステータスを持つマーケットには食い込めません。まあ、どこぞのなんちゃってプレステージ・シャンパーニュが幅を利かせている今ならチャンスはあるかもね。

なんて事を思いながら、どう提案していくか色々考えていきます。インポーターの皆様、ご興味ございましたらお気軽にお問合せ下さい。
そんな仕事もしているワイン業界の万事屋、ヴェリのテワインコンサルティングですので。

夜桜をバックにはしゃぐ日英のオッサン四人組

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