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私たちは毎日小さな夢を諦めているのかもしれない

長年専業主婦で頑張ってきた母はイギリス生まれの伝説のロックバンド、QUEENが大好きです。

遊びに来た母は私に言いました。

「今度東京ドームで公演があってね。でもスマホでチケットをとる方法も分からないし、前売り券をSNSで売買している様子も見かけるんだけど、やっぱりなんか怖いしね。当日券もあるから列に並べばもしかしたら買えるかもしれないけど、買えなかったら無駄足だよね」

母はずっと専業主婦をしてきた人で、仕事に邁進する父をサポートをしたり私たちの育児を担当したり、長きにわたって家庭をサポートしてくれました。

歳の離れた姉弟を育てていたため育児期間が長く、比較的自由に動けるようになったのはここ数年の話。そして比較的……と書いたのは、彼女は家族としての役割から完全に独立したわけじゃない。程度こそあれ継続中であるためです。

「推し活とか言うけどさあ。今までずっと『いつでも誰かをサポートできるように』体制を整えてきて、自分のことは後回しだった。今は子どもたちが大きくなったから、自分は何が好きだったのか、何に興味があるのか、やっと取り戻しつつあるけれど、それでもまだ分からないことが多い。好きなことでも色々な手続きの面倒くささを考えると、行動を起こす気力がなくて。」

「でも、もう生のQUEENを観られる機会はこれで最後かもしれないよね……」と迷いを見せる母に私は「理由をつけて行かないなんて勿体ないよ!!私たちもうとっくに成人してるし!!!東京ドームならチケット取れなくても音漏れを楽しめるよ!!!(?)」なんて言葉では励ましつつ、でも特に気の利いたことは言えないまま、その日はお別れをしました。


後日、家族LINEには「なんと、クイーンのコンサートに来ています」という母からのメッセージが。

「当日券並んだらゴールドが買えたの。7時開演」

ゴールドとはおそらくGOLDチケットのこと。「直接観た方がいいから、数秒」という文面と共に送られてきた短い動画。そして「行ってよかったです」という冷静ながらも感動が伝わってくる言葉。

「母の感動第三者委員会」の父からも「最高だったらしいよ」とメッセージが届いたので、なるほど。母が最高なんて言葉を使っているイメージは無いけれど、間違いなく最高だったんだ。テキストメッセージから母の喜びが伝わってくるなんて、娘としてこんなに嬉しいことはありません。

私もなんだかんだ母親になり、行動に制限がかかることが増えました。それは幸福でもあり足枷でもあります。日常の“やるべきこと”を優先して“やりたいこと”を後回しにして過ごしていると少しずつ我慢することが習慣になり、自分のやりたいこと、好きなことを忘れてしまう。母はきっとそのタイプだったし、私も今痛感しているところです。

でもきっと、子育て中でなくても金銭的なこと、仕事のこと、自分の能力の限界など、やたらと現実を見てしまい自らの可能性を閉じてしまうことは誰にでもあるかもしれません。

そういう人について誰かが「小さな望みを叶えられない人が、大きな望みを叶えられるはずがない」と言っていて、数年前に読んだときからずっと心に残っています。

例えばコンビニで高い方のおにぎりを食べたいのに、安い方を選んでしまう。こんなの買っても生活に響かない程度の値段なのに、何故か我慢をしてしまう。
だからこそ、大きい願いを叶えたい人はそういう“小さい願い”を叶えるところから挑戦してみよう。初めから大きい欲は叶えられない……とかなんとか。うろ覚えだ。発言者がどなたか分かった方はこっそり教えてください。

やっぱり挑戦って、ポジティブなものでも怖いのかもしれません。それが例え推しのライブでも。でも母の嬉しそうなメッセージを見ながら「私も欲に忠実に、ポジティブな挑戦をしてみよう」と思ったのでした。

さてそんなわけで私も、ずっと欲しかったオタマトーンを買おうと思います。

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