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1年分200枚広げて「レシート表彰式」を開いてみた

毎年この時期になると、1年間のレシートを整理する。確定申告があるのでね。

大変かなーとも思うけど、そんな時にぴったりのあそびがあって。私はそれを、ものすごく楽しみにしてる。

名付けて、「レシート表彰式」。


あそび方は、こんな感じ。


レシートに書かれた、日にち・時間・お店の名前・商品・金額など。まず、それらをヒントに記憶をひっぱり出し、その日のものがたりを思い出す。

「この日、何してたっけ」
「どうしてこれを買ったんだっけ」
「そこに誰がいたっけな」
「どんな顔してたかな」。

帳簿を毎月つけていて、すぐに思い出せる人もいるだろうけど、私は年度末に一気にやっちゃうタイプ。でもこのあそびをする上では、それもお楽しみポイント。「これなんのやつだっけ?」となるぐらいの方が、脳みそが喜ぶ。カレンダーや写真を見返してもよい。

そうして、たくさんのレシートの中から、深くものがたりを思い出せたものを選んでいき、そのレシートに賞を授与する。1位や2位を決めてもいいし、欽ちゃんの仮装大会みたいに「努力賞」とか「ユーモア賞」でもいいし、好きなように名前を付けてもいい。

これが、年に一度の確定申告の、私の楽しみ方。ということで。

今日は、この1年間に私が溜め込んだレシート200枚より、見事受賞したものたちを称える、「レシートの表彰式」をしてみようと思う。

・・・


早速、「努力賞」を発表します。「あー、レシートに賞ってそういうことね」がわかるような、とても簡単なエピソードです。


それではまいります。2022年度、レシート表彰式「努力賞」を飾るのは……

5月15日(日)
「セブンイレブン」 679円

です。679円のレシートさん、どうぞステージにお上がりください。

いろんな味のポテチを買っていますね。あと、ブラックガムと、カップ味噌汁も。しかも、夜中の1:02に。

カレンダーを見返すと、とある原稿の〆切があって、「動物園」って予定も入ってる。それで思い出した。これ、原稿が終わってなかった。でも動物園は行きたかった。なんとしても書ききるぞ……という感じで、夜なべのお供を買い出しているレシートです。

結果、ちゃんと仕上げました。仕事もあそびもよくがんばりました。「努力賞」は、5月15日(日) 679円 のレシートでした。

と、こういう感じで進めたいと思います。


続いては、「ユーモア賞」の発表です。
私の1年に、愛あるユーモアを授けてくれた1枚は、

11月4日(金)
「居酒屋 酒歌」5,850円 

です。どうぞ、ステージにお上がりください。

これは、父さんと飲みに行った日の1枚。しっかり覚えてますよ。

父と2人で飲むこと自体は、ちょくちょくある。で、私達は親子というより友達に近い関係性なので、いつもは割り勘するんだけど、これは珍しく「今日は俺が払う」と言ったときのレシート。

「あやちゃん(私の名前)、今日は俺払うわ」
「なんでよ、大丈夫やで。割り勘しようよ」
「ええよ。いっぱいアイホンしてくれたし」
「アイホンはいつもいっぱいしてるやん笑」

アイホンする、というのは、父のiPhoneの設定がぐちゃぐちゃになってるのを直して教えたり、サービスにログインできひんのを解決したり……の、父なりの総称。簡単に言うとスマホレクチャーのこと。

割り勘を拒むなんて今までなかったので、まあ、臨時収入でもあって気分がいいのかなと思い、甘えることにした。領収書は「あげる」と渡してきた。


お店を出て、父さんちの近くまで一緒に歩く。別れ際、父さんが言う。

「あやちゃん!あやちゃん!」
「え、何、声でかっ(笑)」
「誕生日おめでとう!」
「まだやねんけど笑」
「わかってるて。でももうすぐやろ?」
「ふーん、何日だと思う?」
「11月14日!」
「ちゃうし!!笑」

