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アラカルト詩


【一行詩アラカルト】

・あつらえた慕情の紐をほどく緩やかな指先の熱
・寂しげな背中に押し付ける今朝の甘い香り
・春の月をきつく抱き寄せて涙を降らす
・乾いたココロに絵筆を垂らした君へ
・束ねた想いの色を挿して日常を飾りたい

・茹だる頬に、食べくさしの熟れた桃
・真紅の紐を解いたひとひらの行方
・言葉の飾り付けに不慣れな本音
・食玩だった昨日までの私も見よう見まね
・変色した海に放り込んだ過去の残骸は溶ける

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心を優しく撫でる所があなたの悪い癖
こちょこちょくすぐる言葉の指先も

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夢の浮き輪が抜けて離愁
秋空に揺れるすすきに我重ね
やがてぼたぼた冬籠もり
土は春を身籠もり土筆暖め熟睡

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仰ぎ見るは無口な星々の語らい
広げた夜が神話を見せる
そのもと
期待といふ名前の望遠鏡を運び出し
君の瞳を通して想いを覗きたいと願う
僕の秘めた過ちよ

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星を失った夜の衣が
暖かい陽を優しく抱き締める
永遠とわを祈りながら

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遡上するカンパネラに招かれる
虹のスカートが揺れてモノクロームは閉じた
多感幸福、星のリズム
夜空を鍵盤に跳ねていく

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安らぎの園に横たわり
つま先をあそばせる
あなたは私の気持ちがたなびかないように
平穏な時間を贈ってくれる使者
夜の傘をさして星空を見せ
たしかなものを泳がせる

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橋をかけた無重力の音符
光の繭は開いて夢は上空を目指す
無声による遠駆け
透かし時計は針を止めて刻が平泳ぎ
明るい眼が見上げる太陽のソナタ
滑り落ちたコスモスの渇望

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欲張りな言葉に手錠をかけてください
悲願の扉を叩き
向こう側に在る弱りきった感情を
どうか捩じ伏せてください
保有する人肌を分け与えて
気の遠くなる愛を

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遠くから来た霞をひと口たべる
染み込むのは優しい涙の味
狭い部屋に蹲って窓越しに夜空を見た
いつかの私はもう居ない
明るい物語を探す冒険へ出たから

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揺籠に詰めた記憶の宝石飴
舐めれば拙い甘さに舌がおどり
汲みたての夜露で潤した喉は
愛を囁く声に変わる

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ココロの脇芽を摘み
捨てずに新しい土壌へ植えたなら
弱り、枯れるモノはあれど惜しまず
其れ栄養と也
残ったモノに宿るは陽脈
やがて美しき花弁を開かせる

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