翁まひろ

もの書き。遺跡発掘師。著書は、角川文庫『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降…

翁まひろ

もの書き。遺跡発掘師。著書は、角川文庫『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』(第8回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉&〈読者賞〉受賞作)。このnoteでは、ジャンル問わず、気ままに「書く」楽しみを味わっていきたく思っています。

マガジン

  • 中国四川省の鉄道「芭石鉄路」

    2009年に訪れた、菜の花畑の中を走る鋼鉄の男爵、中国四川省の鉄道「芭石(ばせき)鉄路」の記録。

  • モロッコ旅行記

    2011年1月、憧れの地「モロッコ」で13日間の旅をしたときの旅行記。

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自己紹介

はじめまして。翁まひろと申します。 扇(おおぎ)と間違えられがちですが、おじいさんの「おきな」です。 小説家やってます 2023年4月末、第8回角川文庫キャラクター小説大賞、大賞&読者賞の受賞作として『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』(角川文庫)を上梓し、デビューした小説家です。 一冊出しただけで、小説家と言ってしまうのはどうなんだろう。 と、ためらいを覚えつつ……よわよわメンタルを鍛えるためにも、あえて……あえて小説家と言わせてください……! 「

    • 改稿作業と串焼きづくりは似てる

      小説は、初稿が終わると、次は改稿ってやつがはじまる。 初稿もしんどいが、この改稿もしんどい。 改稿作業というのは、こう……まな板の上に置いた肉とか野菜とかを、「目指せ、最高の串焼き!」と己をふるいたたせながら、串でぐいぐい刺していく感覚に似ている。 肉と野菜をどの順序で刺していくか。あれこれ試して、最高の取りあわせを手探りで見つけていく。 ときに具材を入れかえたり、あるいは減らしたり、増やしたり……。 減らしたり増やしたりで言うと、私の場合は、だいたい増える。 だいたいと

      • エッセイ|大好きな町、三軒茶屋。

        三軒茶屋は、私が暮らした中でも「一番好き」と言える町だ。 東京都二十三区の西南部。人情味あふれる昔ながらの商店街が点在する一方、新しい店や文化もどんどん取りこんで、新旧が雑然といりまじる。 運転手泣かせの路地迷宮としても知られ、散歩好きにはたまらない町でもある。 そんな三軒茶屋を含めた世田谷の町々で、二十代後半から三十代にかけて、十年強をすごした。 最初に暮らしたのは、太子堂という町だ。 三軒茶屋駅から徒歩五分。小さなアパートの一階に借りたのは、五畳半程度の部屋だった。 窓

        • エッセイ|ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい

          生き方を変えたい。 けれど、どうしてもそれができない。 そんなとき、この言葉に出会った。 『ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい』 たしかJR山手線の車内モニタに表示されていた言葉だったと思う。 「本日の格言」だったか、「今日の一言」だったか、ともかくそんなコーナーにパッと映しだされたのだ。 精神的にも身体的にも、きつい仕事についていたときだった。 サービス残業、モラハラ、休日出勤、山積みの仕事……。 「こんな毎日はもういやだ。もっと違う生き方をしたい」 毎日そん

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        • 中国四川省の鉄道「芭石鉄路」
          6本
        • モロッコ旅行記
          15本

        記事

          エッセイ|釘抜き、使いな。

          「あんた、さっきもまだ釘抜きしてたねえ」  ある冬の朝のことだった。  都内某所にある会社の裏手で作業をしていたとき、そんな風に声をかけられた。  その日、わたしは不要になったパレットの解体をしていた。  パレットというのは、空調など大型の電化製品を運搬するとき、製品の上下を固定し、運搬するための木枠のことだ。長細い板を、すのこ状に組みあわせた箱のようなものである。  そのパレット、使用後は解体し、「燃えるごみ」として処分する。もったいない気もするが、質の悪い木材なので再

          エッセイ|釘抜き、使いな。

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑥(最終回)

