蓮華

素直で在りたい…この目に映るものが素直に映りますように。stand.fmでもおしゃべり…

蓮華

素直で在りたい…この目に映るものが素直に映りますように。stand.fmでもおしゃべり偶にしてます✿* 無断転載はお断りしています。

マガジン

  • ある始まりの世界の物語

    ある始まりの世界の物語シリーズです。

  • 津の奥山の銀の狼─湯屋娘─

    津の奥山の銀の狼シリーズです。

  • 鈴の鳴る風の音

  • 作り話~

    作り話シリーズです。

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ある始まりの世界の物語

夏が終わり、色付いた山にひとつの 岩穴がありました。 そこは、優しいモノが住みついていると 村人が話す岩穴でした。 ある日のこと、誰も寄せ付けぬような空気の中、好奇心旺盛な少女が遊びに来たようでした。 岩穴をひと目見て、興味の湧いた少女は、 誰も寄せ付けぬような空気も気にせず 目をキラキラさせ、駆け足で中に入りました。 中へ入ると、少女は足を止め言いました。 「こんにちは。あなたはだぁれ?」 そこには黒い羽のついた簡素な出で立ちの 男性がいました。 座って目を閉じていた黒い羽

    • 雨の薫りと雪の音

      ずっとずっと、会いたいひとがいる もう違うひとかもしれない もしも、会えたらわかるのだろうか 冬の終わりの温かい雨に思い出す もしも、雪が降ったらそれは消えるのだろうか 冬の山に足をつけるとそう感じる 月は今も変わらないままに 夜の音は雪を踏む足音がする 涙の薫りが微かにする雨に思う 君が為を離した時に見つかると感じる 冬に消えたあのひとは… 「助けて」の言葉を失って雪の下 芽吹く春を待つ冬の山 雪にしなる枝の如し

      • 鳥居を行く者~唄い語るモノ~

        ─其の道を行く姿を………た者は         …………に至ると言う─ 小さな声が唄うように聴こえてくる。 「誰の声か。唄うのは誰だ?」 ゆっくりと歩きながら洞窟に響くように 問いかけた。 すると、その問いに呼応するように聞こえてくる。 「この地で遥か昔果てた身は、この場所に 葬られた。何故かこの場所から離れることの 叶わなくなった者。 人の恐れる心はこの場所を恐ろしい場所と してしまったようだ。 始めの頃は、何か聞こえてくるとしても 恐れる者はいなかった。 しかし、次第に…

        • カタチかココロか…

          ─それは吉野の山の山桜       川のほとりで水を浴む          吾の傍で笑む君は               舞う桜の如し─ 「これでもう離れることはない。」 男は、空を見て隣で微笑み続ける女を見て 言った。 女は、もう男の問いには答えることはできなくなっていた。その代わり、少女のように微笑み 目に映るものを見ては嬉しそうにするだけだった。 男はそれでも良いと言い、女の髪を指でそっと梳いた。 女には、記憶がなかった。 今の瞬間と女の目に映る世界だけが全てだった。

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        ある始まりの世界の物語

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        • ある始まりの世界の物語
          6本
        • 津の奥山の銀の狼─湯屋娘─
          2本
        • 鈴の鳴る風の音
          2本
        • 作り話~
          25本

        記事

          あるひとへ…

          愛する誰かの手で終われたら どんなにかいいだろう 逃げていたのは自分だったけれど もしもこれが夢なら たくさんの自分以外の誰かの傷みを 感じたことを忘れられるだろうか 痛かった 辛かった 何故自分がこんな目に? 原因と結果の簡単な道理なら分かりきっている 何故こんな扱いをされるの? 何故思い通りにならないと殴られるの? 同じ人間なのに? 身体の傷みはいつしか麻痺する 繰り返す痛みの記憶… それは、自身を傷めていく… 感じたのは絶望と諦め 辛かったろう。痛かったろう。 悲しか

          あるひとへ…

          渇望

          「欲しいものは何?」 その問いを聞いた者は答えた。 「友人が欲しい…」 多くの人に関わりながら過ごしているにも 関わらず、孤独を感じていた人間は叫ぶように答えた。 「わかりました。」 突然の出会いだった。 その声はどこからするのかは分からなかった。 しかし、安寧を与えてくれることだけは確かなことだった。 人間が、迷った時決まって聴こえた。 「本当はあなたはこう思っているけれど、現実的でない発想に迷いを感じているのでしょう?ならば、どうすれば良いか、それはあなたがよくご存じのは

          澄んだ夜空のような…

          ふと見上げると 澄んだ夜空が見える。 一つずつ、壊れていく自分の心。 誰かの望む自分になって 夢を売る。 ただ此処に、今があるだけ。 温かな場所を望んでも 壊れてしまう。 ならば、始めから望まない方が 幸せというもの。 何かを持ち続けるから望むのなら もう要らない。 私は夢を売る。 いつか、 いつか、この夜空のような心に なれるだろうか。 こんな夢を売るような つまらない自分でも。 いつか…。

          澄んだ夜空のような…

          ひとりがたり

          昔の話。 なんだか思い出されて仕方なく、 話す相手への返しにも口を閉ざして しまうほどだった。 だから、話す。 今日は放したいんだ。 聞いてくれなくてもいい。 ただ、流してくれたらそれでいい。 ☆ここからは、不快な表現、描写が出てきます。苦手な方は、読む事を控えて下さい。 誰かにとっては些細なこと。 そのくらいで…と言われることかもしれない。 自分にとっては、自分は只の道具になったと感じたことだった。 そんな些細な話。 私は、夢を売る。 もちろん本当にではないが。 誰か