盛大に間違う父さんに、同じくらいデカい声で突っ込む。

「あ、10日や!」
「そうですよ。だから、ちょっと早いよ」
「でもお誕生日の日は直接言われへん。顔見て言えるほうがええやん」

私が子どもの頃は、いつも留守番電話におめでとうを吹き込んでいた父。そのあたりを突っ込もうと思ったが、父が目をさんかくにしているので、飲み込む。

父は嬉しさを隠せないとき、目尻がいつも以上に下がって、まぶたがぺたんこに垂れる。そしたら目がさんかくの形になる。笑ってるのに、ちょっと泣きそうにも見える。いい顔だなあと思う。

「あ、もしかしてそれで奢ってくれた?」
「安いプレゼントでごめんな」
「んなことないよ、すごく嬉しい。もっと飲めばよかったわ」
「あかん! 飲みすぎはあかんて!」
「どの口が言うねん笑」

父さんは、「また誘ってな、絶対やで」を5回くらい言いながら帰っていった。

人生いろいろあるね。でもこうして一緒に飲める人生は楽しいね。11月4日、5,850円はユーモア賞。父さんありがとう、ごちそうさまです。


えー、続きまして。
「そっとしておきま賞」の発表です。

12月6日(火)
「ユニクロ 新宿三丁目店」1,180円

ステージにお上がりください。

ご覧の通り、新宿三丁目のユニクロで、パンツを2点買っているレシート……なんだけど、これ、まっっっっったく、覚えてないんよね。しかも、くっしゃくしゃ。私、何があった?笑

酔ってた可能性も考えたけど、レシートの時間は「16:39」。シラフやと思うねんけどなあ。

すると、隣で一緒に確定申告をしていた友人のSちゃんが言う。「この日の写真、残ってない? あれば、なんかわかるかもよ」

ということで、iPhoneのアルバム、日別で検索。

あーーーお祭りに行った日だ。うん、確かにこの日、私は新宿を経由している。でも、ほんとに経由しただけだな。18時前には神奈川の小田原に着いて、「秋葉山火防祭」というお祭りに参加してる。お祭りにパンツはいらない。

それに、新宿から小田原は1時間半かかる。なので、「16:39」に新宿三丁目のユニクロってのは成立しない。

Sちゃんが言う。
「じゃあ、他の人のレシートじゃない?」
「あ〜、Oさんのかも」

Oさんというのは、同居人の名前。作業場が同じなのでモノが混じることはよくあるし、確かこの時期、彼も東京行ってたし。解決解決。

「や、待って。解決してないよ。Oさんなら、むしろ深まってる」
「え、なんで?」
「メンズ商品なら、印字されるのは『ボクサー』や『ブリーフ』なんよ。『ショーツ』ってのは、ウィメンズ商品なんよ」。



そんな感じで、12月6日、1,180円「そっとしておきま賞」、受賞です。

…と言いつつも、レシートだってプライバシーだし、Oさんのだったら返さなきゃだし、真相を聞いてみた。

ちなみに私の予想はこう。(他にもいろんなケースがあるだろけど、Oさんの場合の予想ね)
①素材やデザインを気に入って買った
②撮影用など、仕事に必要なので買った
③プライベートで、誰かのために買った


結果は③だった。

「あー、ありがとう。僕のレシートだね。この日、母の付き添いで出かけたんだけど、急用で、母がそのまま数日、外泊することになって。それで買ったの。ごめんごめん、疑われてもおかしくないレシートだね(笑)、心配かけたね」

いえいえ、いつか私も一緒にお買い物行きたいな。Oさん、豊かな考察時間をありがとう。(掲載OKももらいました)


最後に、「いい話で賞」の発表です。
いい話って、自分で先に言っちゃうのハードルあがるな。いや、でもいい話なんです。

2022年度、私の暮らしに、やさしい気持ちと10万馬力を届けてくれたレシートを表彰します。

1月16日(日)
「PAPIPUPE HOUSE」50,000円 !
お、ここで5ケタが来ました。

このレシートが発行される前日の夜。

私は、映画「ドライブ・マイ・カー」のレイトショーを観ていた。両隣には、さっきの「そっとしておきま賞」でも登場した、SちゃんとOさん。

鑑賞後、我々は強い余韻に浸りつつ、満場一致で、映画の舞台である広島へと車を走らせていた。で、夜明けと共に到着。

海辺で一眠りして、尾道ラーメン食べて、商店街をぷらぷらしているときに見つけたのが、このレシートの発行元「パピプペハウス」というおもちゃ屋さん。

お店では、スイマーの筆箱や、たれパンダのレターセット、エンジェルブルーのフレークシールなど、懐かしい雑貨や文具が、駄菓子級の破格で売られていた。(わからない人ごめん) 世代ど真ん中な私達、大興奮でカゴに入れまくる。のに、会計は1000円ちょいやった。おまけに、サン宝石で売ってたような雑貨もいっぱいもらった。気を失いそうだった。