          芭石鉄路よ、永遠なれ昼食のあとも、引きつづき蒸気機関車の撮影をする。 線路と日常の風景 線路脇にたびたび見かける「鳴」の文字。 線路が蛇行していて、見通しが悪いため、警告音を鳴らせという意味だろう。 学校帰りの女の子と遭遇。 「なにを撮ってるの? 私たちも撮って撮って!」とおおはしゃぎ。 撮影した写真を、デジカメ越しに見せると、「やった」と喜んで、足取り軽く線路を歩いて去って行った。 写真をあげたわけでもないのに、喜んでくれる、その純粋さが嬉しい。 こういうとき、ポラロ

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑥(最終回)

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑤

          芭石鉄路の朝と昼翌日、5:30に集合して、タクシーで「石渓駅」へ。 目的は、蒸気機関車の朝方の撮影をするためだ。 早朝の蒸気機関車 2月下旬の日の出は、だいたい7:10頃。 6:30に駅に到着すると、早朝出発の列車に乗って「菜子壩駅」へ。 驚いたのは、車内が真っ暗だということ。 電灯などなく、車窓も闇に包まれているため、手元も見えないほどに暗い。 写真は、トンネル内の電灯で、一瞬だけ車内が光に包まれた瞬間。 途中、車掌さんが切符を切りに来る。電灯を片手に切符をチェック

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑤

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」④

          沿線の日常「黄村井駅」で下車し、しばらくの休憩。 包車に協力してくれた鉄道員の皆さんをパシャリ。ほがらかな笑顔の、優しい方ばかりだった。 炭鉱の村「黄村井駅」 黄村井駅には、かつて炭鉱があった場所。 壁に描かれた、人民服を着た毛沢東の絵とスローガンとが、時代を感じさせる。 ……のだが、何度も芭石鉄路を訪問されている方のブログを拝読したところ、これは「昔風を演出したレプリカ」なんだとか! びっくり! 炭鉱跡はどうやら見学ができるらしい。 この日は残念ながら閉まっていて、中

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」④

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」③

          蒸気機関車をチャーターする午後は、芭石鉄路を訪れた一番の目的、蒸気機関車の包車(チャーター)をする。 決して高くはない値段で、数時間、蒸気機関車を貸切にし、自由に……それはもう本当に自由に、運行させることができるのだ。 特等席で釜焚きを拝見 早速、運転席に入れてもらった。鉄道員さんの釜焚きの様子をウキウキと見学。 中腰の姿勢で、熱い火の中に、石炭を手際よく投げ入れていく。 ちなみに私は運転席に座らせてもらえたが(運転席といっても、壁から突き出た小さな板)、哥哥はとんでも

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」③

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」②

          机務段(機関区)見学「机務段(機関区)」の仕事風景を見学させてもらうことになった。 汚れる仕事はかっこいい! 昔から、こういう機械油にまみれた作業場が大好きだった。 理由はわからないが、真っ黒になるまで働いている無機物に、不思議な愛情を覚えるのだ。もちろん、そこで働く人たちに対しても、深い尊敬の念がわきあがってくる。 汚れること=かっこいいこと! そんな公式が、私のなかにはずっとある。 整備室の内部 整備室の中に入ってみる。 石炭か機械油、あるいは蒸気か、ともかく

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」②

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」①

          四川省「芭石鉄路」親戚が鉄道カメラマンなため、これまで中国のあちこちに「蒸気機関車撮影の旅」に連れて行ってもらった。 名目上は、一応、「通訳」兼「ぽんこつ撮影アシスタント」だ。 これは、そのうちのひとつ。 2009年に訪れた、菜の花畑の中を走る鋼鉄の男爵、中国四川省の鉄道「芭石(ばせき)鉄路」の記録。 躍進駅のC2型蒸気機関車 2009年2月末。 親戚の兄貴――通称「哥哥(グーグ / 中国語で、兄の意)」とともに訪れたのは、中国四川省・成都の南約200キロにある「犍為(

