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つれづれなる書

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日常の生活のなかで、考えたことをかいています。
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記事一覧

鏡はすごい

 鏡の起源は、人類の誕生とほぼ同じころまでさかのぼる。古の時代は、水たまりや、水辺の反射を利用して、自らの顔面の輪郭を判断していた。紀元前の弥生時代ころには、日本列島に鏡が渡ってきたが、その用途は宝物としての所有や、祭事・副葬品として使われ、もっぱら富裕者のみに用いられたようだ。きっと卑弥呼を明るく照らし出すために、何人もの人が鏡の角度を調整して、洞窟の中に太陽光を送り込んだに違いない。下々の者は鏡を持たなかった。  その後も鏡は富裕層の持ち物として、平安貴族や戦国大名にも

スマホはすごい

 スマートフォンは、電話のできる小さなパソコンである。従来型の携帯電話にインターネット機能を搭載したもので、この発明は組み合わせの妙といえる。一人一台持っているといっても過言ではなく、先進国で75パーセントの普及率を誇る。  携帯端末がスマートになったことで、できることは飛躍的に増えた。従来からある電話、メールについてはいわずもがな、カメラの画質は上がり、検索の利便性は増した。さらには、動画の視聴が容易になり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で個人の考えを発

メイクはすごい

 まゆ毛をのばし、まつ毛を上げる。頬の色を変え、鼻をシュッとさせる。目の大きさは変幻自在で、色は千変万化である。メイクは人を変える。女性を可愛く、美しくする。元が美人なら、より美人になる。中高生は大人びて見えるし、中年は若々しくなるし、老婦人は明るくなる。彼女らは、自身の顔面をキャンバスとするだけあって、クオリティには妥協しない。描き出される筆致は、芸術家も顔負けである。貴重なる朝の時間のほとんどを差し出すだけの価値は、充分にあるといえよう。  彼女らは、物心ついた時から「

公営競技はすごい

 公営競技には、競馬・競輪・競艇・オートレースがある(競泳は含まれない)。どれも生身の人(馬)の真剣勝負で、多くの人を引き寄せる。他のギャンブルと違って、健全なスポーツ観戦を装えることや、ひいきの選手(馬)を応援できることから、自分への口実が充実している。    公営競技の控除率は、25%とされる。ちなみに、スポーツくじが50%、宝くじが55%である。ここから、公営競技は開催者の搾取率が低く、寛大かつ良心的な控除率であることが分かる。また、百円単位から賭けることができるので

保険屋はすごい

 デスクの受付電話が鳴った。出ると、保険屋だった。突然の訪問である。丁重に対応すると、付け込まれて、保険の知識を問うアンケートに答える羽目になった。名刺交換を強要され、誕生日を記入させられた。「保険に入るつもりはない」と、はっきり言った。  後日、また保険屋がやって来て、頼んでもいないのに、保険商品を提案してきた。非常になれなれしい態度である。先日の言葉が通じなかったのだろうか。思い返してみるに、フランス語でもスワヒリ語でもなく、日本語で話したように記憶している(なぜなら、

フランス語はすごい

 もしあなたが日本人で、とりあえずスーパーへ行って食パンを買ってこられる程度の日本語能力があるとすれば、次はフランス語を学んでみるとよい。言語に優劣はないというが、日本社会において、フランス語ほど努力対効果のある言語はない。こう書くと、英語が世界共通語だとか、中国語が実務的だとか、自分の利益にならないことを盾にとって反論してくる輩がいる。けれども、英語は誰も学んでいるし、中国語は実用的でない。どちらも国内では宝の持ち腐れになり、海外に出ても通訳がいれば不自由しない。学んでいる

実家はすごい

 誰にも実家がある。「実家」は解釈が複雑だから、生家といってもいい(ただし、わたしは育ちこそ実家だが、生まれは病院である)。引っ越しを繰り返す人にとっては、両親のいるところになるのだろうか。いずれにしも、実家は最強である。両親が健康でいてくれると、鬼に金棒である。この金棒を持った鬼を味方につけるためには、できる限りこの鬼の近くに住むのがいい。  実家があるということは、いざという時そこに住めるということである。例えば、無職であったとしても、住所不定になることがない。万一のこ

世間体はすごい

 世の中には「したくなくてもしなければならないこと(勉学・労働・結婚など)」と「したいのにしない方がよいとされること(飲酒・喫煙・ギャンブルなど)」がある。したくないならしなければよいし、しない方がよいとされることはしないに限るが、前者のストレスを後者によって解消することは、人間の常である。嫌なことを生産的にこなして、時間・健康・金銭を損失するくらいなら、非生産的にストレスなく暮らす方がいいのではないか。みながこう考えるのを退けるため、わが日本国においては都合の良い言葉が受け

大学生はすごい

 大学全入時代である。つまり、誰もが大学に行ける。金銭の問題を除くと、条件は二つ。 ①高等学校を卒業、あるいはそれと同等の能力が認められた場合。 ②学校と学部を選ばない場合。 実際は、高等学校を卒業した半数以上が、大学か短大に通う。  大学に入学すると、一人暮らしを始める人が増える。そうでなくとも、寮生だと親元から離れる。実家生でも親の干渉が緩和されてくる。その上、我が子が何を学んでいるかさえよく知らないのに、多くの親が高額な学費を投資する。親の期待値が最も高く、大したプレ