あまりに安いので、お店のおばさんに理由を聞く。

「店じまいセールなの。ざんねんだけど、もうすぐ閉めるのよ」

ふと、入口横の階段が気になり、「2階もあるんですか?」と聞く。「うん、でも今は片付け途中で散らかってるの」。見上げていると「踊り場までなら上がっていいよ」とのこと。

先にレジを済ませたOさんが階段を昇っていく。が、すぐ降りてきて、おばさんに言った。

「あの、階段の途中にあるのは売り物ですか」
「ああ。看板息子として置いてたんだけど……5万円でどう?」
「え! さすがに安すぎませんか!」
「でもうちにいるよりも、どこかに旅立てる方がいいの」
「……本当に5万でいいなら、連れて帰らせてください」
「まあ、ほんと?!」

何の話だろ、と私も階段を登ってみると。



等身大の鉄腕アトムを撫でながら、Oさんは私に言う。
「ねえ、うちに置いてもいいかな? きっと楽しくなると思うの」
「うんうん。もちろんいいよ」
「あー、でも車に入るかなあ」
「アトムの身長は…あ、135cmだって。小学生くらいか」

おばさんが言う。
「小学生みたいに、お願いして座ってくれたらいいんだけど、そうもいかないよ。あと、髪のトンガリ入れると150はあるのよ。…とりあえず入れてみる? それから考えてくれてもいいしね」

後ろの時間があったので、役割分担。Oさんが駐車場から自分の車を出し、おもちゃ屋さんの前につける。私はコンビニのATMへ。その間に、Sちゃんとおばさんは、アトムを2階からおろしてくる。

そして。

「のったのった!」「やったー!」
「行きは3人、帰りは4人でドライブね」

じゃあ…というときに、Sちゃんが言った。
「おばさん。この2人ね、おうちを開放して暮らしてるんですよ。子どもも訪ねてくる場所なので、アトムがいるの、ぴったりだと思います」
「あら、そんな楽しそうなところに? アトムよかったね、よかったよかった!」

おもちゃ屋のおばさんは、商店街を抜けるまで、手を振って見送ってくれた。次に広島来るときは、もう閉店してしまってるのかな。さみしいな。

……と思っていたら。

お店、続いてるーーーー!!!(3月の営業カレンダーも出てるーーーー!!!!!)

何か良いことがあったのかな? まちの人たちが、応援したのかな?? 詳しくはわからないけれど、おばさんよかったね、よかったよかった!

「心やさし、ラララ科学の子 10万馬力だ、鉄腕アトム」うろ覚えだけど、そんな歌やったかな。うちのアトムも、やさしくみんなを守ってます。

以上、「いい話で賞」は、1月16日、50,000円 のレシートでした。おもちゃ屋で収入印紙を貼ったの、はじめてだったな〜。


・・・


毎年この時期になると、1年間のレシートを整理する。確定申告、大変かなと思うけど、「レシート表彰式」ができるから、私は確定申告が好き。

1枚の紙に書かれた、日にち、時間、場所、金額、商品。パッと見はどれも「情報」。だけど、その「情報」をヒントに記憶を辿り、「情緒」を結びつけるあそびが、とても好き。

「この日、何してたっけ」
「どうしてこれを買ったんだっけ」
「そこに誰がいたっけな」
「どんな顔してたかな」。

それらを思い出せたとき、メモや写真で残すのとは少し違う色やにおいで、ものがたりが流れてくる。私のレシートは、私がよく生きている証。


……ということで。今日は、私の1年間のレシートを見返しつつ、レシートの表彰式をしてみました。


2023年度は、どんなレシートが集まるかな。楽しみ。確定申告終わった人も、これから頑張る人も、気になるレシートがあったら、ぜひ表彰してみてください。きっと、いつもよりちょっと楽しいです。じゃあね。


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