          中国四川省の鉄道「芭石鉄路」①

          祝!第8回角川文庫キャラクター小説大賞全作そろいぶみ

          昨日10月24日、紙屋ねこさんの『後宮の宵に月華は輝く』が発売され、拙作『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』や、ヨシビロコウさんの『警視庁魔獣対策室 狼刑事と目覚めの賢者』をあわせ、「第8回角川文庫キャラクター小説大賞受賞作」三作品がすべてが出そろいました! 「よみがえり」が共通点の、第8回角川文庫キャラクター小説大賞。 どうぞ応援よろしくお願いします。 受賞のことば・選考委員の選評各受賞者の受賞のことば、選考委員の荻原規子先生、中村航先生の選評がご覧い

          祝!第8回角川文庫キャラクター小説大賞全作そろいぶみ

          モロッコ旅行記⑮ 10、11日目「カサブランカの別れ」(最終回)

          最後の目的地「カサブランカ」朝の8時、駅までのガイドさんと、陽気なドライバーさんとともに、フェズ駅まで向かう。 目的地は、このモロッコ旅行の始まりの地であり、最後の地ともなる「カサブランカ」だ。 ふたたびの列車旅 50分後に、フェズ駅を列車が出発。 同じコンパートメントになったドイツ人の夫妻と、ユダヤ系の夫妻とで、SUDOKUや、それぞれが撮影した旅の写真などを見せあって楽しみつつ、一路カサブランカへ。 いよいよ列車は、カサブランカ駅に到着。 今回も到着時間がはっき

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          モロッコ旅行記⑭ 9日目「フェズ・皮なめし工房タンネリ」

          皮なめし工房タンネリカフェで改めて決めた目的地は、「皮なめし工房タンネリ」だ。 退役軍人のキリム屋さん 複雑怪奇に入り組んだ路地を、地図を片手に歩いていくと、途中でキリム屋さんにたどりついた。 「大きい絨毯を見せようか。あ、でも分かってるよ。日本人の家は小さいんだろう? 大丈夫、小さい絨毯もたくさんあるんだ! 畳めばコンパクトで、飛行機に載せても問題ない」 商売上手で、陽気なキリムおじさん。退役軍人だという話だったが、熟練の売り口上がお見事。 素材は「シルク」だと言う

          モロッコ旅行記⑭ 9日目「フェズ・皮なめし工房タンネリ」

          モロッコ旅行記⑬ 9日目「世界遺産・迷宮都市フェズ」

          世界遺産・迷宮都市フェズ世界遺産の古都フェズは、9世紀に成立した、モロッコ初のイスラム王朝の都が置かれた場所。 今日は、迷宮のように路地が入りくんでいると言われる都市フェズを、ガイドなしで散策する。 南の砦か、北の砦か フェズの都は、三つの地区に分けられる。 ・9世紀にできた「フェズ・エル・バリ」 ・13世紀にマリーン朝として成立した「フェズ・エル・ジャディッド」 ・フランス保護領時代に作られた「新市街」 目指すは、見どころが集まっているという「フェズ・エル・バリ」

          モロッコ旅行記⑬ 9日目「世界遺産・迷宮都市フェズ」

          モロッコ旅行記⑫ 8日目「青の街シェフシャウエン」

          青の街シェフシャウエン本日の目的地は、友人に「どうしても行きたい」と頼んで、オプションで増やしてもらった場所「シェフシャウエン(以下、シャウエン)」だ。 マラケシュが「赤の街」なら、シャウエンは「青の街」。 この日、私はまた、新たなモロッコの顔を見ることになる。 北部のロバは友達じゃない 8:30にホテルを出発。 フェズの都から北上した山奥にあるシャウエンまでは、車で3時間。 フェズを離れると、一気に世界が変わる。緑の大地が広がり、豊富な水をたくわえた湖が姿を見せる。

          モロッコ旅行記⑫ 8日目「青の街シェフシャウエン」