          ひとりがたり

          ある始まりの世界の物語 Ⅵ

          いつしか少女は、娘となる頃だった。 ある時、突然に見えたものを娘は 自分だけではかかえきれなくなっていた。 「私たちは、山と共に生きてきた。山がここで終わると言うのなら、私たちも共に終わろう。」 先の未来を見た娘に人々は、真っ直ぐな目で そう告げた。 娘は、見た通りになってしまう未来を思い、 涙を流した。 やがて訪れることを思い、娘は涙を流し言った。 「どうして…」 人々の言ったことは、頭では解っていたが 娘の心は理解することを拒んでいた。 なぜ人々がそういうのかも解っていた

          ある始まりの世界の物語 Ⅵ

          あのユキの日の…官能追憶編

          ※この作品は、官能的な表現が多々出ています。そういった表現が不快な方は、ここでブラウザバックしてください。 「最初から男の言うことを信じてなど…」 紅を引き直しながら女は言った。 女は、記憶をポツリポツリと語りだした。 女の名は…ユキ。 別段、雪のように色が白いわけでもなく 雪に所以があるわけでもないが、 ここで身を寄せた日に雪が降っていた… そんな理由だった。 ユキは、訪ね来る男に身を任せ身体を開いた。 この身体に纏わり付く体液はどちらのものかも もう分からないほどに混ざ

          あのユキの日の…官能追憶編

          海に立つ…

          暁に染まる海に立ち ゆらゆらと揺らぐ水面へ 一歩、また一歩と歩く 気付けば……… 深海の奥深く水に包み込まれるその様は まるで子宮にかえったように 温かな水は身に吸い付くように この身体の細胞の奥深く染みていく やがて、身体という意識も感じなくなる 僅かに残った意思は記憶と共にあの場所に。 僅かな意思は… 「もういいよ」 それだけだった。 そうして、その後 記憶は様々に混ざり合い粉々に散っていく。 すると、薄く霞かかる空間に入る。 あの透き通った白銀の大樹は 様々な記憶を

          海に立つ…

          何処かの彼方の大樹の話

          古に思い馳せ 見つめ行くは 変わらぬ姿の香の山 大樹に向かい歩く 手を伸ばして大樹に触れる その瞬間近くにいたものは慌てたように 「いけない!」 と叫んだ。 気づくと大樹の中に吸い込まれるように 入っていることに驚きを隠せない 近くにいたものは言葉を続ける 「その大樹に吸い込まれたらもう戻れない 吸収されてしまう、消えると言ったらいいか。 だから触れてはいけないんだ」 残念そうに言うそのものに答える 「大丈夫。出てこられるよ、見てて。」 すると、大樹からするりと抜けてきたの

          何処かの彼方の大樹の話

          ある者の独り語りは紺碧の…4

          ある日、いつものように夜空を見上げていると、…碧が口を開いた。 「諦めるのか。」 突然に、問いかけてきた。 その問いに図星を突かれたようでもあった。 そうして、黙ったままいると溜め息をついた。周りを警戒するように見渡すと、一言険しい表情で…碧は言った。 「気を付けろ。」 何となくわかった気がしていつの間にか頷いていた。 その深夜だったか。 夜道で頭から胴体にかけて赤黒い蛇と出会った。 首を持ち上げた蛇と目が合ったと思うや否や、驚くほどの速さでこちらに向かってきた。 避けようと

          ある者の独り語りは紺碧の…4

          あの桜の木の奥 舞う桜は雪の如し

          「全てが止まったような夜だ。」 止まってはいないが、動きを止めたようにさえ見せる空に向かって呟いた。 そんな様に思わず自嘲する。 「なに…他愛もないことだ。何があったとしても、過ぎ去れば流れ行く。」 望むは、ただ…だけだ。 傍にある桜に向かい、舞い散る花びらを浴びて 見つめた。 「ダメ。隠しておくの…。」 聴こえてきた声は桜の木からだった。 「暴かないで…。」 小さな声をたどり、木の榁を見つけた。 ぎゅっと両手で自分を庇うようにしゃがみこむ人影をうっすらと見た。 「…?自分

          あの桜の木の奥 舞う桜は雪の如し

          手を伸ばす葉は…

          陽を浴びて伸び伸びと育つのは、植物だけではない。 人間も同じで、陽のような暖かな心を浴びて伸び伸びと育っている。 それは、幾つになっても同じだ。 時には、叶わない願いを胸に歩み出そうとしていたり、生の時間の許す限り未来に向かっていたりする時もあるだろう。 人は木に似ている。 木のように大地に根を張り 木のように柔らかな優しさという陽の光を浴び 木のように知識や食という水の恵みを得て 木のように自他共からくる感情の強弱という風を体感する。 木のように様々なものを受け入れ種を生む

          手を伸ばす葉は…

          飲み込むような眼の者との話

          始めは拙い綴りかたで 降り積もる思いを感じては文字にした。 やがて、綴りかたを覚えて 少しずつ言の葉にし、文章にしていった。 夜空を見上げ少しずつ思い出していった。 時間の流れは関係なく思い出されることの 全てを綴っていった。 そんな事の中に「今」があった。 ある時、綴ることに二の足を踏んだ。 作りゆく空と、過ぎ行く作られてきた これまでと言う海に気付いたからだ。 綴ったところで、何かが変わる訳じゃない。 でも、怖くなった。 確定してしまう気がしたからだ。 「やっぱり変わらな

          飲み込むような眼の者との話