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透析における穿刺手順・注意点

※旧ブログ「CEさぼの備忘録」で掲載していた記事の復刻版です。

CEさぼの備忘録で最も読まれた記事をリライトしてお届けします。

是非、穿刺指導や穿刺始めに役立ててください。


こんな人にオススメ

・穿刺始めて間もない方

・これから穿刺を始めるという方

・穿刺指導者の方


※今回はバスキュラーアクセスの中でも、
最も基本となるAVF(自己動静脈内シャント)の穿刺について説明していきます。
AVGも表在化も基本は同じです。


穿刺手順

視診

シャント肢に異常がないか観察する。
以下に主な状態と考えられる病態をまとめました。
青字=状態→黒字=病態

腫脹・発赤 → 静脈高血圧症、感染、打撲など
内出血・血腫 → 穿刺ミス、止血不良、PTA後、再建後など
浮腫(片腕) → 静脈高血圧など
浮腫(両腕) → 溢水(体内に水分が過剰に貯留している状態)、低栄養など
化膿 → 感染など
チアノーゼ(指先が赤紫色)→ スチール症候群など
皮膚のかぶれ・ただれ → 止血テープ、貼付用局所麻酔薬(リドカインテープ、エムラクリームなど)、消毒液によるかぶれ
シャント瘤の有無、拡大 → 瘤形成には、瘤より中枢に狭窄があることや、頻回穿刺によるものがある。


頻度が多いのを挙げるとすると、「かぶれ」ですかね。

特に夏場で、貼付用局所麻酔薬を長時間貼っている場合はかぶれやすいです。

貼付用局所麻酔薬は貼っている時間は商品ごとに決まっているので、
それを守るように注意を促した方がよいかと。

あと、最近多く見るのが、「シャント瘤」です。

長年シャントを使い続けていると、どうしても血管が拡張して、瘤になってしまう人がいます。
皮膚の菲薄化(うすくなる)している人や、
光沢がある人などは破裂の危険性があるとして、瘤切除しないといけない場合があります。


その早期発見のためにも、
シャント瘤に対しては穿刺を避け、定期的な計測をおススメします。

視診は項目が結構あり、非常に大事ですが、怠りやすいです。

毎回、丁寧に注意深く観察しましょう。

聴診

吻合部から中枢部にかけて聴診する。

分岐・シャント血流量にもよるが上腕などでは聞こえなくなる場合があります。

音の判別は以下に簡単にまとめました。

正常音:ゴーゴー
狭窄音:ヒューヒュー、キューキュー
閉塞:無音または拍動


流れる流量、血管の太さによって、正常音でも若干違いがあります。

たまに、聴診器を押し当てて聴いて、「狭窄音がする」っていう人がいますが、聴診器によって血管が潰れているだけの場合が結構あります。

軽く押すだけでも圧迫されて狭窄音になる人もいるので、軽く当てて、膜面を軽く触れさせるイメージでやるといいと思います。


駆血

駆血は穿刺において、一番大事です。

上司は「駆血で9割穿刺は決まる」とも言っています。

上手い人が言うのは説得力があります。

駆血での注意点


駆血帯で駆血しなくていい(してはいけない)血管もあります。3つあります。
ここで是非、覚えちゃいましょう。

①人工血管(グラフト)

②動脈表在化

③術後間もないシャントや高齢者で血管が脆い
→③は駆血するだけで、血管壁が傷つき、皮下血腫などを起こしてしまう恐れがあります。

程度によりますが、③では介助者に手で駆血してもらいましょう。


触診

適切な駆血で血管が十分に張っているか確認します。

できれば触診は駆血前の視診のあとにもやった方がいいです。

浮腫や疼痛などの確認には触ってどうなのかも重要だからです。

駆血が適切でない場合は十分に張りません。

そのまま穿刺すると血管がなかなか破れず、勢い余って後壁まで貫いてしまう恐れがあります。

また、駆血の前に触ってシャント血管に「張り」がある場合、中枢に高度な狭窄がある場合があります。


消毒

消毒は清潔・不潔をしっかり理解した上で行います。


穿刺手順


基本通常V→Aの順で刺す。

どちらかの穿刺に影響を及ぼさなければどちらからでもよいかと思います

AとVが並びの場合は、右利きの場合は「右→左」の順で刺すと外套が邪魔にならなくてよいです。

左利きの人は逆の順で。


穿刺手技・注意点

以下は穿刺手順 ☆は注意点です。

①血管をしっかり固定し、針を血管に刺す
針を持っていない指で血管が逃げないようにしっかりと固定しましょう。

☆穿刺角度はシャントの太さ、硬さ、内膜の厚さ、走行により適宜変える。
→穿刺角度はテキストによって20~30°とかありますが、血管の深さによって変える必要があるため決めない方がいいと思います。

