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ラグジュアリーファッションブランド・企業の2023年10-12月期 & 通期の決算


要旨

・全体として、各カテゴリーのリーダー的なブランド、最高級ブランドが強い印象で、中でも「Hermes」の強さが際立つ。

・Kering傘下の「Bottega Veneta」を除き、「Brunello Cucinelli」、「Ermenegildo Zegna」、OTBの「JIL SANDER」、Prada Groupの「Miu Miu」、LVMHの「Loro Piana」などクワイエットラグジュアリー系ブランドは総じて好業績。特に「Miu Miu」の成長率は圧倒的。

・2023年通期の売上高(=revenue)の成長率が前年比20%を超えたのは「Hermes」、「Brunello Cucinelli」、「Ermenegildo Zegna Group」の3社。
※「Ermenegildo Zegna Group」はM&A分を除くと+19%の成長。

・Burberryは2024年3月期通期の業績予想を下方修正、Hugo Bossは2025年の売上高目標の達成が遅れるかもしれないと警告、更にKeringはGucciの2024年Q1の売上が前年比20%減少すると予測する(グループ全体では10%の減少)など、見通しの暗いブランドも散見される。


企業・ブランド別ハイライト

LVMH Group

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€240億(前年比+10%)

<2023年12月期通期>
売上高:€862億(+13%)  
Profit from recurring operations(営業利益に近い):€228億(+8%)

カテゴリー別では、「selective retailing division(Sephoraや香港のDFSなどが含まれる)」が最も高い成長を記録し、Q4は前年比+21%、通期では+25%の成長率。

「Fashion and leather goods」カテゴリーは、Q4は前年比+9%、通期では+14%の成長。

Louis Vuitton, Christian Dior, Celine, Fendi, Loro Piana, Loeweなどのブランドが売上高、利益ともに過去最高レベル。

Q4はアジア、特に日本が成長を牽引。


Hermes

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€33.6億(+18%)

<2023年12月期通期>
売上高:€134億(+21%)  
Recurring operating income(営業利益に近い):€57億(+20%)

カテゴリー別では、「Ready-to-wear and Accessories(レディ・トゥ・ウェア=既製服とアクセサリー)」が一番の伸びで、成長率はQ4、通期ともに28%前後。

売上高の一番多いカテゴリーである「Leather Goods and Saddlery」の成長率は、Q4は前年比+10%程度、年間では17%程度。

地域別では、日本がQ4、通期ともに+26%の高い成長で、アメリカ、ヨーロッパ、アジア(日本を除く)の成長率を上回る。
また、多くのブランドはアジアが成長を牽引する中、「Hermes」は北米と南米、ヨーロッパの成長率がアジア(日本を除く)の成長率を上回る。

昨年に続き、1月~2月に8~9%の値上げを実施した。


Richemont

<10-12月期(2024年3月期Q3)>
売上高:€56億(前年比+8%)

カテゴリー別では、主要セクターの「Jewellery Maisons(Buccellati, Cartier, Van Cleef & Arpels)」が一番の成長(+12%)。

地域別では、日本(+18%)とアジア太平洋地域(+13%)が成長を牽引


Kering

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€49.7億(−4%)

<2023年12月期通期>
売上高:€196億(−2%)
Recurring Operating income:€47億(−15%)
ブランド別売上高成長率:
GUCCI:-4%
Saint Laurent:-1%
Bottega Veneta:-2%、
その他:-8%

日本が一番高い成長率を記録(Q4:+13%、通期:+23%)。
北米が不調(Q4:-11%、通期:-18%)


Prada Group

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€13.8億(+18%)

<2023年12月期通期>
売上高:€47億(+17%)
Recurring operating income:€10.6億(+25.6%)

Miu Miuの成長率が爆発的に高く、小売売上高がQ4では+82%、通期では+58%を記録。
Pradaの小売売上高は   Q4が+9.5%、通期が+12%。

地域別では、日本が+44%と最も高い成長。


Moncler

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€11.8億(+16%)
Moncler単体の売上高:€10.8億(+17%)

<2023年12月期通期>
売上高:€29.8億(+17%) 
Moncler単体の売上高:€25.7億(+19%)
EBIT:8.9億(+15%)

アジア、特に中国本土が成長を牽引。


Ermenegildo Zegna Group

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€5.7億(+19.6%)

<2023年12月期通期>
売上高:€19億(+28%)
※M&A分を除く既存事業の成長率(=organic growth)は、+19%

Q4は中国が成長を牽引(+36%)、日本は+20.7%

通期は中国が+24%、日本が+28%の成長

※4月にTom Fordのファッション事業を取得した影響で、決算書の数字上ではアメリカが一番の成長


Brunello Cucinelli

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€3.2億(+15.6%)

<2023年12月期通期>
売上高:€11.4億(+26%)

地域別の年間成長率は、アメリカ(大陸)が+20.8%、ヨーロッパが+16.8%、アジアが+40.4%で、年間を通してアジアが成長を牽引。

「2024年前半も非常に好ましい数字となることが想像できる」と明るい見通しを示すコメント。


OTB(Maison Margiela, JIL SANDER, MARNI, DIESEL…)

<2023年12月期通期>
売上高:€19億(+10.2%)
EBIT:€1.4億

成長率が上位のブランドは、Maison Margiela(+23%)、Jil Sander(17.3%)、Diesel(+13%)など。

アジア太平洋地域が最も好調。


Hugo Boss

<10-12月期(2023年12月期Q4)>
売上高:€11.8億(+13%)

<2023年12月期通期>
売上高:€42億(+18%)
EBIT :€4.1億(+22%)

地域別の成長率は、アジアが+32%、アメリカが+23%、EMEAが+13%で、アジア(特に中国と東南アジア)が成長を牽引。

2025年までに売上高50億ユーロに達するという最新目標が「消費者センチメントの弱さにより若干遅れる可能性がある」と警告。


Burberry

<10-12月期(2024年3月期Q3)>
小売売上高:£7億600万(-2%)

通期の利益警告(下方修正)。

地域別では、アメリカが大きく減少、アジアはなんとかプラスを維持。


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