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『スパイの妻』(2020)

映画について

1940年代の神戸を舞台にした黒沢清監督の作品。

貿易会社社長が出張で満州に赴いたところ、国家機密に触れてしまう。

男は「コスモポリタン」として国際政治の場に持ち出そうとする。

その妻は戸惑いながらも、軍部と対立する夫を助けようとする。


作中の雰囲気

銀幕に映る風景は美しくも、どこかしら戦争前の暗さをも想起させる。

登場人物の服を当時に合わせて作り、セリフも時代を感じさせる口調になっている点も、時代の雰囲気をうまく作り出していた。

妻の様子は元気かと聞かれた男が、「至極」とだけ答えており、「あぁ、これが戦前の日本か」と妙に納得した。


見どころ

この映画の見どころは、「リアルさ」と「正義感」だと思う。


「リアルさ」は、人権の概念の存在すら怪しい戦前の日本とあり、とても痛い描写があった。

それを手に汗握りながら、感覚を失いそうな指先を握りながら、

目をそむけたくなりつつも、早く次の描写に戻ってくれと思いつつも、

見入ってしまう場面があった。


「正義感」は、日本という国家全体を敵に回してでも、正しいことを貫き通そうとする、熱意に驚かされた。

自分が気づいた国家機密は到底許されるものでないと意見を持ち、「非国民」と呼ばれることすら恐れずに行動をするさまは、人間的に極めて成熟した人物であると感激した。

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