☆深い血管→角度深め、浅い血管→角度浅め
ぐらいで覚えておけばいいと思います。

②逆血(バック)確認

バックがなかったら更に進めるか、向きを修正して進める。それでもなかったら失敗。素直に諦めて抜く。

※逆血(バック)とは針の先が血管壁に到達することによって起こります。
バックが確認された時点では針が完璧に血管に入ってないということを忘れないでください。

③穿刺針を寝かせて、更に進める。

大切なシャントです。ここは焦らずゆっくり進めましょう。

④血管を貫いた感覚があったら、すぐに外筒を進め、血管に留置し、内筒を抜く

☆血管の前壁を破ったらすぐに外筒を進めましょう。

そのまま穿刺針を進めると血管後壁まで貫いてしまう恐れがあります。

後壁まで貫くと、当然ですが、皮下血種となってしまいます。

もし後壁まで貫いてしまった場合はすぐ抜針して、しっかりと止血しましょう。

☆禁忌
一度抜きかけた内筒は決して戻してはいけない!(外筒を傷つけ、破損する恐れがある。)

⑤外筒をテープで固定
針が抜けないようにテープでしっかり固定しましょう。

血管にしっかり入ったかどうか自信がない時は☆シリンジを使い血液がちゃんと引けるか・戻しても腫れないか確認する。→これは結構大事で、血液が引けても、押したら腫れる場合もある。

↑の理由:血管の後壁を貫いている場合で、そこからの出血を引いているだけで、血管に留置していないので、血液を戻したら腫れる。

よって、シリンジで引けて、戻して腫れない場合に限り、血液回路と接続してもいい。ということになる。

血液がスムーズに引けない場合や、血液を戻して腫れた場合はしっかりと止血をしてから再穿刺する。

☆もし失敗してしまった場合は、すぐ謝る。言い訳は絶対ダメ。

☆再穿刺が難しい、自信がない場合は、刺せる人に代わる。

→透析毎に毎回2本刺すのも患者さんにとって苦痛であるのに、更に3本、4本というのは患者さんにとっては多大な苦痛なので。


まとめ

穿刺までの流れ
視診→聴診→駆血→触診→消毒→穿刺

穿刺手順
①血管をしっかり固定し、針を血管に刺す
②逆血(バック)確認
③穿刺針を寝かせて、更に進める。
④血管を貫いた感覚があったら、すぐに外筒を進め、血管に留置し、内筒を抜く
⑤外筒をテープで固定

穿刺の注意点
☆穿刺角度はシャントの太さ、硬さ、内膜の厚さ、走行により適宜変える。
☆深い血管→角度深め、浅い血管→角度浅め
☆血管の前壁を破ったらすぐに外筒を進める。
☆禁忌:一度抜きかけた内筒は決して戻してはいけない
☆シリンジを使い血液がちゃんと引けるか・戻しても腫れないか確認する。
☆もし失敗してしまった場合は、すぐ謝る。言い訳は絶対ダメ。
☆再穿刺が難しい、自信がない場合は、刺せる人に代わる。

患者さんにとってのシャントは「命」です。

シャントが使えないと透析ができないからです。

シャントという命を少しでも長く使えるようにするのが透析のCE、看護師の役割だと思っています。

穿刺については手技だけでなく、手順・基本をしっかりおさえたうえで、真剣に臨みましょう。


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[参考文献]
1)宮下美子 他.書き込み式で鍛え穿刺のキホンワークシート.透析ケア第22巻7号.2016
2)牧野範子 他.はじめての穿刺.透析ケア第21巻6号.2015


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